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エロゲ転生、この空気…ツライ! 

 先生に挨拶をしてからクラスメイトの元に向かう。今は魔法の自習時間だから実技場の方か。

「ん? この魔力…」

「あら。こんなに放出してどうしたんでしょう」

「暴走…ではないですが、鍛錬であればこの量は不要のはずですが…」

 怒りの感情を増し増しにした魔力が廊下を歩いている俺らの元まで届いてきた。なんでここまであいつが暴走しているのだろうか? 暴走じゃなくてもこれが続くと一般通過生徒に影響でるぞ?

「うーん、誰が怒らせたんだ」

 イベントならアリだと思うけど、これなんのイベント開始だ?

「さぁ。私は興味ないですから」

 お前ならそうだろうな。

「どっちにしても行くしかないのでは?」

「シャバの空気はツレェな…」

「大層にマズそうですね」

 言うんじゃねぇよ…。

 って、ほんとうに喧嘩しそうな雰囲気じゃねぇか…。

「やぁ何をしてい」

「おだまりなさい!」

「殺しますよ?」

「はァ? 黙ってどうにかなる問題じゃないでしょ?」

「喋ってみてください、神はすべてを許します」

「胡散臭いですよ」

 それもそうか。いやだってアイツの返しが反抗期な子供のそれじゃん。

「急にどうしたんですか優月?」

「いや、もう…なんでもない」

 さすがにネタが古いのか…。実技場についてからの一連だが会話が成立しているのは俺たち3人だけで、原因たる人物たちはこちらにまだ気づいていない。

「それよりもお嬢と絡んでるあいつは…」

 そう。さっきから魔力を増大にまき散らしてるのがお嬢。そして怒ってる相手がこの世界では一応・・初めて見る女子。

「ん? あら、あんた」

 こっちの存在を認知した女子がこっちに歩いてくる。そして他のクラスメイトも俺たちに気付いたらしい。何人かは驚きからか叫ぼうとしたけど正面にいる女とお嬢から放たれるオーラに飲み込まれてしまったため不発に終わる。

「久しぶりだな。で、なんでお前らは……」

「おにぃちゃぁぁあああん!!!」

「ごふっ」

 大きな呼び声と一緒に小さなクリーム色の弾丸が胸元に吸い込まれた。

「おにぃちゃぁん! おにいちゃぁんっ!!」

「お兄ちゃん、痛い…」

「だってぇ! おにいちゃんがぁ、ぐずっ、うぅぅうぅ…」

「悪かったって…」

「ほんとだよ、兄ちゃん」

 瑛士と千花が真っ先に近寄ってきた。千花に至っては胸元でわんわん泣いてるけど。頭を軽く撫でながらなだめる。

「えっと…身体は大丈夫なの?」

「まぁな。むしろなんか寝すぎて身体を動かしたい気分」

「あははっ、三ヶ月も寝てた人とは思えないね? というか、身長伸びた?」

「らしいな。制服着ようとしたら全然服が着られなかったわ」

「だからジャージだったんだ?」

 そうこう話をしているとほかのみんなも集まってくる。千花は泣きながらしがみつく体勢に変わってた。なんか動けないと思ったらそういうことだったのか。軽すぎて気付かんかった。いや頭に手をずっと置いて撫で続けていたから千花がもぞもぞ動いてるのは気付いてはいたけど、器用な奴だ。

「本当に大丈夫でござろうか?」

「息災でなにより」

「まぁ生きてて何よりだァな」

「さんきゅーな。」

 忍も敦もヤンキーも心配してくれてたみたいでなんかうるっときそう。泣きはしないけど、ここまで好感度高かった気はしなかったから素直に嬉しい。嬉しいんだけど…。

「で、お前はなにを考えてんだ? 晴臣。正直に言ってみ?」

「わかった。どうしてお前はアホウなんだ?」

「わからん、どうしてそうなるんだ?」

 正直かよ。いや言ったのは俺だけど。

「十分にアホウだろう。停学していたかと思えばひとりでに講堂地下のダンジョンを見つけ、あまつさえ一人で攻略するなんて、アホウのすることだろう」

 あ、そういうことね。

「でもお前だって同じことしたろ」

「フン。先に攻略を終えた人間と後を追う人間では重みが違うだろう」

 そういうものか? そういうものか、確かに言われてみればそうだな。ゲームではないこの世界じゃあ命の価値が違うんだった。

「まぁ今度はひとりじゃなくみんなで攻略しようZE☆」

「胡散臭い。だがまぁ、楽しみにしてる」

 ニヒルに口角だけあげて自習に戻る瑛士を除いた男組。

「えっと…全員、ダンジョンはどこまで潜れたんだ?」

「うん? 40階層までかなぁ。複数種の大型ゴウレムを倒したところまで」

 あら、意外といいところまでは行けてるじゃぁないか。

「ってことはあれか? 40階層まで行ってから講堂のほうに全員で挑戦してる感じか」

 肯定するようにうなずく瑛士。意外と進展があったようでよかった、というかグループも正しくわけられたならそこまで行けてしかるべき、と言ってもゲームしている人間が指示をするならば、という前提ではあるが、それを考慮しても結構いいところまで進んでるようだ。

「そういえば兄ちゃん、聞きたいことがあ―――」

「凛堂様」

 いつになく勢いがないお嬢の呼びかけが口を開いた瑛士の言葉に被った。瑛士の閉口致し方なし、何を聞きたかったのか…いや助かったのか?

「おうお嬢、久しぶり」

「ええ、お久しぶりですね。思ったより元気そうでなによりですわ」

 睨まれながら気を遣われるが、本当にそう思ってるなら睨むんじゃぁないよ。後ろで胡桃がひょこひょこと頭を覗かせてるのが清涼剤替わりになってるが、焼け石水ぶっかけ放水どころの騒ぎにならない。むしろギャグ。お嬢のオーラに紛れて可哀そうに見えてきた。

「胡桃もせせりも久しぶりだな」

「りんりん! 元気でよかった!」

「そう、だね。うん。まずは無事でよかったよ。事故に遭ったと聞いたときは驚いたけどね」

 りんりん…いつのまに呼び方が変わったんだ?

「そっか、悪い悪い。でももう身体は問題ないから」

「じゃぁよかったよ! みんな元気なのが一番だからねっ!」

「ハハッ、だな。ふたりともこれからもよろしく頼むわ」

 そういうと、ニッと明るく100の満点な笑顔を向ける胡桃に思わず笑う。コイツのこういうところは本当に羨ましくて誰も真似ができない胡桃だけの良いところだ。もちろん胡桃以外の心配してくれた全員が良い奴でカッコいい奴らだってことはわかってる。

 隣でクールに笑うせせりもそうだ。たぶん『他人』の関係のなかで一番心配してくれてたやつは恐らくコイツ。そりゃヤンキーや晴臣も心配してくれたとは思ってるけど、それは「強さがある」前提な部分も含んだだろうと予想。

 だけどせせりはそれを抜きにしても人間的な脆さ(・・・・・・)を知っているから、他人であろうとクラスメイトを心配する。ソースはゲーム。

「凛堂様、一人でダンジョンを攻略したというのは本当でしょうか?」

「そうだけど? 確認なら先生とか理事長にしてるだろ」

「ええ、もちろん存じておりますわ。だからあなたにも聞きたいのです」

 不機嫌そうなオーラは取り消して真面目に問うお嬢。

「あなたにとってダンジョンとはなんですの?」

 …あぁ、なるほど? なるほどなるほど。こりゃあれだ、めちゃくちゃドツボにハマってる。ただ裏を返せば停滞からの脱却チャンスだし、魔法使いとして覚醒する手前だ。晴臣に対する貴族としてのプライドと瑛士とかえでもに対する魔法使いとしての自信を砕かれてもなお、立ち直れるかどうかの瀬戸際に踏み入ろうとしている。

「そりゃもちろん箱庭だよ。おもちゃみたいにワクワクするところで、あとは俺たち特別進学科とその英雄が生き残るための目的だな。ダンジョンっつー箱がたくさんある世界の庭。だから箱庭さ」

 この世界はもう少しで崩壊する、それを止めるために英雄の瑛士がいる。だけどそれをわかる人間は理事長とみやびを除けば俺しか知らない。そして瑛士の英雄化と呼ばれる覚醒イベントはもう少し先の50階層で強制的に英雄となるが、俺がその場に立ち会えることはほぼないだろう。

 だからその時に指示ができない俺の代わりにある程度戦力を備える必要があり、愛莉栖の魔法使い覚醒は絶対条件。

「お嬢にとってダンジョンってなんなんだ?」

「私、ですの?」

「あぁそうだ。ただダンジョンに潜ってちゃ意味がない」

 運動するにしても勉強するにしても「目的」がなければ意味がないというのはダンジョンも同じ。ダンジョンを楽しむか成長の機会ととらえるか、それとも敵を倒すだけの場所ととらえるか。

「私にとって、だ、ダンジョンとは…」

 違うだろ、おりこうさんじゃないお前だよ。澄ました顔で表では優雅に美しく、でも泥臭く努力する女なんだよお前は。そんな女がダサイわけがない。むしろ憧れであってカッコ良くいてほしい。ファンとしちゃ当たり前だ。

「あんとき、魔法測定でぶつかったときみたいに、もっと強い意志を見せてみろや」

「っ、私は! 立花の魔法使いですわ! 私の魔法の前にはダンジョンなんて踏み台でしかありませんわ!」

「ハッ」

 そうだよ。お前の良いところはその意志の強さだよ。周りに弱みを見せない強がりの意地を張るんじゃなくて、負けん気の強さと魔法に対する執着心、なにより魔法では誰にも負けたくないという魔法が好きだという(・・・・・・・・・)純粋で美しい気持ち(・・・・・・・・・)が、お前の好いところなんだよ。

「なら一回でいいから、瑛士と二人でダンジョンに潜ってみ? たぶんお嬢…じゃなくて愛莉栖。お前は化ける。誰にも負けない最強の後衛魔法使いに、だ」

「フン、元から誰にも負けてませんわ」

 強がり、ではなく意地だろうな。弱さを隠すためのものじゃなく、自分を鼓舞するために張る意地は嫌いじゃない。だから誰にも負けない世界最強の固定砲台型魔法使いになってほしい。

「…わかりました、今は素直にアドバイスを受け取らせてもらいますわ」

 …あぁ、これ(・・)なら大丈夫だな。あとは…。

「後ろで固まってる桜もだぞ」

「えっ?」

 どうやって話に入ろうとして考えていた桜だが、急に話を振られてきょとんとした。最強の後衛回復魔法使いがなんて顔だ。

「お前も瑛士と二人で潜ってみればいい。理由は…」

「理由…?」

 言っていいんか? いや、自分で気付いてほしいやつだから黙っておこう。桜が聞きたそうにしてるけど、すまんな。これも成長よ、成長。

「攻略終わったらわかると思う。ああ一つだけ条件つけさせてもらうけど」

 瑛士、頑張れ。

「絶対にお前は攻撃しちゃいけない、攻撃魔法だけは使うな。瑛士が死にそうになってもだ」

「えっ?」

「うぇっ!?」

「………」

 後ろで興味がなさそうにしているかえで達は除いて、話を聞いていた桜と愛莉栖が声を出す。聞こえ方によっては「瑛士死ね」みたいなことを言ったような気がしなくもないけど本人は…。

「それって火力が僕だけで事足りるってこと?」

 ケロッとしていた。

「攻略完了した瑛士ならなんとなくわかってるだろ」

 あー、と理解したような相槌を打つ瑛士。

「だ、大丈夫ですの? 瑛士さん」

「ん? 兄ちゃんが言うなら大丈夫だよ!」

「えぇー…」

 ドン引きしてる愛莉栖だけど、残念。

「言っておくけど、愛莉栖とペアで潜るほうが難しいからな?」

「そうですの?」

 回復手段どうすんねん。瑛士の回復手段だけやぞ。どんな成長してるかわからんからもしかしたら中級まで延びてる可能性もあるけど。

 あとは…まぁ30階層突破できたらコツもつかめるだろ。

今年最後の更新です。来年もよろしくお願い致します!

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