第9話 喧嘩ップルの帰結
「あーもう信じらんない!」
「それはこっちのセリフだよ!」
学校への道の途中、いつもの風景の中いつものやり取りが始まる。
まりとりょうすけは幼馴染だ、そして、喧嘩の絶えない間柄である。
「どうしてこんなもの買ったのよ」
「どうしてって、そりゃあ……」
今日の口げんかはまりの優勢のようだ。
「ってか俺がどんな買い物しようが俺の勝手だろ!」
「いーや勝手じゃありませんー! りょうすけ、今月何回うちにご飯たかりに来たか覚えてる? 今日なんか弁当二人分用意してくれたんだからね! 一人暮らしだからって無計画な出費して巻き込まないでくれる?」
「うっ……それは」
「さあ白状なさい、どんなものを買ったの? もし言わないのならこれにサインするのよ」
まりはりょうすけの眼前に紙を突き付けた、借用書である。
「あんたに食わせてあげてる食費を計算したのよ、どう? 問題ある? 」
「問題はないけど……まり、幼馴染のよしみだろ? そんなことしないでくれよ」
「わたしだってそんなことしたくないから買ったものをしゃべれば許したげるって言ってんのよ」
「ぐ、むむ」
りょうすけは堪忍してカバンから箱を取り出した。
「ん」
「これが買ったもの?」
「ああ、開けなよ」
「いいの?これ、包装もしっかりしてるし、贈り物とかじゃ」
手渡されたそれはしっかりとした包装の手のひらサイズの小箱だった。
「うん、これ、お前にあげようとしてたんだよ」
「え、わたし?」
「まりの誕生日もうすぐだろ? だから」
「あ、ありがとう」
二人とも照れて顔を赤くした。
「もう開けてもいい?」
「放課後にしない?照れるからさ」
「う、うん」
放課後
二人は子供のころ遊んでいた公園のベンチに座っていた。
「じゃあ、開けるよ」
「お、おう」
まりは膝の上にちょこんと乗せた小箱に手を掛ける。
ピンク色のリボンをほどいて箱を開く。
りょうすけは固唾をのんでまりの反応をうかがう。
小箱の中には趣味のいい指輪が入っていた。
「へ、へーなかなかいいじゃん」
「へへっ、だろ?」
「でも学校じゃ付けれないねこれ」
「あー……ごめん」
「別にいーよ、でもさ、これだけじゃあこの借用書をなかったことにはできないかな」
まりはひらひらと借用書をりょうすけの前に見せた。
「えー、マジかよほかには何も買ってないぞ」
「どっかに連れてってよ、これが似合うような場所に」
「それって」
「そっ、デートっ」
まりは顔を真っ赤にしながら立ち上がった。
二人がこの後も時々けんかをしながら結婚生活を送るのは別の話。




