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第10話 道の途中


 No.4472裏切り者

No.129浸す

No.4680ゲーム実況

暗がりを歩いていた男は、いつもと違う路地の雰囲気に違和感を覚えていた。いつもはもう少し人通りがあるはずだが、今日は人っ子一人いない。何かいやな予感を感じた男が少し足早に歩き始めたとたん、道の先に人影が見えた。それも一人二人ではない。数十人の群衆が先に立ちふさがっていた。

 男が気おされ立ち止まると一人の男が群衆から一歩抜け出し立ちすくんでいた男に言葉を投げかけた。

 「ブロッコリー森だな」

 「な、なんでその名を」

 それは男のSNSでの名前、いわゆるハンドルネームだった。

 「おとなしくついてこい」

 「なんでそんなことを、そもそもあんたたち誰だよ?!」

 男たちは何も答えずに歩きだす。ブロッコリー森と呼ばれた男は後ろを振り向き逃げ出そうとしたが、そこにも十数人もの人だかりがあった。

 逃げられない。ブロッコリー森は直感した。おとなしくついていくしかないのだ。

 おとなしくついていき、狭い路地に入っていくにつれ人影は少しずつ減っていったが、それでも逃げ出すことが考えられない程度の人数に囲まれていた。ブロッコリー森はおとなしくついていきながら、なぜ自分がこんな状況に巻き込まれてしまったのか考えていた。

 だが、何か答えが出てくる前に男たちはブロッコリー森を彼らの目的地に連れてきた。

 どこかの廃工場か倉庫だろうか、ちらつく電灯の下に椅子とドラム缶が置かれている。そして一人の人影がブロッコリー森を待ち受けていた。

 「! 君は、ベーコン紅井!? 」

 「ようこそブロッコリー森 いや、森雄二君」

 目の前の男に本名で呼ばれ、森は自分をここに連れてきた男、ベーコン紅井こと紅井将太の目的に気づいた。

 「気づいていたのか、僕が……」

 「あーそれ以上は言わなくていい、調べはもうついてるし、お前の弁明を聞く気はない」

 「な、何をするつもりだ」 

 「おいおい、この状況なら勘のいい君なら察しがついてるんじゃないか?」

 森は後ろにいた紅井の部下?たちに椅子に拘束された。拘束される瞬間、ドラム缶の中が目に入ってきた、どうやら液体が入っているようだ。

 「さて」

 紅井はドラム缶に手をついて森を見る。 

 「裏切り者にはふさわしい罰をあたえなくっちゃな、もってこい」

 紅井の合図で証明の当たらない影にいた人影の中から一人の男がアタッシュケースのようなものを持ってきた

 「この中に入ってるのは、俺たちがコンビを結成してからコツコツためてきたアンティーク物の──ゲームカセットだ」

 「!!!!」

 「お前が抜け駆けして社長からもらっていたものだ。これを」

 「よ、よせ、それの価値は君もわかっているはずだ! だから、やめっ」

 アタッシュケースの中身はドラム缶の中に投げ込まれていった。

 溶けていくゲームカセットを前に森はもがくことしかできなかった。

 嗚呼、彼がカセットを紅井を共に受け取っていたならこうはならなかっただろうに……

 

 

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