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新世紀最終戦争  作者: 007
第7章 試行錯誤
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思惑

2049年1月1日。世界は新年を迎えていた。



『第三次世界大戦という未曾有の状況ではあるが、戦争という暗い空気を変える為にも各国は新年を国を挙げて祝っていた。ロシア戦線とイラン戦線の最前線に展開する兵士達にも、本国から新年を祝う特別配給が行われ兵士達を労った。しかも両陣営共に示し合わせたように自然発生ながら停戦状態になっていたのである。その為に世界は束の間の平和な新年を迎える事が出来たのであった。

まさに奇妙な状態となっていた。去年にあれ程までに激しい戦闘が繰り広げられたとは思えなかった。2048年10月1日午前3時15分にヨーロッパ合衆国陸軍200個師団と人造人間師団200個がロシア連邦への侵攻、『ネオバルバロッサ作戦』が開始され第三次世界大戦が勃発した。それから2ヶ月の間に両陣営は壮絶な戦いを繰り広げたのである。通常の国なら大規模な被害を被った事になるが、超大国である大日本帝国とヨーロッパ合衆国にとっては些細な、程度問題の被害に済んでいた。だが2ヶ月という期間の間にロシア戦線とイラン戦線は形勢され、その戦線で壮絶な戦いを行っているあるのが現実であった。

2ヶ月の期間は新世紀日米戦争なら大日本帝国を主力とした陸軍が、アメリカ本土上陸を行いロッキー山脈を越えていたのである。これだけを見ても第三次世界大戦が長期戦になろうとしている証明でもあった。事実両陣営は陸軍兵力の不足を痛感し、大日本帝国は選抜徴兵制を復活させて兵力を確保しようとし亜細亜条約機構各国もそれに習った。ヨーロッパ合衆国は人造人間の生産が追い付かなくなり生産体制の抜本的改善に注力する事になったのである。また選抜徴兵制の復活と人造人間の生産を行う事が両陣営で決められた為に、ロシア戦線とイラン戦線が膠着状態に陥っている理由になっていた。

ヨーロッパ合衆国は人造人間生産の時間稼ぎをする為に大日本帝国本土への空襲と、シーレーンの封鎖を狙った通商破壊戦を実行したが両方ともに見事に大日本帝国に阻止された。だがそれは大日本帝国への妨害に失敗しただけであり、自分達の目的である人造人間の生産は順調に行われていた。何せかつてのヨーロッパ諸国が1つの統一国家になったのがヨーロッパ合衆国である。経済規模と生産能力は大幅に拡大していた。

とはいえそんなヨーロッパ合衆国を上回る経済規模と生産能力を大日本帝国は有しており、大日本帝国は尋常では無い規模で戦争経済を維持していた。私は新世紀最終戦争が終結して何年も経つ現在にこれを執筆しており、大日本帝国とヨーロッパ合衆国の生産能力を統計数字として把握する事が出来た。

それを見て私は感嘆の声を上げた。大日本帝国は自らの軍の兵站補給のみならず、亜細亜条約機構軍の兵站補給を一手に引き受けたのである。その為に大日本帝国の産業は戦時経済のある種特需景気に沸いていた。それはヨーロッパ合衆国にも言えた事であるが、二大超大国は経済成長をそのまま戦争遂行に投入し戦争経済を支えていた。また大日本帝国は2048年12月31日に選抜徴兵制の復活を帝国議会で可決させており、陸軍兵力の確保に励む事になった。

100年以上振りとなる徴兵制の復活であるが意外にも国民は冷静であった。何せ第三次世界大戦という未曾有の大戦争であり、挙国一致で官民一体で乗り切るしかないのも事実であった。ヨーロッパ合衆国による通商破壊戦でシーレーンが危機にさらされる事態があったが、叶内閣の支持率は一時的に僅かに下落しただけで済んだ。その国民の理解と支持があったからこそ、大日本帝国は未曾有の大戦争を乗り切る事が出来たのかもしれない。

この新年のお祝いと自然発生ながらの停戦も、両陣営にとっては次の戦乱までの休養期間だと認識していた。それは約束された静寂であったのである。しかも世界もそれは分かっていた。何故なら世界統一政府という目的をお互いが掲げての戦争が、今回の第三次世界大戦であったからである。その為に今が休養期間であり、それが終われば激しい戦いが繰り広げられるのは明白であった。大日本帝国とヨーロッパ合衆国ともに軍需企業の生産体制は驚異的な規模になっていた。全ては戦争遂行の為であり最終的な勝利を目指す為であった。その為に大日本帝国とヨーロッパ合衆国は新年のお祝いを盛大に行い、戦争という暗い雰囲気を払拭しようと躍起であったのである。その努力は実り国民は戦時中にも関わらず盛大なお祝いを行う事が出来た。

それは徹底しており新年祝賀の名目で国民1人1人に給付金が支給された程であった。経済の基本はお金の循環であり、それはかつて経済学者のケインズにより相乗効果に現れると語られていた。その為に大日本帝国とヨーロッパ合衆国では個人消費が拡大し経済に刺激を与え、戦争経済に貢献する事になったのである。』

広瀬直美著

『新世紀最終戦争』より一部抜粋

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