叶総理年頭演説
2049年1月4日。叶総理は伊勢神宮を参拝した。雲一つ無い快晴の下で伊勢神宮参拝は、叶内閣の閣僚全員が出席して行われた。伊勢神宮は皇室の氏神である天照大御神を祀るため、歴史的に皇室・朝廷の権威との結びつきが強く、大日本帝国の神社に於いては最高の特別格の宮であり大日本神祇会の本宗、つまりは全ての神社の上に立つ神社であり、『大日本帝国国民の総氏神』である。
伊勢神宮参拝を終えた叶総理は三重県伊勢市で年頭記者会見を開いた。
『皆様明けましておめでとうございます。3日前元日の朝も大日本帝国全土で快晴となり、私も美しい富士山の姿を見ることができました。第三次世界大戦という未曾有の状況で新年を迎え、先程私は内閣閣僚一同と共に伊勢神宮を参拝いたしました。そして今年が大日本帝国にとって戦争に勝利する素晴らしいものとなるようお祈りいたしました。
激動する国際情勢により新世紀冷戦は遂には直接衝突という悲惨な結果を迎えました。時代の転換点を迎えた私たちの前には、大変困難な課題が立ちはだかっています。しかしみんなで力を合わせれば乗り越えられる。国民の皆様とともに真正面から立ち向かうことで必ずや、こうした困難も乗り越え、新しい時代を切り拓くことが出来る、そう確信しています。
私は大日本帝国内閣総理大臣として、大日本帝国軍最高指揮官として万難を排して必ずや第三次世界大戦を勝利する事を、国民の皆様お一人お一人にお約束致します。今回の戦争も謂わばヨーロッパ合衆国から売られた喧嘩であります。このような無法者は野放しにしていてはいけません。国際秩序を乱す輩は裁きを受けなければならないのです。幸運な事に大日本帝国は亜細亜条約機構の盟主であり、志を共にし悪に立ち向かう国々がいます。これこそ国家百年の計の真髄でありましょう。大日本帝国は孤独では無いのです。
しかも南北アメリカ大陸諸国も対ヨーロッパ合衆国大同盟に参加し、一致団結して戦ってくれております。イラン戦線にはその大同盟に参加する国々が軍を展開させているのです。第三次世界大戦は文字通り世界大戦なのであります。いえ、第一次も第二次も中立国が多数存在しており、今回の第三次世界大戦こそが本当の意味で世界大戦となっているやもしれません。
事実現状の世界情勢はヨーロッパ合衆国対全世界という事になっております。かつて無い人類最大の地域国家となったヨーロッパ合衆国だからこそ、今のような構図が定着したのかもしれません。国の数で言えば相手はたったの1ヵ国にも関わらず、未だに戦争の決定打が打てない状況が続いているのも、ヨーロッパ合衆国が過去に類を見ない地域国家だからであります。その為に昨年末には大日本帝国への直接攻撃を企てる程の実力をも有しているのであります。
国民の皆様におかれましては第三次世界大戦は長期戦になる事が予想されますので、ご協力下さいますようにお願いする次第であります。特に先日可決致しました選抜徴兵制でありますが、長期戦による兵力枯渇を見越しての措置であります。現状第三次世界大戦はロシア戦線とイラン戦線という、2つの戦線で亜細亜条約機構軍とヨーロッパ合衆国軍が睨み合う膠着状態に陥っています。両軍共に大軍を展開しておりますが戦力差が僅差であり、決定打に欠ける状態であります。
その為に予備兵力確保の必要から選抜徴兵制を復活させる事になったのです。早いと今月中旬から選抜徴兵制による徴兵を行う事になりますので、国民の皆様にはご協力下さいますようにお願い致します。もちろん自発的な志願も大いに歓迎致します。兵力の確保が戦時に於ける軍の悩みのタネでありますので、志願するという方は最寄りの基地または国防省にお越し下さい。
昨年に勃発した戦争により皆様には戦争へのご協力を申し上げますが、そんな中でも皆様には通常の生活を送り続けて頂きますようにお願いします。国内での経済活動が活発で生産体制が万全である事が、前線で戦う軍の活動に役立ちます。その為には軍も戦闘に勝利し、国土を守り抜くという気概を見せております。
銃後を守り抜いてこそ前線での勝利に繋がるのであります。戦争という暗い雰囲気ですがそれに負ける事無く、何事も無い日常を送り続けましょう。そうする事で敵は、恐怖に感じて萎縮する事無く平然と日常を過ごす皆様を見て畏怖を感じる筈です。そうなれば敵は弱音を吐くかもしれません。政府と軍は全力を挙げて皆様の日常を守り抜きます。その為にも多少のご迷惑をお掛けする事があると思いますが、ご協力頂きますようにお願い致します。
最後となりましたが本年が、国民の皆様お一人お一人にとりまして、素晴らしい年となります事を心より祈念しております。』
叶総理年頭記者会見より一部抜粋