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エロゲ転生、ねぇ知ってる? 無茶の代償は命なんだって

男「うっ…(トボトボ……)」

 その翌日から魔法を研究することにした。

 とはいえ…手掛かりは「闇魔法」を調べろということだけで、ほかに思い当たることはない。なのでとりあえず闇魔法を発動してみることに。

 さすがに寮内や学園に行くわけにもいかないので、アインストダンジョンの中層ボス部屋に移動して、サクッとナメクジと倒して無属性の魔石(中)を手に入れている。もちろん売却用でアイテムボックスに死蔵だ。それにボスを倒した後なら、魔法をぶっぱなしても迷惑をかけることはない。ついでに言えばダンジョンの仕様で、ボスを倒してた後にその部屋か休憩部屋からでなければボスがポップすることはないので、気持ちよく魔法を全力で出せるってことだ。当たり前だが、誰もいないところや信用できない奴の近くでMPが尽きて魔力欠乏症で気絶ということはさせないほうがいい。じゃないと落とすのは意識だけじゃなくて命もついでにぽろっと落としかねない。まぁクラスの誰かが居ればいいんだけど…

 クラスの中で一番いい条件なのは、現時点で闇魔法最高クラスのかえでだが、毒舌もセットなのでどうしたもんか。サブとはいえ姫トラのパケイラストには載っているヒロイン枠なのだから、可愛くないわけがない。ないのだが……。

「ないものねだりしても仕方ないよな。始めるか」

 サクッと思考を切り替える。案外あいつを考えながら闇魔法を使ったら捗ったりしてな。

「じゃあまずは…【闇の弱魔法(ダークネスボール)】」

 黒い正球が空中に生成されて静止・・する。

「でここから…【闇の弱魔法(ダークネスボール)】【闇の弱魔法(ダークネスボール)】っと」

 さらに一個、もう一個と増やしていく。

 たくさんの【闇の弱魔法(ダークネスボール)】を召喚―――10以上を超えたところで数えるのを止めた―――して、自分の周囲に漂わせる。お手玉をしたり、【闇の弱魔法(ダークネスボール)】同士を合わせてみたり、衝突させて破壊してみたり、ボール自体の大きさを変える。

 何度か試してみたが…何かあるわけでもない。

「…クラ〇カの修行みたいなことか?」

 鎖(闇魔法)以外で遊ぶなと師匠(理事長)に命令されて、食事と睡眠以外はずっと闇魔法で遊ぶ。

 確か…なんだっけか?

「舐めて触って嗅いで食べて縛って……変態じゃねーか!」

 絶対違うと思うけど…鎖を具現化するにあたって、最初は触ったり模写したり、眺めたりしてたんだっけか? それから…自分を縛ったり舐めて味を確かめたり、食べて硬さを調べたりと、あとは、五感で鎖を感じとったとか…だったような気がする。

「うーん、さっそくの手詰まり感」

 なんとなく自分がお嬢に言った「魔法を楽しめ」というのから離れている気がするけど、修行にあたるならどっちがいいのか…と思ってこれを考えるのは無駄なことに気づいた。

「まぁどうせ手がかりもないんだし、クラピ〇師匠の教えでも試してみるか」

 まずは魔法を触るところから始めよう。…恐る恐る近くにあった【闇の弱魔法(ダークネスボール)】に触れると…バチィッ! と大きな音を立てて【闇の弱魔法(ダークネスボール)】は弾け飛ぶ。

「あっ、不味っ!! 【マルチクリエイトブロック】!!」

 ギリギリ魔法が間に合ったのでセーフだが、ドーム状に覆われた土壁の外では連鎖的に【闇の弱魔法(ダークネスボール)】が音を立てて爆発している。

 すっかり忘れてた。衝撃を当てるだけで『攻撃魔法』は爆発するんだった…。これ、食べるのと舐めるのと、使えなくね?

 爆発がやむまでの十数秒で考え、少し間をおいてから外に出て次の魔法を唱える。

「【闇の霧魔法(ダークミスト)】!」

 右の手のひらから靄が放出されて数秒も経たずに周辺が黒い霧で囲まれた。視界はすでに真っ暗で1メートル先すらも見えていない。かなり使いどころが限定されるけど、逃走用とかにはもってこいの魔法。ゲームの時も戦闘を避ける時は【闇の霧魔法(ダークミスト)】を使ってから逃走を選ぶほうが成功率は100%まで上がるときもあって有用な魔法の一つでもあった。まぁ実際はアイテムを使って逃げるので最初から最後まで使うことはなかったが、アイテム縛りプレイをしている人にとってはこっちを使って逃走するので全くもって無用な魔法、ということはなかったのは幸いなこと。

 そしてこの魔法、リアル世界でもかなり有用なことが判明している。

 この魔法、3メートルより外から中で何が起きてるかが見られないのだ! たとえ一メートル以内だとしても、窓の外からであれば中を見られることはない。流石に窓に張り付いて唱えると見えるらしいが…少しでも離れれば姿は完全に隠せるというメリットがある。

 つまり他人から見られないということは…つまりそういうこと。まぁ、ね。その…そういうことだ。男は一人になりたいんだよ。

 それ以外で使うことあるか!? ねぇよなぁ!?

 今のところはありませんでした。後でかえでに見つかったときに、あの時は生暖かい目で見られたような気がするが、きっとバレていると思う。恥ずかしすぎてあれ以降使うことはなかったが…誰もいない今なら使ったところで羞恥心以外に支払うものはない。

 何より攻撃が襲ってこない!

「……バカなこと考えてないで、ラジオ体操するか」

 なんでラジオ体操って思ったのかは知らないけど、思いついたのだから仕方がない。

 ダンジョン内で電波は届かないのでスマホは持ってきてない。なので頭の中で音を流す。

「大きく腕を挙げて背伸びの運動から~ハイッ! ンベッ、ゴホッ、ゴホッ!」

 霧の中で深呼吸したらむせた。あとなんでかわからないけど、ちょっとだけダメージを受けた気がする。

「ダメージを受けたということは…闇魔法の影響を受けているってこと?」

 ミスト系って霧を生むだけなんじゃないの?

 あとで教えてかえでぇもん案件だな。闇魔法に関してはかえでに聞けばだいたいの答えが返ってくる。帰ってこなかったのは、【闇の霧魔法(ダークミスト)】で情事に致した時にどうすればいいかって質問したときだけで、それ以外は優秀な先生だ。

 余談だが、その時の質問に対してかえでは「知らんがな」という、ゴミを見るような目で見下しながらバッサリ切り捨てるような回答だった。

 たぶんあの時がピークだったような気がする。それ以降で今の毒舌かえでたそに生まれ変わったような、そんなような。

「慣れれば深呼吸くらいはできるか…?」

 何度か試してみたものの、ダメージが無効化されることはなかったので、やはりかえでに聞くしかないようだ。そして気になるのが一つ。

「闇魔法を使うたびに左腕が熱い気がするけど…気のせいじゃないよな」

 …これってもしかして…。

「【闇の強撃魔法(ダークネスランス)】ッ!」

 強撃魔法にあたるランスを発動すると思った通りで、見た目が少しだけ大きくて禍々しい【闇の強撃魔法(ダークネスランス)】が生成された。そして発射してみると、やや威力はこっちのほうが上みたいだ。

 ただ…。

「うーん、ほかの人ならともかく、俺は誤差の範囲だなぁ」

 条件を考えても【闇の霧魔法(ダークミスト)】で深呼吸してから、もしくは闇魔法を何度も唱えてから、のどちらか、もしくは両方を満たしてからじゃないと威力が上がらない、ってことなら正直不要。

 これがかえでなら使いこなしてくれるだろうけど…魔族の血を浴びろなんて言えないし、言いたくもない。さて…振り出しに戻った感があるな…。

「いい時間だし、一回帰って聞いてからにするか…」

 よし、戻ろう! 転移転移!



「で、おめおめと帰ってきて私に助けを求めてきた、と」

「おっしゃるとおりでございます、かえで様」

「バァカなんですかねぇ?」

 帰ってきて早々にお説教され、解放されたからついでとばかりに闇魔法について聞いたらこれですわ。

 だってバァカなんですから仕方ないと思うんだよ。ちなみに今日のお説教の内容は勉強に身が入っていないことについてらしい。身体の復習してばかりで頭の勉強はしていないから仕方ないね。許せ。

「反省してないですね? もう一時間増やしたほうがよろしいでしょうか?」

「流石にそれは勘弁」

「では明日はお頭の勉強をしまちょうね」

「仕方ないばぶ。勉強するばぶよ」

「……二時間追加で」

「おまっ! それは卑怯だろうが!」

 ハメられた!

「とまあ冗談はさておきまして」

「本当に冗談だよな…?」

 何度もハメられている身としては戦々恐々。

「闇魔法でダメージアップというのは確かにあります。どこの資料かは忘れましたが、同じ属性の魔法は使い続けるとその効果が少しずつ上昇していくらしいですね」

 魔法の勉強だから気分は上々。って、まて! 本当に史実であるの!?

 ゲームでそんなスキルはなかったはずだけど。いやでもそんなスキルがあったらぶっ壊れ性能になるか? 胡桃の通常攻撃強化ですら魔法効果が乗らないというバランスで保たれてるのを考えたら妥当か。

「であれば同じように闇魔法も使い続ければ、効果は上がっていくのではないでしょうか?」

 チェーン…つまりは同じ魔法の効果が乗り続けるのであれば【闇の弱魔法(ダークネスボール)】を使った時がまさにそうだ。だが…。

「そうなんだろうけどさ。短時間で直ぐに効果が出るのか?」

「いいえ? 効果が実感できるのはどんなに早くても12時間通して使い続けなければ無理な計算です」

「だよな。さすがにすぐ効果が出たー! ダメージ増加だー! なんてことありえないもんな…」

 出ると言われたら納得できるが、今回の研究は通常じゃないルートに入った感覚だ。似たようなことを前にも聞いて、別の手段を講じた。だから今も別の質問をしよう。

「じゃあもう一個だ。仮に効果がすぐに出るもの、闇魔法を使った後でその効果がわかりやすい形で乗ると仮定して、闇魔法を使った後で補助魔法でダメージが入ることってあるのか?」

「それないはずです。優月さんが言っているのは…【闇の霧魔法(ダークミスト)】が攻撃魔法になった、ということですか?」

 あの時のことを考えると…確かに明確にダメージが入った感覚はした。こう、ちくちくする痛み。

「確定じゃないんだけどな…。ただの【闇の霧魔法(ダークミスト)】で呼吸をしたらなぜか痛みが発生した。普通の【闇の霧魔法(ダークミスト)】ならありえないだろ」

「ふむ…その通りですね」

 口元に手を当てて考え始める。

 さすがに聞いたことのない現象だからか、答えを持っているわけでもないらしい。ちょっと考えている間に時間がかかりそうなので、休憩用のドリップコーヒーを入れる。俺とかえでだけなら砂糖もミルクもなしのブラック。

「ん…? ありがとうございます優月さん。…いただきます」

「うい。で、どう?」

「ん…ふぅ…。確定情報まではわかりませんでした…」

 ワオ。流石かえでさんやで。

「予測を立てられるだけでもすげぇよ。何がわかったん?」

「おそらく優月さんの左腕が関係しているかと」

「…………あぁ、なるほどね」

 そこまで言われれば理解できるわ。

「これが魔族の力ってことか?」

「それが最有力ではないでしょうか。それ以外だと条件が成立しそうにないですから。左腕の調子はいかがですか?」

「停学前までは腕中分まで侵食してたけど……うわっ」

 服を脱ぎながら左腕をみると、さらに広まったというかなんというか…完全に左肩と手首前まで闇が侵食していた。

「これって…魔法使ったら危ない感じ?」

「詳しくはわかりませんが…そうなのではないでしょうか? 少なくとも現代医学では解明されていない以上はなんとも。医者の先生が言っていたように、この腕は呪いでも病気でもないですから、祓うことも治すこともできませんね」

 過去入学前に受けた病院の医師から言われたのを思い出す。

 今回の結果と合わせるなら、闇魔法を使えばダメージが増える代わりに、魔族の印のような闇の侵食が進む。

 痛みはなくとも、これ以上進むのは…。なら理事長はなぜ闇魔法を使えと言っているんだ?

「…優月さん。申告しておきますがこれ以上は…」

「あー…まぁ必要なければ使わんようにするわ。流石に闇に堕ちたくない」

「わかっているのであればいいのですが…」

 少し拗ねるような表情。かえでがこの表情をするのはかなり珍しく、顔は少しでも本気で拗ねているのだ。とはいえ…調べないわけにもいかないしなぁ…。

「何か対策は必要だよなぁ…」

「それはもちろんです。これ以上魔に堕ちる人は見たくないですから…」

 自分の実の両親を思い出したんだろうか。かえでの目の前で魔に堕ちたらしく、駆け付けた部隊の手によって葬られる過去がかえでにはあった。今の海空家は親戚らしく、親権ごと引き取られて以後は実娘のように生活していた。かえでもかえででかなり壮絶な過去を持っているのだ。

 これはゲームのころには説明されなかったバックボーンで、瑛士を助けた数年後に本人から聞かされた。当時は言葉をだせなかったのを今でも鮮明に覚えている。

「……悪かったって」

「本気で思っているのなら、これからは気を付けてください。本当に堕ちたら地の果てまででも追いかけてさしあげますので」

「お前は本気でやりそうだよなぁ…」

「もちろん本気です。私はやる女ですから」

 拗ねた顔から少し怒っている顔に変わる。間違いなく本気だ。

「そうならないためにも、何かしておきたいんだが…何か案でもあるか?」

「魔法を使うなと進言しますが?」

「それ以外だって言ってんの。物理最強は瑛士たちに任せるとしても、学園の最強魔法使いなら魔法使わなきゃいかんだろ」

「もうこだわる必要はないのではないですか? 立花様も以前とは変わりましたから、強さなどに固執しなくても」

「それとこれとは話が別。プライドの問題」

 俺に引く気はない。それを感じ取ってくれたんだろうかえでは口を閉じた。

 ちっぽけな意地がすまんね。譲れないものでな。

「であれば魔法を極力使いながら…闇魔法を調べる方法…」

 またかえでが考え始める。今度はすぐに答えがでてきた。

「ほかの魔法は調べましたか? ほかの属性を使って、その効果がでてくるとか…」

「そういえば…まだ試してないな」

「まずはそこから調べるのはいかがでしょう? もし無意識的に闇魔法が乗っているのであれば早急に使い分けをできるようにしておかないと、いくら対策したところで無駄になってしまいますから」

「だな。まずはそれを調べるとして…」

「…そういえば優月さん。角ってどうしてますか?」

 角…? そういえば…。

「部屋に荷物を入れたときにまとめて引き出しの中に入れてるけど」

「であればちょっと見せてもらえませんか?」

「ん? ん-、いいけど……うわっ!?」

 勉強机の引き出しから金色の角を取り出そう、として異常事態が発生する。

 暗闇の中で放置されていた角は触るまでは光っていなかったのに、持とうと触れた途端に金色と闇色に二色が取り巻くように光り始めた。

「優月さん! い、いったい何が!」

「わからん! 最高にわからん! どうなってんだ!?」

「あぁっ! 光に! 光に!」

「名状しがたいソレは止めろ! てかそれどころじゃねぇ!」

 パニックですわ!? 金と闇に光って光って!? なんか魔法が走ったけどわからねぇしそれどころじゃねぇ!? なんだこれ!! あっ、待て来るなっ!! こっち来るな!!

「うわぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」

「優月さんっ!」

「く、来るな…こっちに来るなァ!!」

「ひ、光に、飲み込まれています! 優月さん!」

 あふれだした二色は手を起点にして渦巻くように体の中に入ってくる。輝く金の光は右半身に、深淵の闇は左腕から左肩に侵食してきた。そして体に走る溢れんばかりの激痛と『憤怒』の感情、そしてそれらを飲み込まんとする高揚感と『傲慢』の意志が身体を支配する。

 俺の身体が俺の身体じゃなくなっているような感覚で、知らないナニカに動かされている、そんな錯覚。いや錯覚なのかもわからない! あ、だめだこれ。

「わかってるからっ! うわっ、あぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」

「優月さー――――ん!」

 最後にかえでが飛びついてくるのは見えたが、黄金と漆黒から流れてくる意志の奔流に目の前が飲み込まれたところで、俺は意識を失った。


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