持久戦
例年なら仕事は落ち着く筈ですが、今年は1月の終わりが近付いても忙しいです……
その為に目安としている1話2000文字前後に達しない話が増えると思いますが、ご了承下さい。
最初は毎日の投稿を止めようと思いましたが、そうなるとズルズルと間隔が空きそうな気がしたので、毎日の投稿は守り抜きます。
『総司令官は本土の危機管理センターとのホログラムによる対策会議を終えると、徹底した持久戦を命令した。現状ではそれしか採るべき手段が無いのも事実であった。副官や担当将校達にそれぞれ命令を下した総司令官は私に近付くと、心境を吐露してくれた。「大日本帝国軍の総指揮官である叶総理は軍に理解があって助かります。文民統制である為に致し方無い面もありますが、過去にはどうしようも無い方がいましたからね。」その言葉に私も賛同した。
過去に叶総理の3代前の内閣総理大臣は与党の派閥争いの結果総裁選が壮絶なものになり、妥協の産物として無派閥の人物を総裁にし首班指名選挙の結果大日本帝国内閣総理大臣となった。だがその人物は経済政策や外交は優秀であったが、新世紀冷戦でありながら軍事に関しては全くの素人であった。敗戦以後の再軍備により大日本帝国では、政治家も軍事知識に対するある程度のレベルを求められていた。
にも関わらずまさかの事態に与党内も慌てたが、自分達が派閥争いの結果妥協の産物としてその人物に投票した罪はあった。当の本人も軍事知識の欠如は理解していた為に、国防大臣は知識豊富な人物を任命した事で大日本帝国全体に於いて国防に不利益は発生しなかったが、当事者である軍人達は最高指揮官である内閣総理大臣にはある種の不甲斐なさを感じていた。
それに比べると今の戦時下に於ける最高指揮官が叶総理であるのは幸運だと言えた。その点は私自身が取材して直接軍人達に尋ねた結果であり、誰一人として叶総理に対して最高指揮官としての資質を問い質した軍人はいなかった。だからこそ第三次世界大戦を勝利出来たのであると、私は思っている。
話は逸れたが総指揮官は私に心境を吐露すると、再び作戦指揮に戻った。何としても現状のヨーロッパ合衆国軍による攻撃を防ぎきらないといけなかった。その為には空軍とも連携して対応する必要があったのである。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋
2049年1月15日午後2時。体勢を立て直した大日本帝国ロシア派遣陸軍は空軍の協力の下で、反攻作戦を開始した。48式二足歩行戦車鋼龍をも前線に投入し、45式戦車・44式自走185ミリ超電磁砲・4式185ミリ機動砲・43式自走多連装ロケット砲・46式戦闘ティルトジェットという総力を挙げた攻撃を行った。大日本帝国陸軍の機甲兵力はやはり随一の能力を有しており、火力投射量という面でヨーロッパ合衆国軍を大きく上回った。それはやはり大東亜戦争による敗戦で、アメリカ合衆国軍に火力投射量で圧倒的な差をつけられた反省からきていた。
その結果再軍備を行うようになった大日本帝国は全軍に於いて、火力重視を至上命題にしていたのである。その成果は新世紀日米戦争に於いて遺憾なく発揮され、アメリカ合衆国軍を圧倒した。その結果アメリカ合衆国を無条件降伏させる事になり、その後ヨーロッパ諸国が統合してヨーロッパ合衆国を成立させても尚、世界最大の火力投射量を誇るのは大日本帝国軍となっていた。
しかし今や火力の優位性だけでは全てを測れないのも事実である。指揮や兵站、各部隊の連携等全てが複合的に絡み合っての能力が求められた。だが局所的場面に於いては火力投射量が優位性を示す場合もあり、今回の反攻作戦ではまさに重要な要素であった。