冷酷非情?
「君にお似合いなんじゃないかな?彼女」
なぜこの男は俺が今問おうとしたことを先に口に出来るのだろう。
グレイス自身、他人に流されたり図星を突かれたりすることはまずない。
これでも賢帝といわれているだけあってときに非情といわれようと他国に恨みを買われようと国の為にやってきた。
それで周りの国々からからは冷酷非情とされるのではないかとは思うのだが。
でもこの国の若き近衛隊長にはすべてお見通しのようだ。こんな奴と十数年一緒にいて、また国政にも論議を身分の差はあるけれど対等に交わしている自分に静かながら賛美したい。
そんなことは絶対に言わないが。
でもそんな気持ちも見抜いているであろうルイは皇帝の私室でくつろいでいる。
「そりゃしょうがないよ、十何年もいれば自然と相手の心なんて読めるもんだよグレイス」
「それはお前だけだ」
ガクっと首を垂れて椅子に腰掛ける。また読まれたと嘆く姿を側に控えている女官達がぽぅと見惚れているのにも気付かずに・・・。
「俺はお前から見るとちゃんと皇帝らしく見えるか?」
「う~ん、僕からか難しい質問だな。でも大丈夫、この国の人達からは君は絶大な人気を誇っているから多分そう見えるよ」
「つまり、お前からはそうは見えないと」
「結果的にそうだね。でもグレイス、僕の前と他の人と会うとき君、全然態度が違うじゃないか、それを比べろといわれても」
お前の前と同じ姿でなど居られるかと心の中で悪態をつきながら頬を小突いた。
それこそここまで築きあげてきたものが一気に崩れ落ちてしまう。
「で、結局のところどうなんだ、かの国の姫は」
「だからお似合いだって」
「お似合いだけでは意味が分からん、説明願おう」
「いくら十数年来の付き合いだけど、君に願われたら拒否出来ないのに」
そういう他の人使って相手を分析して対策するとか考えたりすることだけは相変わらず上手いなぁ僕でも真似は出来ないとルイは感心したように頷く。
「自分の后となる相手くらい偵察してなにが悪い?」
「でもそれすっごく失礼だよね」
こういうところが本人はそのつもりは無いといっているけども冷酷非情と噂される原因なんじゃないかとも思うのだが
それは心の中に隠しておこう。
「はっ、べつにばれたわけじゃないんだろう?」
なら問題ないだろうというグレイスにルイは苦笑いして返す。
「ばれたのか?お前が?」
これ以上開かないほど目を見開いてグレイスはルイをみる。
「残念ながら、すぐにばれたよ。僕が驚いたくらいさ」
両手を広げて降参ポーズを見せたルイにグイレスはそうかと頷いた。
「そうだねぇ、君が普段している態度とそう変わらないよ、一応彼女は正妃の第一皇女だしねぇ。
裏はいろいろありそうだけど・・・、身分ははっきりしてるし皇族としての責務を十分理解してる。
僕にしては後宮に閉じこめて置くのはもったいないくらいだちょっと賢すぎて堅いけどね」
これから楽しみだなぁ
と他人事のように、まぁ他人事なのだが笑いながら残っている書類に目を通すルイに
グレイスは今日何回目になるか分からない盛大なため息をついた。
「お前と話あっているといくつ脳があっても足りん」
「それはどうも」
「褒めてない」
どうしてそう受け取れるのか、グレイスはルイの思考回路を探る。でも答えは決まっていて分からない。
探っていることがルイには分かるからそれがまた面白い。
こんな感じで十数年もルイはグレイスに付き合っているのだ。
それであの彼の国の姫が入ってくることでどのようになることか考えるだけで
興味をそそられる。
「いつ来るんだ?」
「君そんなことも知らなかったの、自分の后様だよ」
「俺が決めたわけじゃない」
ルイが拗ねたようにふいと顔を逸らしたグレイスにお願いだからそんな態度みんなの前では出さないでよと注意すると「するか、そんなこと」と怒鳴られた。
そんなに怒鳴るくらいなら自分の前でもそんな態度をとらなければいいのにと思うがそれは絶対に口にはしない。
分かっているからだ、グレイスがここでしか本心をだせないのを。
別に本人は皇帝という顔とルイの前との自分を苦には思っていないと思う。
それにそれが自分だし、もしかしたらルイがいなかったらいないであれが本当の素だったのだろうとも思う。
それにどっちもグレイスはグレイスだ。どっちも素なのだ。でもその背中には皇帝という重い責任が圧し掛かっている。
自分はそれの吐き出し口になれればいいとルイは思い続けている。
実際そうグレイスが思ってくれてるのかというと疑問なのだが。
いろいろな事情を抱えて嫁いでくる彼の国の姫がグレイスにどのような影響を与えてくれるのかルイは楽しみで仕方ない。
願わくは、二人が・・・
やっと皇帝が出ました。
二人が出会うのはもうちょっと先になるかと思います。
1ヶ月に3回くらいで更新したいなぁ