第三話 1000度目の正直
早速毎日更新できませんでした。やばいですね
「ラック、もうやめようよ」
迷宮の最奥、宝の守護者を打ち倒し、熟練の冒険者たちは宝物庫の中で宝箱を前にしていた。
「なにいってんだエラ、ここまで来たんだ、この中にあるものを拝むまで収まらないぜ」
ラックと呼ばれた戦士風の男は、宝箱に手を掛ける。しかし、仲間の女僧侶エラがそれを制止した。
「もうよしなよラック」
「う、だけどな──ッ」
ラックは噛み跡だらけの腕をつかまれ、痛みにあえいだ。
「あなたちゃんとミミックに引っかかった回数数えたことある? 999回よ!?」
「うっ、いたいところをつくな」
見ると、ラックの体中には腕にあるのと同じような噛み跡が無数につけられている。
押し黙っていた鎧を身に着けたドワーフが口を開く
「お前さんはどうしても宝箱というやつと縁がない、あきらめるこった。」
あっさりと言い放つドワーフにラックは食って掛かる。
「何言うんだボールゴル、999回宝箱を開けてもミミックだったってことは、1000回目はその分とんでもないものが中に入っていてもおかしくないんだ。俺は幸運の戦士ラックだぞ!」
何の根拠もない妄言であったが、ラックはそれを信じてやまなかった。そうでもなければやっていけなかった。幸運の戦士ラック、ある時から彼はそう呼ばれるようになった。彼はどんな過酷なダンジョンに過酷な条件で立ち入っても生還することから、生存能力とたぐいまれな幸運をたたえられそう呼ばれている。しかし、彼はこの称号に不服だった。彼は過酷なダンジョンから生還することはできても、英雄の栄誉に浴することはできなかった。
彼はダンジョンから宝を持ち帰ることができなかったのだ。冒険者は危険を冒しダンジョンに侵入し、そして宝を持ち帰ることで初めて評価される。しかし、ラックは生還こそすれど、宝に関してはコイン一枚すら持ち帰ることはできなかった。
なぜか、それは彼が見つけた宝箱がすべて、宝箱に擬態したミミックというモンスターだったからだ、これまでミミックにであうこと900回、彼は何としてでも宝を持ち帰ろうと、これまでのダンジョン潜りで出会ったあらゆる冒険者に声をかけ、考え得る最高のメンバーで、最も深いダンジョンと呼ばれるシンオウダンジョンに侵入したのだ。だが、誰も想像だとにしていなかった。探索が進む中で発見された99個の宝箱が──
「──まさかすべてミミックだったとは」
「というよりラックはミミックに噛まれた傷しかついてません、ミノタウロスやドラゴンとも戦ったのにどうして?」
ボールゴルとエラはもはや感動するように言った。ダンジョンに入ってからもラックの不運は続き、ミミックに噛まれた回数は999回になっていた。そして、ダンジョンの最奥にたどり着き、もはやこのダンジョンにはラックの目の前にある宝箱のほかはない。ここに宝が入っていないはずがないのである。
「俺は、俺は宝を見つけて地上に帰るんだあああああ!」
ラックは箱の縁にかけた手を思いっきり持ち上げた。
ラックは思わず目を瞑った。これまで宝箱を開ければすべてミミックで、彼を飲み込もうと職種や牙を伸ばしてきていたからだ、しかし、一向に衝撃は来ない。
そしてエラとボールゴルの感嘆の声が聞こえてきた。
「ああ、そんな」
「こんなことがあろうとはな」
「宝、なのか? 俺は宝を手に入れられたのか?」
返事は帰ってこなかったが、ラックは自分を信じて目を開けてみることにした。そこには
長靴が入っていた。ぼろの長靴が。
「…………」
「…………………………」
「………………………………………………………………」
「…………………………………………………………………………帰ろうか」
「そうだな」
「そうですね」




