ヨーロッパ連合大軍拡
ヨーロッパ連合が行った大軍拡は、大規模なものであった。新世紀日米戦争で大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊の活躍を、これでもかと見せ付けられたヨーロッパ連合は海軍の大規模な拡張を開始した。ヨーロッパ連合で空母を運用しているのは、イギリス・フランス・イタリア・スペインとなる。それらの国で正規空母と呼べるのは、フランス海軍の原子力空母『シャルルドゴール』だけであった。イギリス海軍は『インヴィンシブル級』3隻を保有するが3隻共に世界で初めてスキージャンプ勾配によるSTOVL運用を導入した艦級であり、打撃力に欠ける軽空母でしか無かった。イタリア海軍も2隻保有する空母は『ジュゼッペガリバルディ』と『カヴール』であるが、『インヴィンシブル級』と同じ様な軽空母であった。スペイン海軍も『インヴィンシブル級』等と同じ様な軽空母である『プリンシペデアストゥリアス』と、多用途任務艦として軽空母にも強襲揚陸艦にも利用できる『エスパーニャ』を保有している。保有数だけでみればヨーロッパ連合として8隻保有していたが、フランス海軍の『シャルルドゴール』でさえ満載排水量約43000トンであり、それ以外の国々が保有する空母は満載排水量約20000トン以下であった。これでは大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊の超大型空母に対抗出来なかった。『イージス空母翔鶴級』でさえ満載排水量11万トンであり、『イージス原子力空母大和級』に至っては満載排水量13万トンを誇っていた。そして空母の打撃力の要である艦載機も、『シャルルドゴール』は『ラファール艦上戦闘機』と『シュペルエタンダール艦上攻撃機』を、『インヴィンシブル級』は『ハリアー2艦上戦闘攻撃機』を、イタリア海軍とスペイン海軍は『AV-8Bハリアー 2』をそれぞれ運用していたが、大日本帝国海軍連合艦隊空母機動部隊の『05式艦上戦闘攻撃機烈風改』に性能面で圧倒的に遅れていた。
その情勢を覆すべく、ヨーロッパ連合は空母保有国の共同開発を推進した。2003年10月の欧州理事会で軍拡競争と宇宙開発競争に於いて、大日本帝国に対抗していく事が決定されてから空母の共同開発は開始された。そして半年間に及ぶ設計期間を経て『正規空母ヨーロッパ級』が建造される事になった。フランスは原子力空母を主張したがフランス海軍以外に、ヨーロッパの海軍で原子力空母を運用した事が無い為に、機関方式は統合全電気推進が採用された。全長285メートルで満載排水量85000トンを誇り、艦載機として70機の航空機を搭載しヨーロッパ各国が保有した海軍艦艇としては過去最大規模となる。大日本帝国海軍の保有する空母や亜細亜条約機構加盟国の保有する空母に比べると小型ではあるが、ヨーロッパ連合は共同開発という初の試みでもある為に無理な大型化はしなかった。そして設計が完了し建造される事になった『正規空母ヨーロッパ級』は、イギリス海軍とフランス海軍が3隻、イタリア海軍とスペイン海軍が2隻、合計10隻を同時建造する事になった。そして更に空母の護衛艦艇として巡洋艦・駆逐艦・フリゲートの建造も開始された。そして空母の護衛艦艇に関しては空母を保有していない他のヨーロッパ各国海軍に対しても協力が要請された。これにより各国でも建造が開始され海軍の運用でも、空母打撃群の構成に於いても合同運用を行う事が決定された。今までなら有り得ない対応だが、大日本帝国の強大な海軍連合艦隊に対抗していくには必要な措置だと判断された。
ヨーロッパ各国で一斉に建造する事になった海軍艦艇の建造費と維持費の一部は、欧州中央銀行が出資する事になった。ヨーロッパ連合としての統一した意思としての軍拡が行われた証拠でもあった。更に大軍拡は陸軍と空軍でも行われ、特に空軍の第5世代ジェット戦闘機開発に力を注ぐ事になった。イギリス・オランダ・イタリア・デンマーク等はアメリカ合衆国が主導していたF-35開発計画に参入していた。だが新世紀日米戦争の結果、開発主体のロッキードマーティンと主要製造パートナーのノースロップグラマンは物理的に破壊され、アメリカ合衆国も崩壊した為にF-35開発計画は雲散していた。だがイギリスのBAEシステムズも主要製造パートナーとなっており、F-35の設計図も一部だが存在していた。そこでヨーロッパ連合は独自の第5世代ジェット戦闘機開発の参考として、その設計図を利用する事として更には開発中のユーロファイタータイフーンを設計変更する事を決定した。対抗していく相手の大日本帝国空軍は2008年に、第5世代ジェット戦闘機として開発された08式ステルス戦闘機閃電が実用化され運用を開始していた。その08式ステルス戦闘機閃電が世界初の実用第5世代ジェット戦闘機となっていた。
ヨーロッパ連合はその後各国の総力をあげて第5世代ジェット戦闘機の開発に取り組み、大泉前総理の退任した年の2013年3月9日に『ユーロファイターハリケーン』として実用化され運用を開始した。だが大日本帝国も08式ステルス戦闘機閃電に続き、2011年には『11式ステルス艦上戦闘攻撃機陣風』を実用化し運用を開始した。これにより大日本帝国海軍連合艦隊は空母艦載機として2005年に烈風を改良した、『05式艦上戦闘攻撃機烈風改』と『11式ステルス艦上戦闘攻撃機陣風』の2種類を運用する事になった。まさに壮絶な軍拡競争が行われていたのである。