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ヴァルカダムの冒険  作者: 天界翼@MT
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第五話「ルビーの秘密」

 ルビーの衝撃の年齢告白(ジャンが勘違いしていただけだが)から数時間後、雨はまだまだ降り続けていた。テントの中は、先ほどの気まずい空気がずっと渦巻いていた。

「ル、ルビー?あの、本当にごめん。」

「・・・・」

「勝手に勘違いして、それで、その頭とか・・・撫でてしまって。」

「・・・いや、俺も手を振り払ってしまってすまない。ただ、今までそんなことされたことなかったから、驚いただけなんだ。」

頭をボリボリ掻きながら、ルビーはモゴモゴと話し出した。

「俺はこんなに醜い。だから、頭を撫でられたこともない。俺は・・・ずっと一人だったから。」

「ルビー・・・」

「頼むよ、ジャン。可哀そうなんて思わないでくれ。こんなんでも、案外楽しくやって来たんだぜ?」

ジャンの胸がギュッと締め付けられた。自分は故郷で仲間たちに守られながら生きてきた。しかし、同じ年のルビーがずっと一人でこうして生きてきたということを知ったとき、同情とは違うもっと苦しくてもどかしい気持ちになった。

「これからは僕がいるよ。そうだ!この度が終わったときは僕の故郷にきてくれよ。そこで一緒に暮らそう!」

キラキラとした笑顔で、ジャンはそう言った。ルビーはジャンの突拍子もない話に、思わずプッと吹き出した。楽しい、嬉しい・・そんな何とも言えない暖かな感情が自分の中に残っていることにルビーは驚いた。しかし、次の瞬間に激しい頭痛がルビーの頭を襲った。

「ウグッ!アァッ!!」

「ルビー!?どうしたんだ!ルビー!!」

ジャンの呼び声に応えることなく、ルビーはその場に倒れた。雷が鳴り響き、雨の勢いは激しさを増していった。


 どれほど時間が経ったのだろうか。外の嵐は止むことを知らず、ジャンとルビーのいるテントに大粒の雨が吹きつける。元々丈夫なのに加えて、ルビーが補修してくれたおかげで、テントはこの嵐の中でも吹き飛ばされることはなかった。

「うぅ・・・ジャン?」

「ルビー!!・・・ハッ!!」

ジャンは思わず駆け寄る足を止めた。

ルビーの頭に刺さった『ソレ』を見てしまったからだろう。

「・・・見られちまったか。いつもは髪で隠しているから、バレないと思ったんだがな。」

ヨイショと起き上がると、ルビーはフッと笑うと静かに語りだした。

「サビた鉄の杭だ。こいつは・・・呪いだよ。それも超強力なヤツでな。昔一度だけ呪術師に見てもらったときに『誰にも解呪できない呪い』だって言われたんだ。正確には『現在は解く者がいない』だな。古代の呪いだよ。それこそ千年も昔のな。誰がこんな呪いをかけたのか、なぜ俺だったのかわからない。こんな古臭い呪いなのに、強力ときたもんだ。」

「そんな・・・ルビーはどうなってしまうんだい。」

「さぁな、この呪いは徐々に体を蝕む。そして、俺の体に闇を蓄積させていく。何度も取ろうといろんな文献を見たがてんで役に立たない。まぁ、今すぐ死ぬってわけじゃないから、心配しなくても・・・って、何故泣く!?」

ジャンがポロポロと涙を流している。なぜだかとっても悲しかった。ルビーはきっと泣かないだろうから、そう思ってジャンはずっと泣き続けた。


 しばらく泣き続けたジャンが泣き止むと、ルビーはハァとため息をついて

「泣いても、どうしようもないんだよ、ジャン。俺だって昔は考えたさ、呪いの解呪方法をな。だけど、何も見つからなかったんだよ。俺がなにしたっていうのかわからない。俺の知らない俺の先祖の戒めなのかこの姿に対する罰なのか、それすらもわからないんだよ。」

焚火の火を絶やさぬよう、持っていた紙を燃やすルビー。その姿を見て、ジャンはいたたまれなくなった。

「君はとってもいいやつだ。だから、この旅の中で、もしかしたら見つかるかもしれないよ?君の呪いを解く方法が。僕もそれを手伝うから・・・」

「やめてくれ!それどころじゃないだろう!お前は自分がどんな旅をしているのかわかっているのか?世界のために旅をしてるんだろう?俺は、お前の旅についていくと決めたが、俺の呪いにお前を付き合わせようなんて思ってないんだ・・・わかってくれよ、この旅が終わってから・・・それから考えよう。頼む、ジャン。」

こんなに必死な声で言われては、ジャンもそれ以上何も言えなかった。

二人はゴロンと横になった。外の嵐は、まだまだ止む気配がない。ビュゥビュゥと吹き荒れる風の音が、ざわついた二人の心をかき消してくれればとジャンもルビーも同時にそんなことを思った。


 翌朝、いつのまにか寝てしまったのだろう、昨日の嵐が嘘のように外は晴れていた。太陽の光がテントの中に射し込み、二人を優しく包み込んだ。目が覚めた2人は顔を見合わせて、フッと笑いあった。

「おはよう、ジャン。」

「おはよう、ルビー。」

グゥゥと、腹の虫が同時に鳴きだして、余計におかしくなって声を上げて二人は笑った。

腹ごしらえをしようと、二人はまた干し肉を食べた。太陽の下で食べるからか、余計においしいく感じた。グンと背伸びをしながら、ジャンはルビーに話さず、自分の心の中で決めた。

『絶対に、ルビーの呪いを解く方法を探してやる』と・・・

「さぁ、行こうかルビー。」

「ともに行こう、ジャン。」

二人は再び歩き出す。晴れた空の下、向かうは『タルタルの村』かつて、ガーデンベルクと深い交流があったとされるその村に行けば、何か手がかりが見つかるかもしれないとジャンは胸をドキドキさせていた。そして、口ずさむはガーデンベルクの歌。


微笑めよ 女神とともに 歌えよ 森の歌を


目覚めの時は 黒と白の分かれ目 さぁ 今こそ歌え集え 王の歌

懐かしき友との記憶 今生の分かれ目 今こそ友との約束を守る時

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