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花咲く頃に  作者: らいん
9/22

思いはそれぞれに





「少し、よろしいでしょうか」


遠慮ぎみに扉が開かれ誰が入ってきたかと思ったら入ってきたのは先ほどまで一緒に居たルイだった。

「皇帝陛下ならもういらっしゃいませんよ」

「知っています。だからお声をかけたんです」

「用件を伺いましょう」


このやり取りを早く終わらしたくてファナは早口で喋る。その様子に気付いているのか気付いていないのか、いや気付いているだろうがルイはあく

までもゆっくりと落ち着いた口調で話す。





「嫌いにならないで頂きたいのです。皇帝陛下を」

「私にあの方をお慕いもうしあげろと?」

「はい、そうです」



ルイ自身もファナがイラだっているのは分かっていた。多分グレイスがまた「外面」(ルイいわく)で話していたのだろうと言うことも

想像はついていた。しかしここで引くわけにはいかない。ファナにグレイスの理解者になってもらわなければいけなかった。

これは、ルイとある人との約束だったから。


「確かに外交上お慕いするように見せかけるのは両国にとって必要です。しかしそれはルイ殿のエゴではありませんか」

「分かっています、ですがどうしてもお願いしたきことだったので」

「わざわざ来て頂き申し訳ないですが、ご協力できなくて申し訳ありません。しかしご安心下さい、皆の前ではお慕いしてるようにしますので」

だんだん熱を上げてきた話はなかなか下がることを知らない。そのことが分かっているファナは視線をルイから逸らした。


「お願いです!!陛下はあんな方ではないのです」


いきなり何を叫んだかとおもったら、ルイはファナに土下座をしてきた。

「お顔をお上げ下さい。陛下が本当はどんな方であろうと何をされても私の気は変わりません」

あんな方というあたり、先ほどのファナとグレイスのやり取りをルイは予想していたのだろう。だから土下座をしたのだろうとも予想がつく。

しかし何をされてもファナは頭を縦に振る気など盲等なかった。


「失礼します」

ファナはそれだけ言うと部屋を出て行こうとした。するとルイはその出て行こうとするファナの前に立ちはだかった。



「何のつもりですか」

ファナはルイをにらみ付ける。それに負けじとルイもまっすぐファナを見つめ返す。




しばらく双方がにらみ合った状態が続いた。

さきに折れたのはファナでこれは諦めでもなんでもなく早く話を終わらせたいと思ったからだ。


「もう一度聞きましょう、皇族に対しての振る舞いではありません。どういうおつもりです?」

皇族としての身分をひけらかすのは好きではないが、使わざるおえないだろう。でなければ諦めてくれるとも思えない。


「ご無礼は承知しております。しかし、はいとおっしゃっていただけるまで通すわけには行きません」

「無理だとはっきり申し上げたでしょう」

「無理だとしてもです」


段々このくだらない言い合いに腹が立ってきた。ルイにとっては余程大事なものなのかも知れないがさっき道具と呼んだ相手をどう好きに

なればいいと言うのだろう。


「無理だといっているでしょう!!」


少し・・・いやかなり強い口調でファナは足止めをしているルイをにらみつけた。

ルイは少し驚いたようだったがそれでも引く気配はない。ファナの怒りの頂点はもうそこまで見えていた。



「一国の軍の統帥が、恥を知りなさい!私は皇后となりこの国を統べる皇帝陛下の隣に立つ者です。これ以上の無礼は許しません!」






ルイは顔をあげ、呆然とファナを見る。驚いていることだろう。なにしろ自分でも驚いているくらいだ。

あちらに居るときはこんな大声をあげたことなどなかっただろう。それどころか言葉を発することも少なかったくらいだ。



言ってみたはいいものの、この後どうすべきか知る術をファナは知らなかった。

「失礼しますわ」


いまだに呆然としているルイを置いてファナは逃げるようにその部屋を出て行った。














「ご立派です。姫様よくぞおっしゃられました」



案内された部屋に入ってランに事の一部始終を話し聞かせ終えるとランは嬉しそうに手をたたいた。


「でも、あんなに大きな声がでるとは私も驚いたわ。おかげですっきりしました」

「よかったですね」


そう言ってランはファナにお茶を出し終えドアの近くに控えた。

「ねぇ、ラン?」

「はい、どうかしましたか」

「もうあちらのようによそよそしくしなくてもいいのよ、こちらでお茶しましょう」

「そんな恐れ多い、私のようなものが姫様とお茶など」


ずるずると下がろうとするランの手を取って皇帝も座るような椅子に座らせた。

「ここはおそらく皇帝陛下もお座りになる椅子ではございませんか!いけません」

また立とうとするランの肩を持ちもう一度椅子に座り直らせた。

「ここの皇帝はそこまでの価値は見当たらなかったわ、ランが座っても変わらない、だからいいのよ」

なんとも意味の分からない納得しがたい理由だが主の命は絶対だ、ランは恐れながらもその椅子に腰をかけた。

ファナは微笑んだ。どうやら満足したようだ。


「こんなこと初めてね、あちらではありえなかったもの」

「はい、とても恐れ多いことですが」

「そんなことない、わたしにとってこの国で今一番、影響力のある人はあのいけすかない皇帝でもなくランだもの」

「うれしきことでございます」

「これからは一緒にお茶をしましょうね」

「はい、お付き合いさせていただきます」


ここの部屋に案内され人払いしたあとのファナの機嫌の悪さは見れたものではなかったがとりあえず機嫌は治ったようだ。

この先、何も起こらなければいいが、と思うがその希望が裏切られたようにコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

ファナはランに目配せしドアの前に控えさせた。


「何か用ですか」

入ってきたのは侍女だった。


「はい、姫様には今宵、伽に入られるようにとのお達しにございます」


これにはファナもランも驚いた、先ほど口論をしたばかりだから夜の相手をするなど頭になかったのだ。

「あんまりでございます、姫様は今日着いたばかりお疲れにございます、今日だけは取り計らって下さいませんか」

ファナの命だったり、うえの命令には反抗しないランだがこのときばかりはファナをかばう様に口を挟んできた。

「そのことでしたら、お疲れのうえご無礼とは重々承知だが、ぜひにとの仰せでございました。伽に入られますようによろしいですか」


「分かりました」


今日だけは徹底抗戦でいくと思っていたのにファナはすんなりと受け入れた。いまの話を聞いていたからランはなおさら驚いた。

「姫様!?」

「では失礼します」


侍女が去っていったあとランはファナを振り返った。

「姫様よろしかったのですか、ありえませんあんなこと」

「いい悪いの問題ではないの、分かるでしょう、私には「はい」の選択しかないこと」


そう言ったファナは笑っているように見えたが目は笑っていなかった。




























誤字脱字があればご報告くださると嬉しいです。

またこの話はあとで少し手を加えるかもしれません。

でも話の内容は変えないので手を加えてもわざわざ読み直していただく必要はないかと思います。でも読みたい方はどうぞ粗末な小説ですがお付き合い下さい。


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