006. 成立(1)
ヒースは残りの男二人の前で構えた。正直言って、もうほとんど力は残っていなかった。
息をあげていると、ヒースの目の前で倒れていた男が立ち上がった。
倒せたと思っていたが、やはりヒースはまだ少し非力だった。
「大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。たかがガキの一発だ。もろに受けて少し意識が飛びかけただけだ。次は油断しねぇ」
男は頭を叩いていた。何度か手を打ちつけると、めまいが消えた。
男三人がヒースを睨みつけた。
ヒースはまた危険な状況に逆戻りだ。と言っても、最初から危険な状態だ。この村に来た時点で、みんながヒースのことを狙っているのだから。
ヒースは残りの力を振り絞ってなんとか立っていた。男が三人になった時はまた諦めそうになったが、もう腹を括った。絶対に、諦めない!!
ヒースは叫びながら拳を振りかざし、男たちに向かって行った。
──気づいた頃にはヒースは木にもたれかかって座っていた。と同時にものすごい痛みが体中を襲ってきた。
体を動かそうとしても、筋肉が微細に揺れるだけだった。
結局、あの後ヒースは男三人組に殴られ続けた。疲労のせいで、放てたのは最初の一殴りのみ。力が出せなくなったヒースはもう、捕まるしかなかった。
全身が殴られて、あざができていた。顔の頬が青くなり、口の中は切れていて舌の上に鉄の味が転がっていた。
「やっと落ち着いたぜ。次こそは両手両足をしっかり拘束しておかねぇとな」
男が乱雑にヒースの両手を取って、縄を結び始めた。
「ちょっと!そこのあんたたち!なに子供いじめてんの?」
気配を全く感じなかった。男たちは驚いて背後を振り返った。
木々の影から姿を現した。
指を差して立っている女の人がいた。動きやすく、耐久性に優れていそうな白い服に身を包み、同色のマントを羽織っている。ダボッとした茶色のズボンと険しい道でも駆け抜けられそうなブーツも履いていた。
真紅の髪の毛が風に靡いていた。目は凛々しく、光輝いている。首にかけている銀色のロケットペンダントが光った。
武器は持っていない。通りすがりの人か?それとも地元の人?それにしては男の人たちに比べて服とか容姿が整っている。
「誰だ?お前。ここら辺の者じゃないな。見たことがない!
これはオレらがとった獲物だ!早くどっか行け!」
女の人は状況を瞬時に察したようだ。
「子供を獲物だなんて。
赤目の子か……。その子が赤目を持っているから連れ去っていたのね。だからと言って、大人三人が子供一人にそこまでムキになってるなんて、酷すぎる」
「なんだと?テメェ!!」
一人の男が女の人に殴りかかった。しかし、女の人はその拳を避け、瞬時に一発男に放った。
放った拳は男の顔に、のめり込んでいた。男はその場で気を失い、倒れ込んだ。倒れた男の顔は赤く腫れ上がり、鼻から血を出していた。
「何してくれてんだ!女!」
「先に手を出そうとしたのはそっちの方でしょう?だから殴っただけ」
「くそ!」
男二人も女の人に殴りかかった。女の人は軽やかに攻撃を避けていく。
男の足をひっかけ、こかした。男は地面に顔面を強打して失神する。
もう一人も襲いかかるがやはり避けられ、首元に強い衝撃が与えられて、失神した。
女の人は最強だった。空気の波も、とてもしなやかに動きていた。あんな動きは見たことがなかった。