エロゲ転生、こんなクソ編成したクソプレイヤーはどこのどいつだ!
途中休学とかするわけにもいかないので、かえではクラスに戻って俺は引き続き引き籠り謹慎中だ。
そして謹慎中とはいえ時間を無駄にするわけにもいかない。ということで早速特訓を始めている。場所は引き続きアインストダンジョンの最下30階層。ガーゴイル君を討伐した後の広場。
というかね、ユーフェウスのモードになったときにわかったわ。
これ強すぎ。頭おかしいんじゃねぇの?
それで通常モードで戦ってみてまた一つ理解したわ。
全体的に能力が底上げされていた。前はガーゴイル君がランスでも一確できなかったのに、今では【氷の弱魔法】一発でも倒せるくらいに魔法の攻撃力が上がったんですよ。たぶんもうワンランク上がれば範囲攻撃でいっぺんにぶっ倒せるはず。
ただ問題はそれではなく…。
「全部に闇魔法が掛かってるわ。乗算で上がってるのはいかがなものか?」
なぜか氷×2+闇ではなく、氷×闇×2みたいなダメージの出方をしている気がするんだよな。強撃槍のダメージは200前後をもとにだすとすればガーゴイル君は氷槍4倍+αで1匹。
あくまで簡単な計算方法だけど、ゲーム攻略サイトには精密なダメージ計算方法が載っていた。が、検証用と精密な計算を要するRTAでもなければ使わんし、だったら簡易計算で十分。それに今回は後者で、ある程度でも大まかに認識していないと痛い目をみる羽目になりそうだ…。
簡易計算の方は魔法の威力平均で取ればだいたいはダメージ量は大まかに固定されるので、あとは敵の魔法と属性の耐性次第で算数のお勉強だけで済むが…。
「問題は闇魔法が乗っていること、なんだよなぁ…」
コレのせいでダメージ量を算出しなおししなければならない。
……いっそのこと。
「闇魔法を使わなければいいんじゃねぇの?」
とは思うものの、このダメージを捨てるのはさすがに頂けない。汎用型火力厨を自称したい身としては、小さくともダメージは切り捨てられない。魔法は四捨五入のようにはいかない。斬り捨て御免! とできれば楽だったのだが…。
「仕方ない。遠回りだけど一から調べなおすか…」
悲しいことにダメージ算出する方法が不明というのなら、確定している情報から仮説を立てていくしかない。そうじっちゃんに教わった、という漫画から知ったことだけど。
今までは特に使うことの無かった日陰魔法こと、召喚魔法を準備する。
「召喚魔法…【身代わる人形】!」
錆色の幾何学模様をした魔法陣が地面に現れ、そこから二足歩行の人型ゴーレムが登場した。
「まさかこっちで使うことになるとはなぁ……」
そうごちるが本当に使い道がわかっていないこの魔法で生み出されたゴーレムは、500ダメージをカバーするという効果を持っている。
これだけ聞くと使い道はあるように思うが、肩代わりではなくカバー。そして動かすことができずタンクのようにヘイトを集める効果もない。さらに言えば【身代わる人形】には【土くれ人形】という、5000ダメージを肩代わりする上位互換の魔法がある。
たった500程度では使わないよねっていう。
「でも今は500程度のダメージで調べられるからちょうどいいって言うね」
弱魔法程度で一確ギリギリ届かないレベルなら今回は役に立つ。もちろん後で面白く弄り倒してあげないとね!
せっせかせっせか。
そして調べること数時間。
「闇魔法の追加ダメージは籠めた魔力(MP)の平均1.5倍から3倍。特に強い魔法であればあるほどダメージ効果が強くなる、と。意外なのは防御系の魔法にもきっちり耐性がついていることか」
攻撃魔法の時は威力に応じて大小それぞれのスパークが走る程度だったけど、ウォールやゴーレムには黒い靄のようなものがまとわりついていた。
「もしかして…この防御魔法ってかえでが使ってるやつか?」
かえでというかヤンデレちゃん。
……そういえばかえでからもらった時は靄に感情のようなものを感じた気がしたけど、俺の場合はどうなんだろうか。
興味好奇心から目に見えている黒い霧に触れる。
「………ははっ。……あははっ! あはははははっッ! そうか、そうだったかぁ……」
伝わってきたのは「狂おしいほどに魔法への執着心」と「純粋な探求心」だった。
「なんだ簡単だったじゃんか。魔法に素直になればいいだけだったわ」
そりゃぁそうだよな。こっちに来てからずっと瑛士と千花とかえで以外はずっと魔法のことしか考えてなかったし。
転生先が魔皇帝じゃなくて、受け入れ先が魔皇帝って思えばしっくりくるわ。
うん、そうだな。一般人じゃあこの探求心は制御できないよね。……まぁそうなると、かえでに関して追求しなきゃいけないことが何個か出てくるけど……今はいっか。
「全属性を満遍なくを使うのも良いけど、やっぱり強い魔法が使いたいんだわ。俺」
歯止めが利くように暴走の可能性がある魔法は使わないようにどこかで制御はかけていたけど、知ってしまったからか最早「躊躇」はどうでもいいものとなっていた。
うん。やるか。
「とりあえず…上級魔法でもやってみるか!」
自重を捨てることにした。
その日から一週間近くは好き勝手に魔法をいじくりぶっぱなしの生活をしていたら、魔法発動時に黒い靄のようなものが溢れてくるようになったが、きっと些細な物だと思う。
☆★☆★☆★
「些細なものではありません優月様。少しはご自愛ください」
身の回りで困っていることはないかと聞かれたので今日までのことを伝えたら忠言を頂いた。
ちなみに今のかえでの恰好はデフォ、つまり日常生活を送るときの海空かえでスタイルだ。
「いやだってねぇ…。魔法がつい面白くてさ…」
「小さい頃から見守らせていただきましたが、やはり優月様はおかしいです」
唐突な罵倒をどうも。趣味ではございませんが。
「寝食を忘れて魔法に浸ることもありましたが、まぁそれは良いでしょう。だとしてもそこまで異常なまでに魔法にこだわるのは理解が及びません」
「と言われてもな…。魔法が好きだからとしか言えんし」
表情は変えずに少し考え込む。
「そういえば優月様、先ほど靄を触ったと申しましたね?」
「ああ、そうだけど」
靄がどうしたんだ?
「魔族の間では黒い靄のことを魔法の根源と言うのですが…」
まりょくのこんげん…?
「この根源はひとによって違います」
「ふーん? ってことはあの時かえでからもらった根源と俺のは別物ってことで?」
「そうなりますね。ある意味ではこの根源、自分の弱点ともなりますので」
「…物語にありがちな心理戦とかで、揺さぶられる要素になりえるってこと?」
「おっしゃるとおりです。だからこそ、誰にも知られてはいけないのです」
ふーん…? 魔法への傾倒と探求心がどうやって揺さぶられるのか気になるけど…。
…ん? あれ?
「かえでの根源って、偏重な愛と嫉妬と殺意ってこと?」
「えっ、なっ!?!?!?!?」
思わず口走ったのがかえでにクリーンヒットしてしまった。茹蛸のように耳まで真っ赤にしてしまったかえでは、魔族とか関係なしに可愛いかった。
すごく羞恥攻めしたいけど可哀そうなのでやめておく。
「あー、その…靄をもらった時にそんな感じの印象というか感情というか、伝わってきてな……」
「あっ、んっ…。なるほど、ですね…っ」
説明して受け入れてもらえた…とは思うけど、さらに手を顔に当てて伏せてしまった。うん、これは俺が悪い。
「えっと、悪かったな…すまん」
「…いえ…元は私が許可してしまったものですから……」
……。しばらく無言の時間が続いた。すげぇ気まずい…。
「こ、コホンっ。それでですね優月様…」
「ん? な…。…なんだ?」
沈黙の均衡を破ったのはかえでからだったが表情は真剣な物で、それゆえに言葉に詰まってしまった。
「先ほどは根源は誰にも知られてはいけない、と申し上げました」
「言ってたな。それがどうしたんだ?」
「矛盾しておりますが、これは人間サイドにとっては害悪極まりない効果があります」
害悪…? 思わずのどがなってしまう。唾を飲み込んだ。
「はっきりと申しますが、この魔法の根源と呼ばれる靄は耐性が無ければ最悪の場合死にます」
「……は?」
え、いや…えっ? は?
「え、コレ死ぬの?」
俺死ぬの?
「あくまで耐性がない人間なので、優月様はすでに耐性を持っていますし、それ以上にそこら辺の有象無象とは比にならないかと」
これで死ぬわけじゃないならいいんだけど…別格っていうのはなぁ…。
「なので優月様のその根源は、人間社会で生きていくなら出さないようにしてください」
いやん。
「これさ…ポロっとでてきそうなんだけど…どうすれば?」
「そこはもう…。魔族以下にならないために抑制してくださいとしか…」
「うそん…」
闇魔法抑制タイムじゃんか…。魔族の力で上乗せしてようやく超級魔法が安定してきたというのに…。それなしだと超級魔法はギリギリ暴走しちゃうんだって。やっぱ魔族の血は害悪だって、はっきりわかるんだね。
「それともう一つ。こちらは全部で5段階がありますが…おそらく優月様は最終段階に到達しております。そのためほかの魔族と出会ってもユーフェウス様のお姿に変態してしまえばほとんどは無力化…といいますか殲滅できるかと」
それはゲームの時にあったな。
下級魔族が1段階、そこから中級へ上級、幹部とひとつずつ段階が上がっていき、四天王と魔王が最終段階の力をもっている。まさか自分で纏っていた靄が「【死の誓約】」と呼ばれる力だとは思わなかったけども。
「…かえでも同じ段階なのか?」
「…申し訳ありません。私は4段階になります。一人は確実に最終段階ですが…もう一人は同じくして4段階かと。あの女はどうせ興味がありませんから、優月様がトップでございます」
そのヨイショはいらない。
「まぁひとりよりはかえでが同じところにいてくれた方が安心はするよな」
「かしこまりました。明日中までには」
「あぁあぁ、そこまで急がなくてもいいよ」
「かしこまりました。近日中には」
大して変わらないと思うけど。
「あ、それなら…今度一緒に行きたいところあるんだが…」
「かしこまりました。明日はお休みしましょう」
「……学園だと思うけど?」
「もともと学園には優月様がいるから通っていたものですので、いないのであれば魔族が通う意義がありません」
「…………そうか…」
まぁコイツが良いって言うなら何も言うまい。
「ちなみに今あいつらのダンジョン攻略はどれくらい潜れてんだ?」
「グループをシャッフルしてはいますが、瑛士さんと青羽様、それとに蔵森様と私の4人パーティでようやく25層のボス部屋に到着するかというところでしょうか」
どんな組み合わせやねん!
「遅いなぁ…」
「……? それはどういう意味で?」
これは割かし不味いのでは…? いくら理事長との交渉が結果的にうまくいったからといっても、大本…前提が整ってなきゃ意味ないんじゃぁ…。
そうだな…。
「グループの編成は?」
「ええと…。ひとつは先ほども言いましたが、瑛士さんに青羽様と蔵森様と私。ふたつめが立花様と雛田様、園莉様に荒木田様を加えた4人で、最後が龍蔵寺様と千花さんとクソニンジャの三人となります」
最高に意味わからん組み合わせやんけ!
百歩譲ってリーダー張れる人間を分けるのは理解できる。どこも問題しか抱えてないだろ。
「瑛士たちの場合は物理が強くても魔法による決定力不足、お嬢たちは攻防優れていようとも殲滅力が高すぎるから継戦力がない。最後に至ってはパワーバランス以前の問題。人が足りんのはすまんと思うけど」
「もしかして…わかっていたのですか?」
「そりゃそうだ。自己紹介とテストで見せてもらったし」
別の知識もあるけど、あとはクラスの人間関係だけど…お嬢と、晴臣と和樹割かし良好だと考えれば…………。
「そういえば…今何月だ?」
「え、今ですか? 6月の2日でございますが…」
「ふーん…成程な」
6月の転校生イベント。想定から漏れずにアイツがクラスに来るってことなら…。
「一つ仕事を頼みたい」
「は、何なりと」
澄ました顔で受け入れ態勢を取るかえでは、完全に使用人というか部下のソレ。
「班編成を変えてほしい。ひとつめは瑛士に千花と愛莉栖と桜だ」
「……かしこまりました」
「サンキューな。二つ目は晴臣と忍と敦とせせりの4人。そして最後が胡桃と和樹とかえで。このフォーメーションでやらせろ」
「……かしこまりました。ちなみに私を最後の班にした意図については?」
「魔族抜きにしても物理に対する妨害魔法が決まっちまえば胡桃と和樹の火力で突破できるだろ」
「かしこまりました。与えられた役割はこなしてみせます」
手を胸に当ててお辞儀をするかえで。だが…。
「それとは別にかえでには一つオーダーをだす」
「なんでしょうか?」
「簡単だ。和樹をリーダーとして指示を仰げ。無謀な指示でなけきゃ従ってほしい」
一瞬で嫌そうな顔を浮かべる。
そりゃそうよな。俺以外で聞こうとしないもんな。
「俺の命令だからという体で構わんから」
「かしこまりました……」
「悪いな。何か一つだけ聞いてやるから」
「っ!? かしこまりました。こちらも全ういたします」
カッと目を見開いたかえではちょっと怖かった、というか靄が全力で触手のように蠢いていてSAN値が減ったわ、絶対。
「ところで優月様、明日はどこに?」
明日は決定なのね。
「簡単だ。アインストダンジョン……講堂のダンジョンに行ってもらう」
「かしこまりました。……行ってもらう?」
騙されなかったか。まぁかえでならそう簡単に騙されんよな。
「そうだ。一人でアインストダンジョンを攻略してもらう。理由は…そうだな。30層を攻略できたら教えるわ」
「ちょっと待ってください? 講堂は2層までしかないはずでは?」
「気づかんかったか? あの部屋でおかしい場所が一部あったはずだぞ」
という体でごり押し。
「……申し訳ありません、無知な私では気付きませんでした」
「まぁしゃーないって。ほかに気づいてるやつはいないと思うしな」
上層階段近くの壁のブロックを教えると目を伏せるかえで。
「メルリアの力は封印で、素のステータスで進めば多分クリア扱いしてくれるはずだ」
「かしこまりました。明日中に攻略いたします」
「おうよろしく」
後は…何かタスク漏れしてたか…いやないはずだ。
俺は俺で明日かえでが攻略している間で、あの四天王サマとご対面してこなきゃなぁ…。
胃が痛くなりそうだ。
…………あっ、寝てたわ!




