戦略爆撃機壊滅
45式ステルス戦闘攻撃機閃光と47式ステルス掃射機飛鳥改は一路、ヨーロッパ合衆国空軍ステルス戦略爆撃機アスガルド隊を目指して飛行を続けた。気象庁の気象衛星[ひまわり]からの探知情報はデータリンクされており、45式ステルス戦闘攻撃機閃光と47式ステルス掃射機飛鳥改は迷いなく飛行する事が出来た。
一方のステルス戦略爆撃機アスガルド隊は全く警戒していなかった。その理由はやはりロシア連邦空軍のステルス戦闘攻撃機MiG-52と、アメリカ西岸連邦空軍のステルス戦闘攻撃機F-29がスクランブルして来たが探知される事無く振り切ったからであった。その為に乗員達は全員が光学迷彩の能力を過信していたのである。
『首相官邸地下の危機管理センターはようやく冷静さを取り戻していた。一時は焦燥感に包まれていたが気象衛星[ひまわり]を用いた探索にステルス戦略爆撃機アスガルドを捕捉する事が出来、45式ステルス戦闘攻撃機閃光と47式ステルス掃射機飛鳥改の出撃が終わった事で一山越えた状態であった。後はステルス戦略爆撃機アスガルドを迎撃するのみである。大日本帝国としては再び本土空襲を受ける訳にはいかず、何としても全機叩き落とす必要があった。叶総理は全ての命令を出し終え、後は全機撃墜を祈るのみであったのである。』
広瀬直美著
『新世紀最終戦争』より一部抜粋
大日本帝国帝都東京を目指していたヨーロッパ合衆国空軍ステルス戦略爆撃機アスガルド隊と、迎撃任務を帯びた大日本帝国空軍45式ステルス戦闘攻撃機閃光と47式ステルス掃射機飛鳥改の部隊は、北海道の南東550キロ地点で会敵した。
ステルス戦略爆撃機アスガルド隊はレーダーに僅かながら正体不明の物体を捕捉したが、まさか自分達が捕捉されているとは思ってもいなかった。ロシア連邦空軍のステルス戦闘攻撃機MiG-52と、アメリカ西岸連邦空軍のステルス戦闘攻撃機F-29がスクランブルして来た時と同じく、自分達を見付ける事が出来ずに帰投すると思い込んでいた。だが捕捉した45式ステルス戦闘攻撃機閃光と47式ステルス掃射機飛鳥改が、編隊を分離して飛行するのに若干の違和感を感じた。
45式ステルス戦闘攻撃機閃光隊は真っ直ぐに突っ込んで来るが、47式ステルス掃射機飛鳥改隊は上昇したのである。45式ステルス戦闘攻撃機閃光隊が速度の関係から先行しているが、それが更にステルス戦略爆撃機アスガルド隊に違和感を強める事になった。
ヨーロッパ合衆国空軍は戦略爆撃機が自分で自分を守るというドクトリンを有しておらず、大日本帝国空軍のように47式ステルス戦略爆撃機飛鳥と47式ステルス掃射機飛鳥改の共有運用は真似できなかった。その代わりに光学迷彩を実用化し見つからないようにする、という方向に突き進んだ結果ステルス戦略爆撃機アスガルドは護衛機も無く、自衛火器も搭載していないまま大日本帝国本土空襲を行う事になっていた。
その為に違和感を感じたとしても何も打つ手は無かった。そしてステルス戦略爆撃機アスガルド隊に接近する45式ステルス戦闘攻撃機閃光隊は、20ミリレーザーガトリングガンの有効射程内に接近すると躊躇無く射撃を開始したのである。ステルス戦略爆撃機アスガルド隊にとっては、完全に予想外の事態であった。攻撃を受ける事は全く想定していなかったのである。だが大日本帝国空軍のステルス戦闘攻撃機閃光隊は的確に攻撃を加えて来たのだ。
この攻撃で一気にステルス戦略爆撃機アスガルド隊は100機が撃墜された。それでもまだ400機は残存していたが、編隊には動揺が広がっていた。何とか攻撃を回避しようとしたが、ステルス戦闘攻撃機閃光隊は完全に食らいついていたのである。この時ステルス戦闘攻撃機閃光隊のパイロット達は気象衛星[ひまわり]からの気流探知の結果想定されるステルス戦略爆撃機アスガルドの機体を、HMD上にARで表示していたのである。その為に気象衛星[ひまわり]からリアルタイムで送信される情報をもとに、全機にデータリンクされ今回の空戦を成立させた。
20ミリレーザーガトリングガンを撃ちながら通り過ぎたステルス戦闘攻撃機閃光隊を、ステルス戦略爆撃機アスガルド隊は何とか振り切ろうとした。だがその上に覆い被さるように47式ステルス掃射機飛鳥改が飛来すると、ウェポンベイを開き20ミリレーザーガトリングガン88門を一斉に乱射したのである。
上から豪雨のように射撃された20ミリレーザーガトリングガンは、ステルス戦略爆撃機アスガルドを次々と撃墜していった。攻撃を避けようとしたステルス戦略爆撃機アスガルド隊だが、47式ステルス掃射機飛鳥改の方が速度が速かった。その為に逃げる事が出来ずにただただ撃墜されるだけであった。そうこうしている内に45式ステルス戦闘攻撃機閃光隊も攻撃に合流し、ステルス戦略爆撃機アスガルド隊は逃げる事も出来ずに撃ち落とされていった。
哀れヨーロッパ合衆国空軍の目的は失敗に終わったのであった。