第二章〜スパークリング
書きました。
声がした方向は果たしてどちらなのか、紀平には最初、まったくわからなかった。
が、雷が間近に落ちたかのような轟音が響いた直後であった。
衝突寸前にまで走り迫っていたトライシクルは、黒い霧のようなものを全体に纏ったかと思った次の瞬間にはもう、黒い気体となって、消散していた。
紀平に襲いかかろうとしていたみっつのタイヤ付きの巨体と、『皺(し、)くちゃグレイ・スーツスキンヘッド暴走男』は、跡形もなく消えてなくなっていたのである。
硝煙が立ち昇るような匂い方向を見ると、そこにひとりの男が立っていた。
なにやら、前に向けて一杯に伸ばした筋肉の目立つ腕から肩口に掛けて、長く太い筒状のものを担いでいるようだった。その筒は金属で出来ているようで、いかにも重そうなのがわかった。
男が少し嗤ったように感じられた。
男は静かに言った。
『みんなの道路、みんなの公道とは、誰でもが自由勝手に使える道のことではない。ルールもマナーも交通法規も守れないような者は誰もが使えない道だ。だから、公道というのだ』
それが彼の決め台詞のようなのであった。それを言った後、彼は満足げに天を見上げていた。
みれば、彼の担ぐ筒の先かららは、うっすらと黒煙が上がっている。
よくよく見れば男は、その場に実に相応しくないと思われるような宇宙遊泳時に使う服船外活動ユニット(EМU)を思わせるごついゴアテックス素材の作業服のようなものを身に着けているのであった。
紀平は、その宇宙服の男を見た。そして訊いた。
「こ・・・、これは、どういうこと?」
男は、頭にも宇宙服めいた頭部のすべてを覆い隠すようなヘルメットを被っていたので、表情も年齢も読み取ることはかなかなかった。
男は言った。
「わたしは、五十年後の未来の世界から、タイムマシンに乗ってやってきた。驚く必要はない。君はただ、未来の救世主として我々によって選ばれのだ。だから、未来の存亡の為に闘う戦士として我々とともに闘ぅてくれ給え。いいか?この要請に対して君が断る権利はないのだぞ。それは未来にもたらされた事実が証拠だ。これを聞いたからからには、君に未来を変える権利などないのだ」男の声は、マイクを通してヘルメット外部に据え付けられたスピーカーから聴こえてくる仕組みになっているようだった。妙に機械的な声に思えてならなかった。
「これか?きやはり気になるようだな?」
宇宙服の男は、肩に担いだ金属の筒の先を天に向けて見せた。
宜しく御願い申し上げます。