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新世紀最終戦争  作者: 007
第6章 猛る炎
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2048年11月22日。選抜徴兵制が大日本帝国帝国議会衆議院の特別委員会である『戦争関連委員会』での審議に入った。本来大日本帝国に於ける法案成立までの流れではまず、法律案の原案作成が行われる。内閣が提出する法律案の原案の作成は、それを所管する各省庁において行われる。各省庁は所管行政の遂行上決定された施策目標を実現するため、新たな法律の制定又は既存の法律の改正若しくは廃止の方針が決定されると、法律案の第一次案を作成するのである。この第一次案を基に関係する省庁との意見調整等が行われ更に、審議会に対する諮問又は公聴会における意見聴取等を必要とする場合には、これらの手続を済ませるのである。そして、法律案提出の見通しがつくと、その主管省庁は、法文化の作業を行い、法律案の原案が出来上がる。

その後内閣が提出する法律案については、閣議に付される前に全て内閣法制局における審査が行われる。内閣法制局における審査は本来、その法律案に係る主管省庁から出された内閣総理大臣宛ての閣議請議案の送付を受けてから開始されるものであり、現在は事務的には主管省庁の議がまとまった法律案の原案について、いわば予備審査の形で進める方法が採られている。したがって、閣議請議は、内閣法制局の予備審査を経た法律案に基づいて行われる。

内閣法制局における審査は、主管省庁で立案した原案に対して、憲法や他の現行の法制との関係、立法内容の法的妥当性、立案の意図が、法文の上に正確に表現されているか、条文の表現及び配列等の構成は適当であるか、用字・用語について誤りはないか、というような点について、法律的、立法技術的にあらゆる角度から検討を行う。予備審査が一応終了すると主任の国務大臣から内閣総理大臣に対し国会提出について閣議請議の手続を行うことになり、これを受け付けた内閣官房から内閣法制局に対し同請議案が送付され、内閣法制局では、予備審査における審査の結果とも照らし合わせつつ、最終的な審査を行い、必要があれば修正の上、内閣官房に回付する。

その後閣議請議された法律案については、異議なく閣議決定が行われると、内閣総理大臣からその法律案が国会(衆議院又は参議院)に提出されるのである。だが戦時の現状に於いて叶総理は戦争関連委員会にて審議する法案に関しては、閣議決定を先に行い内閣法制局の審議は委員会審議と並行して行う事にしたのである。

そして先程から出ている『戦争関連委員会』であるが予算委員会等の名称が法令に明記される常設の委員会(常任委員会)と異なり、特別委員会となっている。特別委員会は個別の名称は法令に規定されず、会期(閉会中の期間を含む)ごとに国会・議会の議決により設置されるものである。

選抜徴兵制が委員会の審議に掛けられると、委員会室は一様にざわめいた。当然であろう。100年以上の時を経て、徴兵制を復活させようというのである。

野党は時代錯誤だと声高に叫んだ。その指摘に国防大臣は間違いではない、と正直に応えた。だが時代錯誤であろうとも、今回の選抜徴兵制は実現するしか無いと断言したのである。第三次世界大戦の勃発は世界的な規模での総力戦であり、ロシア戦線とイラン戦線という大規模な戦線を誕生させるに至り。この両方に我が国は亜細亜条約機構の盟主として軍を派遣するのは致し方無い事態であった、そのように国防大臣は語ったのである。



『大日本帝国帝国議会衆議院戦争関連委員会に選抜徴兵制の法案がされると、国民は今回の戦争が大規模なものであると再認識したのである。確かに規模は異常であった。だが国民としては前回の新世紀日米戦争と同じく、ある種の公共事業になると思っていた。軍需庁の要請により軍需企業は大量生産を開始し、下請け企業や関連企業も業績は向上していた。

しかしまさかの選抜徴兵制の導入であった。時限立法であり、対象となる年齢は限られていたが21世紀の半ばにまさか徴兵制が復活するとは思ってもいなかったのである。叶総理以下政府、特に国防省は国民からの批判を覚悟していた。批判は全て甘んじて受け入れるつもりであった。だが意外な事に国民からの批判は無かった。否、批判はあったがその批判は、選抜徴兵制を提起するのが遅いという肯定的な理由であった。

それは完全に予想外であった。SNSや国防省の公式チャンネルでも肯定的な意見が多く、国民世論としては選抜徴兵制を支持するものが多数だった。世論の支持を受けて戦争関連委員会での審議は、政府側のペースになったのである。

大日本帝国での徴兵制復活の法案審議は、亜細亜条約機構各国にも波及した。兵力確保という事態では、亜細亜条約機構各国も同じ課題を抱えていたからである。その為に俄に各国で徴兵制復活についての議論が活発化する事になった。

そしてそれは、ヨーロッパ合衆国にある種の焦りを齎す結果となったのである。』

広瀬直美著

『新世紀最終戦争』より一部抜粋

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