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エロゲ転生、はー、やってられんわこんな無理ゲー…

『目覚めなさい…魔王を討伐せし者よ』

 頭の中に声が響いてから意識を取り戻した俺だが、最初に目についたのは、薄暗い紫っぽい部屋のなかで少し高い場所にある異彩を放っている透明なカプセルと、そのカプセルに入れられた一人の黒い髪をした全裸の女性。その女性はこちらを見定めるかのように睥睨していた。

 そして一際目立つのは、俺と変わらない左腕と左の腹部にある、まるで吐血が降りかかったような広がり方をしている焼け跡。これで付くのは魔族の血をあびたことがある人間であって、目の前の女性はその生き残りであることを主張していた。

 迂闊にも、出してはいけない状況を口にしてしまった。

「な、なんでお前が…ここにいるんだ…? それも人間側で…」

『……まさか私を知っているのですか? この時代にいる人間風情が?』

 思わず口走ってしまったがもう遅い。頭の中に響くアルトボイスが、逃がさないと言っている。

『黙秘は肯定と取ります。どうしてあなたは私を知っているのですか?』

「……知っているものは知っている、それだけ…です」

『ふむ、それはおかしい。私のデータはとうの昔に消えたはずですが? それも数百年前に』

「……知識データとして知ってるんだから仕方ないです」

『興味深い。実に興味深い』

 口が裂けるかのように、三日月のように、その少女は嗤う。

 少なくとも、今の俺では…敵対しては勝てない。それに俺が気絶していることを都合に、逃げ出す前に何かしらの手段で退路を断っているはずだ。残忍で冷酷な(計算高い)女だからそうしているに違いない。

『興味深いついでに質問をしましょう。貴方は私の名前を知っていますか?』

 どう答える? 少しでも敵対すれば殺しに来る。得てして目の前の女(刹那的な快楽主義者)はそういう奴だからだ。この対話すらも遊びと思っているはず。

 ……どこまで言えるか。

「…名前は…知らないです。けど、俺はあなたの焼け跡のことは知っています」

 そう言って袖を捲って左腕の焼け跡の一部を見せる。

『……成程。同族の匂いがすると思いましたが、そういうことでしたか』

 ファーストコンタクトは成功したが、まだ気は抜けない。

『では次の質問、なぜ私のことを「人間側」でと言ったのか。答えてください』

 それを知っている理由は、10年近く前の魔族と戦った後遺症でぶっ倒れていた時、看病していたかえでが言っていたのを思い出した。

「知人からは、魔族の血に対する抵抗力が無ければすぐに死ぬと聞きました」

『それで?』

 それで? まだ続けるのか!? 考えろ、頭をフル回転させろ! 魔族の血に耐性があるものがその後どうなるか。

「……血を浴びてから十年近く経ちましたが今のところは影響がありません。なので一時的に耐えたとしても、その耐性が弱ければ死ぬか魔族に連なる何かなってしまうのではないか、と思います」

『ふむ、それは面白い解釈ですね』

 まだ、大丈夫か。まだ目の前の女はこちらに興味を示している。

『血に冒されてもなお耐える者がいるとは…。時に少年、貴方の名前は?』

「…凛堂優月、です」

『では優月。貴方は声を聴いたことはありますか?』

「……声ですか?」

 想像外の質問だが、思い当たることはないので首を横に振る。

『聞いたことはなさそうですね。ではこの質問は結構です』

 少女は落胆しているがそれも少しの間。

『これで最後の質問です。英雄と呼ばれる人についての心当たりは?』

「それであれば、一人います」

『ほう? その者は?』

「間宮瑛士。ルミナス学園1年1組で、一応俺のパーティメンバーのリーダーです」

『それは誠か!?』

 カッ! と目を見開いた女性だが、その目は驚愕と…歓喜だろうか?

『では優月よ、これを渡してきなさい』

 カプセルの中で目を閉じると発光して紙の巻物が生成され、目の前まで飛んできた。

「これは…?」

『これをララ・リム・ルミナス・レティス・ローゼンデルクに渡してください。決して彼女がみるまでは見てはいけません』

 カプセルの女性から伝えられたその名前を聞いて思い当たるのは一人しかいない。

『そうです。あなたがいるルミナス学園とやらの長に、それを渡してください』

 学園の長、昔は学園長だったが今は理事長となった、ララ・リム・ルミナス・レティス・ローゼンデルク理事長にお使いクエストが発生した。「中身を見たら死ね」と言われそうなので、おとなしく紙を手に取ってカバンに入れながら考えていると、一つの白い魔法陣が目の前に作られた。

『その陣に乗れば地上に戻れます。この件は疾かなければなりません』

「わかりました。では自分はこれで…」

『凛堂優月、この度は良い邂逅でした。もし困ったことがあれば一度だけ力を貸しましょう』

「…ありがとうございます、時が来れば」

 目礼しながら転移陣を起動して地上を目指す。最後に残されたメッセージを反芻しながら、理事長室に足を運ぶ。

 魔王軍幹部の一人(・・・・・・・・)に力を借りなければならない、その時が来ないことを願いながら。



 地上にある講堂の裏手側にでるとすでに陽は完全に落ちていて、あたり一面は暗闇に包まれていた。と言えば過ぎるが、流石に夜の学園は真っ暗で明かりもなにも付いていないので、そう思っても仕方ないと思う。

 それもそうだ。時間はすでに深夜の4時を過ぎているんだからな、これが。そう考えると気絶していたのは半日くらい。じつにふしぎでおかしなはなしだね、うん。

 今の時間に学園を侵入すると警報がなるのだが…抜け道は何個かあったりする。そのうちの一つが「工学科校舎からの侵入」だ。正攻法でもあるが、安全なのはこれなので問題は無い。都会ばりに日夜点灯しているので、外からの人間からしたらイルミネーションと呼ばれても仕方がないと思う。しかし今となっては好都合。

 ……というところで工学科が所有する開発専用区域――工房棟――あたりに来たところで常識を思い出した。

「そもそもこの時間に理事長って起きてるの?」

 当たり前だわ。午前4時って普通寝る時間だわさ。こんな時間まで明かりがついてる工房がおかしいんだわ。…帰るか。

 そうして一つ、俺は常識を思い出した。

「俺、正攻法で講堂のダンジョン入ってないやん…」

 何度目かの痛恨の極みである。

「やっべ…どうするか…。流石に今見つかったらわからんぞ…?」

 巻物は明日の朝届けるとして、今は見つからないように戻るしかない。…一応周りには誰もいない、いない、うん。けどさすがに工学科からは見えてるよな? ……逃げる? 安全に逃げるなら…学園の敷地で魔法は使ってええんかったか? いや使ってたか。ばれないように使ってしまえ。

 バレなきゃね、使ってええんよ、ホトトギス

 これでばれたらトホホギスですわ! ←斬首

 いやいや待て待て斬首じゃねぇわすでに誰かに見られてるんだとしたら今使うのはアウトだろ!? うーん…。これならSHR前までダンジョンに籠って身体を動かしてるほうが良いのかもしれない。気絶してたから眠気なんてないし、あんな緊張感があって身体が興奮してうまく休めそうにないから、それならいっそのことダンジョンに挑んでるほうがマシだな。

 ということでダンジョンまでとんぼ返りを決行。どうせバレてるなら堂々とダンジョンまで目立つところを歩いていけばいいや。

 ダイナミック☆エントリー!

 なんてバカなことをしている暇はないから、中層のボス部屋で魔法の開発でもして時間を潰す。

「まずは【身体強化(ブースト)】か。そのあとに魔法の攻撃強化と…どうせなら属性魔法の防御も手を出してみるか?」

 時間いっぱいまで魔法をいじくり回した結果、予定通りにブーストの強化版な【身体強化(ブースト)Ⅱ】と魔法攻撃を強化する【魔法攻撃強化(マジカルブースト)】、そして瑛士の得意な属性に合わせて【光属性強化(サンライトオーラ)】と【雷属性強化(ライトニングオーラ)】を作れた。昔に比べたら割と魔法を増やすのも楽しくなってきた気がする。もしくは深夜テンション。

 そのうち【スイーツw】の魔法でも作ってみたい。あとは【トラウムww】【ダイベインww】【イマサーラwww】みたいなやつとか。なんだかんだ掛かったら迷惑になりそうで害悪な呪文。間違いなくメ〇ブ様は尊敬している一人かもしれない。あの人、内容はさておき一話おきに必ず一つは魔法覚えるから超優秀なお方だと思う。なおそれ以外に関してはコメントを差し控えさせて以下略。

 …思ったけど【雷属性強化(ライトニングオーラ)】って属性付与だから、金属のものに触れたら電気が起きるのでは…? それなら【雷属性強化(ライトニングオーラ)】と分けて【静電気付与】に改名……いっそうのこと、メ○ブ様を見習って名付けるか? 【ドアパチ】とか。

「俺はこの魔法を【ドアパチ】…と呼ぶことにした」

 うむ、決まった。視聴者もスタンディングオションベン待ったなしだわ! エクスタシー感じちゃうね!

 GAHAHA.

 …………帰りたい。



 平日の朝10時頃。

 いったん寮に帰って準備を終えてから美鈴先生に連絡を入れると、条件付きでOKを出してくれた。

 内容に関しては理事長に言えるものではないので、まとめてなら話すことができると言ったところ、緊急性の高い物として扱ってくれるようになったのはありがたいことなのか。

「一応その日に連絡は頂いてましたが、日々の生活はどうですか~?」

「今のところは変わらずです…その節はご迷惑をおかけしました」

「いいえ~、いいんですよ? 生徒を正しく導くのが教師の役目ですからね~」

「…ほんと頭が下がります」

 こうやって過ちを許してくれる大人…ほんとマジ、こう…すみません。怒ってくれる先生も許してくれる先生も、ありがたいかぎりだ。

「えっと~、確認ですが、その『名無しのお届け物』はちゃんともってきてるんですよね? で、それは誰にも読まれずに学園長の『ララ・リム・ルミナス・レティス・ローゼンデルク』理事長に…で合ってますか?」

 学園長と理事長は別だが、先生曰くルミナス理事長は過去に学園長をやっていた時期もある、ということらしいので、あのお方が言っていた学園の長はルミナス理事長のことで間違いないそうだ。

「合ってます。巻物は…これです」

 そう言ってカバンのほうにしまっていた紙を取り出してみせる。

「…今見るのは」

「だめです。死にたくないです」

「……そう、ですよね。わかりました」

 今思い出すだけでもアレはNGです対峙しただけでも死んじゃいますいやホンマに死にとうないでござるとか適当ほざいてないと平常保てないです。あれ? 俺はいまいったい何を?

 そんな確認の質問や奇怪な目で歩く生徒や先生方に見られながら、理事長室に到着した。

「さて、準備はいいですか? 凛堂くん」

「大丈夫です、お願いします」

「わかりました。念のため私は部屋にいますが、いない者として扱ってください」

 これも事前に話が合った通りだ。謹慎中の生徒を許可なしに学園内に入れないためとか、理事長にしか見せられないものが1組に関わるものなのかの確認とか、いろんな意図はあるのでサシで合わせることはできないと教えてくれた。素直にお前は危険な奴だから監視するぞ、と言わないあたり、優しい先生だ。評価が爆上がり継続確定している。

「理事長、美鈴です。ご用の生徒をお連れしました」

『うむ。入るがいい』

 しゃがれたようなそれでいて身が引き締まるような声が扉の奥から、入室許可の声が聞こえてきたのでドアをノックしてから入る。少しだけ体が熱く感じるが、これは違和感だろうか?

「失礼します」

 ようやく…主要人物とのご対面だ。革製のソファーに深く座る目の前()の耳が横に短く伸び()た特徴的な若い女性()こそが目的の人物。

 見た目が若いだけで年齢はだいぶ行っているが口にするのはご法度だ。

「初めましてじゃな。お主が噂の問題児かえ?」

 おっと。開口一発で随分なご挨拶が飛んできたぞ? 否定できないからアレだけどな。

「えっと…はい、そうです。初めまして、凛堂優月です。この度はお時間を頂きありがとうございます。ララ・リム・ルミナス・レティス・ローゼンデルク理事長。本日は……」

「余計な挨拶なぞいらん。それで、わしに何か渡すものがあるらしいな?」

 頬杖を付きながら目で早くモノをだせと言っている理事長。真意は見えないけど早めに渡したかったのはありがたいので、素直に巻物を取り出してルミナス理事長に手渡すと、理事長は警戒せずになかみを開いて読んだ。

「ふむ。ふむ? ……うむ…なるほどな……む?」

 一文を読みながらひとりでに声を上げている。そしてどこかの文章か最後まで読んだのか、疑問符を浮かべていた。

「おい問題児。ここに書いてあるのは本当か?」

 訝しげに名前を呼んできたけど、あのお方に言われたので中身はしらない。知らないことは答えられないんだけど?

「すみません、中身は読むなって言われたので見てないです。どんな事が書かれていたのですか?」

「なんじゃ面倒な…ほれ、読むが良い」

 そう言って手紙を突っ返してきたので、ありがたく読ませていただくことに。

 はてさて、どんなことが書かれていることやら。


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