表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世紀最終戦争  作者: 007
第7章 試行錯誤
160/262

月面展開レース

叶総理の決断により、大日本帝国は過去に無い早さで月面基地までの部隊移動を行う事になった。



『ここからは戦後開示された各種記録を参考にして時系列を組み立ててみたいと思う。2049年1月23日午前9時に事態は発生した。月分割地点に接近するヨーロッパ合衆国の月面車50輌を発見したのである。その後午前9時30分には大日本帝国帝都東京首相官邸と、月面タワーをデータリンクした遠隔会議にて緊急の対策が話し合われたのである。その結果ヨーロッパ合衆国の月面車が時速50 キロであると仮定して、到達時間を17時間後であるとの時限を決めて全ての計画を行う事になった。

対策会議では如何にして事態を打開するかが話し合われた。迫りくる月面車は50輌に達し1輌に10人乗車しているとすれば、500人が攻めて来ているという深刻な事態であった。この時月面基地には軍事力と呼べる兵力は存在していなかった。陸軍は確かに月面基地に存在したが、それは300人だけの憲兵隊であり実態としては治安維持を目的とした重装備警察といえる存在であった。今や太陽系全域への進出が進む中、宇宙軍は強大な軍事力を誇っているが当時は、月面にさえも軍事力を展開していなかったのだ。

現在の月は宇宙軍の前方基地として整備されており、地球を出撃した艦隊の最終準備地点になっている。その為に月面基地は大規模な物になっており、宇宙港・軌道ドックも整備されている。現在の姿からは想像も出来ないが、2049年当時では月面には大日本帝国とヨーロッパ合衆国の月面基地があるだけで軍事力も存在しなかった。それは1967年発効の[宇宙条約]により宇宙の平和利用という目的があったからである。具体的に宇宙条約の内容を箇条書きすれば、宇宙空間の探査と利用の自由、宇宙空間の領有の禁止、宇宙平和利用の原則、国家への責任集中原則、核兵器や大量破壊兵器の宇宙空間への配置の禁止、天体への軍事基地や防備施設の設置の禁止、天体における兵器の実験や軍事演習の禁止等が挙げられた。

この宇宙条約を当時の大日本帝国は遵守した為に月面基地は軍事基地や防衛施設としての目的では無く、純粋なる科学的調査的目的として建設され維持されていた。それはヨーロッパ合衆国にしても同じで2038年9月3日の『月平和開発条約』を締結し、大日本帝国が月の北半球側に、ヨーロッパ合衆国が月の南半球側に、月面基地をそれぞれ建設していた為に月の赤道上で分割し南北をそれぞれの境界とする事になったのである。地球上では新世紀冷戦という深刻な対立関係にあったが、月では宇宙条約と月平和開発条約により対立関係を持ち込まない筈であった。

だがヨーロッパ合衆国は地球上での膠着状態打破の為に、遂に月に於いて行動を開始したのである。対策会議にて叶総理は海兵隊の1個海兵両用作戦部隊を派遣する事を決定した。当時の1個海兵両用作戦部隊は4400人の人員により構成されており、300人だけの陸軍憲兵隊月面基地派遣部隊にとっては頼もしい援軍であった。しかし当時の装備では4400人の人員を地球から月に送り込むのは不可能であったのである。今となっては宇宙軍の能力では簡単な事であったが、当時の宇宙船である伊邪那美と月読命ではヨーロッパ合衆国の月面車が到達する17時間以内に、4400人全員を送り込むのは不可能だった。大前提として恒星間航行技術が存在していない為に、地球から月への移動にも時間が掛かるのである。ここからはその時系列を詳しくみていく事にする。』

広瀬直美著

『新世紀最終戦争』より一部抜粋

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ