月面展開
『午後1時30分に軌道基地きぼうに到着し、海兵両用作戦部隊の400人は急いで月読命への移乗を行った。軌道基地きぼうにもトラック宇宙基地と同じタイミングの午前11時30分に、大日本帝国政府・国防省・IAXAから月読命の発進準備命令が下されていたのである。その為に伊邪那美が軌道基地きぼうに到着した時には宇宙ドックに存在する2隻の月読命は発進準備が整っていた。そして伊邪那美から月読命に移乗をするのは民間人では無く、海兵両用作戦部隊400人の軍人である為に移乗は30分で完了した。そして2049年1月23日午後2時に2隻の月読命は軌道基地きぼうを発進したのである。ヨーロッパ合衆国の月面車到達予定時刻に、残り12時間というタイミングであった。
軌道基地きぼうから10時間の航行を続けた月読命は2049年1月24日午前0時に、月面基地に到着した。陸軍憲兵隊月面基地派遣部隊にとっては、待ち望んだ援軍であった。陸軍憲兵隊月面基地派遣部隊司令官の大佐は自ら、月面基地の宇宙港に出向き海兵両用作戦部隊の400人を迎えたのである。海兵両用作戦部隊も司令官の大佐が自ら率いており、先遣部隊の400人の1人として月面基地に辿り着いた。
2人の大佐は早速月面タワーの危機管理センターに移動し、月面基地責任者の総督を交えて防衛体制の確認を行った。地球の大日本帝国帝都東京首相官邸地下の危機管理センターとも繋がり、海兵両用作戦部隊司令官の大佐は大日本帝国軍最高指揮官の叶総理に直接月面基地到達を報告した。その報告に叶総理や国防大臣・IAXA長官等の閣僚のみならず、軍首脳陣は一様に安堵の表情を浮かべていた。これでみすみす月面基地を奪われる心配は無くなった。海兵両用作戦部隊は銃火器しか持ち込んでいなかったが員数外装備を持ち込んでおり、陸軍憲兵隊月面基地派遣部隊の武装強化を行った。2人の大佐はそれぞれの部隊を展開してヨーロッパ合衆国軍を迎え撃つ準備を整える事にした。予想到達時間は2時間を切っており、早急に準備を整える必要があった。
5000人に及ぶ民間人は一時的に月面基地中心地にある、月面タワーに避難させておりある程度は気にする事無く戦闘に集中する事が出来た。いよいよ人類史上初の地球外での戦闘が始まろうとしていたのである。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋