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エロゲ転生、君の名は。

 そして一体どれくらい眠っていたのだろうか。

 意識を取り戻した頃には部屋の外はすでに陽が完全に落ちていた。

「目を覚ましましたか?」

 気付いたら部屋の中は真っ暗だというのに室内がはっきりと見えている。そしてその暗闇の中でもかえでの存在は認識できているのだ。

「ん…ああ。どれくらい寝てた?」

「5~6時間ほどですね。今は日付が変わる少し前です」

「そっか……」

 着ていた制服からルームウェアに着替えているってことは、いろいろ済ませた後らしい、と思う。いつもは黒で染めているかえでが、今日はすらりと伸びている綺麗な清楚を意識させる真っ白の七分ルームウェアが、嫌にでも目線をくぎ付けにしてくる。

「優月さん。どうかしましたか?」

 そしてそれ以上に気になる彼女の…かえでから漏れている闇のような靄から目が離せない。それは、月下美人以外の言葉は不要で、他のモノを映させないようにされている、と錯覚していた。

 つまりは……。

「……いや、綺麗だなぁって」

「…そうですか?」

 かえでがキョトンとしながら首をかしげている。

 が、いやまてお前。お前何言ってんの!? 口に出てるんだけど!?

「まぁ、な。で…気になってるんだけど…」

「はい? なんですか」

「その…靄…? みたいなの、何?」

「あっ……」

 かえでが「しまった…」という顔をしている。

 なんでも卒なくこなして、何事も万事平常に進めるかえでがミスをするのは本当に珍しい。とはいえ…これはなんだ?

 もやもやする…というよりも、ざわざわする。

「触れても大丈夫なやつ?」

「……今のあなた様なら大丈夫ですよ」

 なんか引っ掛かる言い方だけど、許可が出たので。

「ひゃんっ……」

 !? すんごい声が出たぞ!?

「かえで?」

「…いえ、なんでも……んっっ」

「えっと…続けても大丈夫か?」

「はい、つ、続けてください……」

 痺れる様な甘い吐息が近くから漏れてきて、そのため理性がボロボロと崩れていくが、靄に触れる度に繕っている『闇』が身体の中に吸収されていき、崩れて落ちた理性から別のものになって理性を上書きする。

「ん、っ、んんっ、ぁ……んぁ、は、ぁぅ……んっ」

 代わりにかえでがかなりエロいことになっているけども……。

 満足…というか、拒否しても勝手に流れ込んできている闇が流動を止めるまで1分程度。

「こひゅ…こひゅ…」

 ベッドに突っ伏して全力で呼吸を取り戻しているかえでができあがった…。

 なんだこのエロイ女は。いや何とかして耐えきったけど…うん、思い出すだけでヤバイ。よく耐えた俺。グッドジョブ。

「悪かったなかえで。しばらく休んでていいから、な?」

「はひ…、そう、させていただきます……んっ…」

 なんとか答えてくれたけど、無理に声を出したようで少し気が緩んだのか、感覚に襲われている、ようなものにやられていた。

 これはこっちからは声を掛けないほうがよさそうだ。

 で、問題はこの闇のようなものなんだけど…。……この…形容しがたい…なんだろうか。偏重? とも呼ぶべきか、一途な好意の感情。狂おしいほどに激重な愛情と同じくらいの嫉妬と悍ましいまでの殺意。そしてどこまでも深く澄んだ闇。

 なるほど…。わからん。ただ、このかえでにとりついていた闇がかえでの闇属性を上げていたものなのだろうかとも。普通の魔法ではわかりえない闇というのがどうも引っ掛かるが、答えがでない。

 しばらく闇と戯れること…何分? なんとなくだが理解が進み始めた。

 そもそもこの闇という靄は、自分が供給した魔力をほぼ自動で「闇属性」に変換してくれるというもの、というのが近しい。ただ…自分の魔法が勝手に闇へ変換されるのは…困ったもんだね。

 結局のところ、闇属性を使わないと身体の中に属性魔法がたまり続けることになってしまう。それがどうなるかと言えば、すべての魔法が闇魔法になってしまうのだ。

 これは固定した属性を持つかえでならメリットだが、複数の属性を扱う人間からすればメリットは皆無でデメリットしか残らない。耐性持ちの敵と遭遇した場合、単一しか持たない魔法使いははっきり言って役に立たないからだ。

 かえでのように「どの敵にでもデバフを通せる」くらいに強力な単一ならまだしも、中途半端な火力しか持っていないなら雀の涙分の威力もあれば御の字。かえで曰く闇属性に完全耐性を持つ魔物は「闇を吸収して増幅できる」ものが多いらしいので、余計にデメリットなのだ。

 ところで……角はどこだ?

「ん、んふぅ…はぁ、ん…ふぅ…はふぅ…優月様、お待たせしました」

「ん? ん。おう」

 美少女にあるまじき艶やかな声……いや美少女だからいいのか? ともかく。喘ぎ声に近い声でダウンしていたかえでが復活を果たしたようだ。

「ところで…どうして様付け?」

「…ん…ふぅ。仕えるべき主をやっと見つけたと言いますか」

「ふーん?」

 少しほほえみながら……いや、恍惚? しながらよくわからない回答をもらったけど、なんかかえでに無駄な色気があるように見えるのは気のせいか?

「苦しいならもうちょっと休んでいてもいいぞ?」

「ん…いえ、これ以上はお手を煩わせるわけにはまいりません」

「そうか? 別に今更だと思うけど」

「どういう意味ですかね?」

「そのままの意味だけど?」

 無表情同士で見つめあうが、結果は変わらず。

「で、かえでさんや」

「なんでしょうか優月様?」

「俺が持ってた角ってどこにいったん?」

 聞いたらかえでが目線を上に外した。

「…?」

「付いてますが…鏡を見たほうが早いかと」

 そう言ってポケットから鏡を取り出して映してきた。そしてそこに映っていた俺は見慣れた(優月)ではなく、金色をベースにオレンジ色のメッシュが入った髪とその隙間から覗く短い角、瞳が右目は翡翠で左目が紫に変色し、そして犬歯が伸びている。

「……は?」

「ふふ…その姿もお美しいです。それでこそ、我が主様…」

 夥しい暗闇の魔力をあふれ出しながら変貌を遂げるかえでのその姿は…変わった後の姿をみてむしろしっくりきた。

「あなたの最愛で、あなた様の寵愛を賜った魔の長、メルリアでございます」

 あー…はぁ、繋がったわ。コイツが途中抜けするの、そりゃそうだわ。中盤手前あたりで魔族が暗躍するんだから、そりゃ抜けるわな。四天王のメルリア…かえでもそっちに合流するに決まってるよな。

 紫の髪がワインレッドに変わり、元の髪の色は肌に流れ落ちて薄い碧の肌へ。そして生気の宿らない瞳。しかし美貌はもとの人型形態からさら昇華していた、まさに「魔王(開発)に愛された魔族」が一人。

 八重乃みやびよりもさらにヤバイ魔王軍幹部の一人(・・・・・・・・)極色屍鬼ごくしょくしきメルリアが目の前に現れ、俺の目の前で傅いた。

「ずっと、お逢いしとうございました…我が愛しき君…魔皇帝ユーフェウス様」

 魔王軍最高幹部、魔王の側近、魔王軍最強。数々の強ボス兼ラスボスと呼ばれた姫トラ一の魔にまつわる強キャラ。それが魔皇帝ユーフェウス―――そして俺の正体だった。

 人類の最大の壁と囁かれていたキャラクターの素体となるキャラに、俺は転生していたのだ。

 なんてこった。

「ユーフェウス…俺が…?」

「さようにございます。私があなた様を間違えることはございません」

 傅く目の前の美少女が、きっぱりと断言した。

「……なぁかえで」

「いかがなさいました?」

「お前は……かえでで良いんだよな?」

「その答えは正しくもあり、誤りでもあります」

 …と、いうと? かえでじゃないのか?

「海空かえで、という女は現世に存在しておりません。魔の跋扈しない世界では目立ちますので、溶け込める素体に『創り換えた』だけにございます」

「……なら、お前が俺のところに来たのは…」

「はい。ユーフェウス様を『お迎え』するためでございます。本当はもっと早くにお迎えする予定だったのですが…」

 脳裏で俺の、俺じゃなかった頃で死にかけた記憶がフラッシュバックした。

 背後から誰かに突き飛ばされて高いところから落ちた事。

 山の奥に取り残されて一人一週間彷徨った事。

 居眠り運転で道を走る巨大なトラックに轢かれかけた事。

 そして瑛士と千花と会った時には英雄が魔族に襲われていて、魔族側がわざと自然になるように血を浴びせてきた事。

 ほかにも記憶を掘り出せば思い出せるが、それぞれが「仕組まれた罠」にも思えた。

「ユーフェウス様を喚ぶために危険に身を晒したこと。そのことに関する処罰は如何様にもお受けいたします」

「…そうか」

 傅きが土下座に変わる。そんなかえでを見て…特に感情が出てくることはなかった。怒りとか殺意とか悲しみなどが湧き上がることもなく、不思議なことに出てきた感想が「そうか」だけだった。

「それは別にいいんだけど…これ、日常生活に不便じゃね?」

 そんなことよりも…これ戻れるの? 戻りたいんだけど? 日常が魔族とか超絶お断りなんですけど。討伐対象じゃん。自害してどうぞランサー。

「方法があるとすれば、人間に変態するのが一番良いかと」

「まぁそうだよな」

 一番安牌な答え、というかほぼ同じ回答が帰ってきた。

 いやでもユーフェウスの魔法は魅力的だ。魔族から戻りつつ人間として生活したい。むしろ人間形態で魔族の魔法を使えたら最高。できたら自害しなくてもいいよランサー。ここに令呪なんてものはないから。

「変態ってことは、魔族にも人間にもなれるってことよな?」

「そうですね。魔族が人間になるよりは簡単ですので」

「言うほど簡単だと思えないんだけど…?」

 かえでの簡単は「死ぬ気でやれば簡単」なのであって、間違っても鼻の穴にペンを突っ込むくらいの難易度じゃない。

「大丈夫です。私がついてますから、ユーフェウス様のお手を煩わせるわけにはまいりません」

「なら大丈夫か」

 かえでサポートに付いてくれるなら安心だな。

 …………。

「ちなみにどんな方法で?」

「もちろん地獄で」

「はいアウトー」

 簡単というメニューと言いながら地獄でナニをされるんですか? ここは地獄ですか? 終末は何してますか? ちょっと地獄で特訓してきてもらってもいいですか?

「ですがユーフェウス様。今のままで日常生活を送るわけには…せめて人間のように、…改めてみましたら角以外は人間ですね」

 まじまじと全身を眺めてきたと思ったら、そういうことですか。はい。

「コレさえどうにかできれば…」

 同じこと思ったけど、角さえ隠せれば意外と問題解決ができそうな気がするなとは思った。思ったけど、軽音楽部のドラムの子でもなければ、ギャグ漫画の世界戦じゃあるまいし、「さて、この角はどうしたもんか」で縮むわけがない。

「角は出したくなければ出るなと思うだけで角が縮みます」

 縮むんかい。

「容姿についても戻ろうと強く願えばある程度はもとの姿に戻れますよ?」

 戻るんかーい。

「皮膚や色などの外見が変わるだけで、身長や筋肉などは戻すのに苦労しますが」

 肩にちっちゃい重機乗せてんのかーい。これは今のツッコミじゃなかった。

 まぁそういうことなら……『戻れー…戻れー…』と念じてみた。

「あら、優月様の姿に戻りましたね」

「ほんとか?」

「えぇ。鏡をどうぞ」

 スッと手渡してきたので覗き込む。

「うわ、ほんまや…」

 こんなん鼻の穴にペンを突っ込むよりも簡単だわ。鏡をみなきゃ穴に入れにくい短くて長い棒とは大違いだ。実は鉛筆って鼻の穴に刺すより噛んだほうが味がして美味しいけど、あれ毒らしいね。大学にいた数少ない知り合いから聞いて初めて知ったけど、そろそろ関係なくなってきたし話を戻すかな。

「なんでこんな簡単に戻せるんだ?」

「どちらからがベースかで変わりますね。魔族から人間というのが難しいのであって逆は簡単ですよ。魔族は擬態ができたとしても人間らしさがなければ社会に溶け込めませんし、そのためには感情の抑制とか肉体の調整なども必要ですが、元が人間ならその必要はありません」

「そうなの? …その割にかえでは苦労した様子はなさそうだけど」

「地獄でデート、しましょう?」

 いややわそんな誘われ方。

「奈落で一緒に…しませんか?」

「そんなんご遠慮一択だわ」

 目を潤わせながら見上げてくる。うーん、ちょっと可愛いけど死んだ魚の目はNGで。

 確かによく見れば横に角を生やせばメルリアそっくりだわ。角は魔族によって生えてる場所が違っていて、ユーフェウスは頭の前側に二つだが、メルリアは側頭部に短いのが二つ。残りの二人は前側に長いのが一つと頭のてっぺんに二つ。ちなみこの間合ったヤーバルハが鬼のように長い角を持っていて、サキュバスの女(リゼリア)がてっぺんに二つ、それとは別に頭の横には羊のような巻き角が生えている。こっちもこっちで可愛い。

「ところでユーフェウス様?」

「なんだ?」

「どこぞのメスのニオイが二つもするのですが…どこの騎士と雌豚でしょうか?」

 一瞬で瞳からハイライトのようなものが消えた。めっちゃ怖い…ような気がしなくもない。

 これがかえで…ではなく、メルリアの特徴で愛がとてつもなく重くて嫉妬が深い性格なのだ。かえでの頃はよく我慢してたもんだな。別名、偏重の愛(ヤンデレ)

 そしてかえでが言うどこぞの女って言えば…多分冷徹と冷酷だ。

「ヤーバルハとリゼリアだな」

「かしこまりました。排除してまいります」

「あーまてまて」

 スッと音もなく立ち上がって大きめのナイフを手にするかえでを制止する。

 というかそのナイフはどこから出したんだ? 刺されたらめっちゃ痛そう。

「ヤーバルハは地下に幽閉されてるから出たくても出られないし、リゼリアはリゼリアじゃない」

 二人の名前と状況を伝えると、近くまで寄ってきて目を覗いてくる。…というかかえで…めっちゃ美人なのな。改めて見るとレベルが高いわ。それ以外思うことはないけど。

「………わかりました。我慢します」

 スッとナイフを仕舞った。どこにとは言わない。背後にナイフを持っていったら消えていた。深く考えてはいけない。女子のスカートの中になんでも隠せるのと同じだ。

 そう。きっとぶっ刺しに行くために隠し持っているわけじゃぁないはずだ。メルリアが自決用でナイフを常に携帯していたとしても、それは決して人を刺しに行くわけじゃないはず。

「ああ。ありがとう」

 なんで感謝してるんだ? 俺は。いや良いんだけども。…何が?

「あと、俺はユーフェウスじゃなくて優月だから、魔族のナリをしてない時はユーフェウスと呼ばないでもらえると」

「かしこまりました。優月様」

 恭しく腰を曲げるかえで。

「…すんなり了承したな。こだわりとかないの? 俺はユーフェウスであれ、とか」

「そのようなこと私には関係ありません。我が主様が主様であること。それこそが重要なのです」

 ちょっと怒った…? ような雰囲気で返してくるかえで。今のは流石に俺が悪かったか。

「そうか。わかった。それなら俺は凛堂優月、お前は海空かえでだ」

「わかりました、優月様」

「ああ。今後ともよろしくな、かえで」

「かしこまりました。私の一生をあなた様のおそばについてまいります」

 艶やかに、そして嫋やかに。優雅なカーテシーで腰を曲げるかえでは嬉しそうだった。

 秘密がまた一つ増えた。共犯者も増えた。そして俺にもかえで側にも『魔族側四天王(魔皇帝ユーフェウス)』と『かえでの偏重の愛(ヤンデレ)』というみんなに隠しておきたいステータスが加わった。しばらくは…クラスに合流できそうにもないな。


やっとやりたいことができました……長かった…。

ここからゲーム版より逸れていく感じでサムスン。


夜の優月の部屋にいるルームウェア姿のかえで。

イメージはHOOKSOFT様の「放課後シンデレラ」という作品に登場する通常スチルで「満月を背景に校舎のカーテンを振り向きながら閉じている田寄多乃実(パケの背面にイラスト有!)」を想像していただければわかりやすいかと思います。

え、わからない? ならば買いましょう!(問☆題☆解☆決)


ブックマークと評価、放課後シ〇デレラの感想をお待ちしております。(ステマ)

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