エロゲ転生、これが魔法テストってやつですか。
大変長らくお待たせいたしました。
更新再開です。
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魔法の実技テストは全員で、持ち回りは学園側で決めた三人一組で行われるという点。
トリオの班分けは単純に入試の魔法実技成績順で、優月が成績トップに入り、少し離れて愛莉栖と桜がそれぞれ次席と三席となっている。続くなら晴臣と瑛士とかえでと敦の4人がほぼ横並びだが、説明と論文、ケアレスミスなどで点数を落としていた。しかしそれを踏まえてもトップの優月には届かない。
さて、そんな空気最悪のなかで試験は開始した。
採点方法は一人が属性を図った後に「魔力総量、供給維持、演算」を行い、そのあとに本実技となる「魔法精密、威力、耐性」を順番に行っていく。のだが、誰も優月たちの班に話しかけることはなかった。それもそのはず、元凶の一人が話しかけることを拒ませているのだ。そんな空気最悪の班に当てられた被害者である桜が最初にテストを受けることにしたのが功を制したのか、少しだけ場の空気を和らげることに成功した。が、それでも口をはさむことはなかった。測定中の二人……と言うよりも一方的に話をしようとせず、話しかけようものなら魔法を当てるとも言わんばかりのオーラを放っていたので、和らいだのは本当に少しだけだが。
和気藹々としたテストが息をのむような地獄の中、ピリピリしている少女―――愛莉栖を見て嘆息した青少年こと優月は…これ以上言葉を紡ぐのを止めた。
そしてひとり思う……。
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「……本当にもったいないよ、お嬢」
「えっと…凛堂さん? どうかしました?」
あれ。声に出ちゃってたか?
テストに向けて精神統一をしているお嬢を横目に、俺たちは計測の準備をしているのだが…。そりゃ距離が近けりゃ声も聞こえるか。
「あーね、ちょっと思うところがあってね…」
「その…聞いて良い事なのかわかりませんが、いいですか?」
「なんなりとどうぞ。あ、その的ちょっと斜めってるよ」
「あら。ありがとうございます。凛堂さんはどうして愛莉栖さんに…、その…」
相変わらずお優しい聖女様。言葉を選ぼうとして迷ってございます。
「気を使わんでいいよ。お嬢になんで喧嘩を売ったのかってことでしょ?」
「そ、そうですね。講堂のことも含めて、凛堂さんは誠意のある方だというのは私も理解しているのですが、であればどうして愛莉栖さんには高圧とも取れる態度なのかと…」
まぁそうよなぁ。お嬢と桜の共通点は女子であるという点以外にも、後衛の魔法主体でどちらも落ち着いた性格もしていて、物理的にも寮の部屋割も教室の席も隣同士という、割とかぶっているのだ。
しばらく後で発生するであろう、二人の絆イベントではお互いを良く思いつつも互いにコンプレックスを抱いていた、というストーリーがあるのだが、現時点から桜はお嬢にシンパシーを感じるところもあるようだ。
とはいえそれを抜きにしても気になるんだろうね。
「単純よ。桜も見たよな? お嬢の魔法」
「講堂の件…でしょうか?」
「だな。ここで思い出してほしいんだが、瑛士と俺が来るまでと来た後だとどっちが綺麗だった?」
「…え、綺麗、ですか?」
目を丸くしている桜だが、何も間違ってない。
「そう、お嬢の魔法はどっちが綺麗だったか、って話よ」
「それは…後者ですね…」
「だろ。だから俺は、なるべくあの時のことを再現してあげてるのよ」
俺の言葉にいまいちピンと来ていない桜だが、これに関して桜が気付かないのは仕方ないんだよな。もともと自尊心の塊のような人間と奉仕の塊のような人間が短期間で互いを十全に理解できるわけがないのよ。
「お嬢――というかほとんどの貴族は『ノブレス・オブリージュ』を誇っているんよ。つまり、生まれながらにして常に上に立つ人間ってこと」
ある意味で晴臣も似たようなものを持っている。アイツなりの解釈だけども。
「そして現段階のお嬢はそれをはき違えてるのね。それも、上に立つことが貴族の義務であること、のように。お嬢が何に焦ってんのか知らんけども」
いやまぁゲーム時代の設定が間違っていなければ、今となってはお嬢が立花家唯一の息女だから必然的に立花を継ぐことがほぼ確定しているのだから、そりゃ焦るんだろうけども。
「少しでも最高の結果をここで出せれば気付けるかなって。……視野が狭くなった今となっては逆効果になっちまったなぁとか思ったり」
「間違いなく逆効果じゃないでしょうか?」
「………。…だよなぁ……」
ワイトもそう思います。
第三者の桜が言うんだからそうなんだろうな。うーん。失敗失敗☆
そう言いながらすべての準備が終わったので、いったん会話が切り上げられた。
「お待たせしました立花さん。計測は私が、記録は凛堂さんが行います。準備が良かったら好きなタイミングで始めてください」
「えぇ、ありがとう桜さん……(キッ!)」
「………?」
桜からの報告を受けたお嬢がこちらを睨んでから、腰ぐらいまでの位置にある水晶へ手をかざした。
ワイが何をしたっていうんや。心当たりしかないわ!
(だからそういうところや、お嬢)
力みすぎて空回りしそうだや…。暴発させないでよ。
「それでは測定を始めます。魔法属性の測定、開始」
魔力測定は一瞬で終わる。
お嬢が水晶に手を置くと、その中で赤と銀の光が生まれた。
属性を持つ人間はこのようにして自分が持つ属性を知ることができる。生まれたときに属性が決まっているようだが、現代日本ではその時代は古いとも言われている。そも、通常属性に限らず上位属性や特殊属性を先天的にもっているものもいれば、後天的に取得した人間もいる。前者は瑛士や千花に俺とかえでだが、後者は誰だって可能性があるのだ。そして持たない人間は白く光るようだが、これは「無属性」を持っていることになり、誰もが持っている属性。いいよね、無属性。俺は好きな属性の上のほうにくるよ。
「では続いて…魔力測定、開始!」
「――っ!」
翳していた手に力を籠めると同時、手元にあった水晶が鮮やかに赤く均一に染まった。赤色水晶とも呼んでも差し支えない赤は周囲の人間の注目を集める。
属性魔法は手をかざして微量の魔力を送ること。そして魔力総量の計測は単純に、自分の得意な属性を水晶に送り続けることが内容だ。ただこれはテストなので何時間も続けると時間が足りないため、1分間にどれだけ送り込めるかを測定した後に密度を水晶の中で計測し、ランクがつけられる。
同時に魔力供給維持と魔力演算の項目もテストされるが、供給維持は「同じ量を規則的かつ継続的に送り続けられるか」であり、演算は「属性を自分の中で制御できるか」という点。供給維持は割とそのままだが、演算の説明が最初に聞いたときはふわっとしていて供給維持となにが違うんだと思った。結構違うらしい。
魔力演算とはイコールで魔力制御とも呼ぶ。そりゃ違うわな。自分が持つ魔法の属性をどれだけ使用できるか、という点に尽きる。
そしてランクの順序は最上位が「SSS」で最低が「G」ランクまである。あとはSSSランクとGランク以外では「+」と「無印」と「-」の3段階に分けて細分化しているので、最大26段階のランク分けがされる。これ初めて知ったときはどこの個別授業だろうなとか思ったのはここだけの話。そして学園生のうちから「評価A」を取れるなら将来は有望だともいわれるため、学園生の魔法使いはこぞってAをひとつの目標にしたりしているらしい。
あとは人によってはランク別の格差を主張する輩もいたりするが、個人的には同じAランクなのだからどうでもいいでしょ、と思ったり。
「計測終了!」
そんな余計なことを考えてたら1分が過ぎていたようで、水晶上部に移されたホログラムをチェックすると、そこには堂々の結果が出されていたので、手元のテスト項目にメモをしておく。
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立花愛莉栖
魔法属性:火
魔力総量:A+
魔力維持:E
魔力演算:S
******************
ふむ。悪くない成績だねぇ。Aを超えてくる評価を取るとはすんばらしいねぇ。流石お嬢やで。維持が足りないのはお嬢が完全に攻撃担当…というか固定砲台役だからだろうね。
供給が高くなければならないのは主に「回復」を担当する魔法使いだ。回復の効果がまちまちだとぶちキレる輩がいるらしいから。ほんまどういう理由だよっては思ったけど、確かに死に際とかのシチュエーションで考えたら、回復量が一定じゃないのはある種のギャンブルだよね。この説明聞いてすんごい納得したわ。
桜も制御がBなのを除けば魔力総量も供給もAを取ってるし、これはなかなかに危ないねぇ。
「はぁ、ふぅ……。いかがですか凛堂様? ん、ふぅ…ふぅ…負けを認めるなら、今なら許して差し上げましてよ?」
息継ぎをしながらお嬢が負けを認めるように促してくるけども?
この負けず嫌い。俺はその煽り方は嫌いじゃないけども?
「ほーん? そんなに俺に負けるのが怖い?」
煽る煽る。
さらにあおるでござる。
たぶんニチャァってしてると思う。俺。そんな俺をみたかえでが無表情だ。無貌と言っては過言だが。
「ふん、あとで泣きを見ても知りませんわよ」
「じゃあ先に謝るね、すまんな」
「あら、それは負けを認めるということでよろしいのかしら?」
「あはは、それはないよ。負けるのはお嬢って決まってるからな」
おぉおぉ…。お嬢が睨んできて怖い。お嬢じゃなくて女王だ。鞭を持たせたら完璧かもしれない。後は忍者をぶたせたらもっと良いかもしれない。忍者はMじゃないけど。死に物狂いで回避しまくると思うけども。
「だからハンカチとティッシュはちゃんと常備しといてや、お嬢」
「…お嬢はやめてもらってもいいかしら?」
あれま? まぁ俗称というか、お嬢っていうのはゲーム外のファンネームみたいなもんだしな。
「また言わせてもらうけどさお嬢…」
「だからお嬢とは……」
「もっと魔法を楽しめよ」
話を切って俺も魔法発動の準備に入る。
と言っても、どちらかと言えばテストの準備が終わるのを待っている、というのが正しいんだけどね。
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少女の内心は怒りと自尊心がマグマのように煮えたぎっていた。
原因は言わずとも、視線の先で不適に笑っている、いや、他人を見下して悦に入りながらにやけている青少年。「他人を見下している」というのは少女の主観でもあるが、第三者からすればそう取られても仕方のない事。午前中に叩きつけられた挑戦状、という名の決闘。それを侮辱にも似たような形で勝負を受け付けたのだから、穏やかになることはない。
余計な一言を放り投げて勝負の空気を作り出した間宮千花のことは、少女のすでに頭から消えていたのは青少年にとって僥倖かどうかは不明だが。
このテストでどちらが上かをはっきりさせる。教室で見た魔法を見る限りではそこそこ扱えるのだろうが、彼女の中では危険分子にして敵対と確定している。この1組の輪を乱しているうつけ者はさっさと退学にするべきだ、と見当違いなことも考え始めていた。
そんな低俗な人間のテストを見るという事実を思うと、嫌気がさしてくる。
記録は持ち回りだから自分が測定用のコンソールを操作しなくてはならない。が、ここで申すのは自分も下に落ちることを意味する。ので、ぐっと我慢した。
「では測定を始めます。魔法属性の測定、開始」
「うい」
彼が水晶に手を触れたことを確認し、コンソールからスタートを計測。
「あぁお嬢すまんね。謝るの言葉が足りなかったわ。俺実は火属性って得意じゃないんだけど、お嬢レベルならもうだせるのよ」
「…………は?」
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おぉ~。お嬢の本気の理解できなさそうな顔をみれるとは思わなかった。
副音声で「あんたバカ?」と聞こえそう。妄想たくましければ聞こえたかもしれないが、どうやら俺にはまだまだレベルが足りなかったようだ。
「じゃあまずは……」
火を連想する。各属性の簡単な魔法はボール系統だから火属性はイメージは火の玉。光はお嬢と同じ鮮やかな赤だが、あっちは白色が強くこっちは黒色が強い。いうなればお嬢が「真紅」ならこっちは「深紅」というところか。想像は崩さないままに全員を見る。全員がこっちを見ているようだが、インパクトはお嬢の時がうえなのか、みんなの視線は変わらない。特に瑛士と千花は物足りなさそうな顔をしてるが、そう慌てなさるな。
「そんなものですか。……では続いて魔力測定を―――」
「まぁまぁ。誰も火属性しか使わないってはいってないだろ?」
「……二属性アピールは良いですから、早くしてください」
「カリカリしなすっては肌に悪うござるってばよザウルス」
「何故に語尾キメラでござるか?」
ようやく突っ込みが入った。
「なんとなくその気分だからだよ。ところで忍。魔法の属性ってあとは何があるっけ? 1個答えてみ」
「拙者でござるか? では風で」
「まあ簡単だよな。風属性は今のところ忍が一番適正ありそうだもんな……っと、ほい」
自分が無邪気に草原を走る風をイメージ。そこから自分が風の球であると想像するとこの通りに。
「おぉー。これはなんとも爽やかな深緑でござるか」
「風属性は単純に風を想像するが、あくまで「速い」というのと「見えない」というところが風属性のアドバンテージだな。それを活かすとライトニングステップの上位版みたいなこともできるらしい」
「なるほどでござるな」
「まぁアレの制御はかなりムズイけど、忍者ならできるからあきらめんなよ」
「わかったでござる」
「じゃあ次は…せせり。ほかの属性は?」
「ボク? えっとじゃあ…土属性」
「おう。土属性って言っても、一番は他の性質変化を受けないところが一番便利だよな」
せせりの想像通りな回答から、土から生える岩を想像し、土の形状を変化させて一部を模る。
「…これって…ゴーレム?」
「まぁゴーレム創造は勉強中だけどな。前衛で敵を躱しながら攻撃するなら、デコイ一つ置くだけでも被弾を減らせるから覚えて損はないぞ」
「へぇ? ……って思ったけど、言うは易く行うは難しじゃないの?」
「そこは自分の努力次第だろ?」
「あはは、違いないね」
からからと笑うせせり。あまり敵愾心を感じないからやりやすいのは大変ありがたい。
「火に風に土ときたら、次はなんだ晴臣?」
「バカにしているのか?」
少しは顔色を変えてくれたら嬉しいなと思ったけどやっぱり変えてくれない。悔しい! でも魔力は感じる、ビクビク。
「んなこったぁない。さんざんお前にハメられたからいつかはやりかえしてやるとか思っていても口には出さない。それが友情」
「その友情はすでに崩壊していると思うがな。水属性だ」
海の上を飛んでいるイルカと言えばわかりやすい。もしくは水の上を漂う精霊でもいい。
「普段からクールなお前にはぴったりだな。おめでとう、正解です」
「やっぱり馬鹿にしているな。僕には何もないのか?」
「言ってほしいんじゃねーか。お前は言わずとも水の上位魔法までそのうちたどり着けるだろ。この中ならせせりと桜も確か適性があったはずだから、そっち向けだよ」
「ならその時になったら改めて教えてもらおうか。全能の魔法使いさん(笑)」
「おまっ!? それを言ったら喧嘩だろうが! ゴラかえでゴラ! なにばらしてんだゴラ!」
「テストに集中してください」
「喧嘩だオラ! やんのかごら! すっぞゴラ!」
あいも変わらず主人に厳しく悪口が異常なまでに軽い使用人だこと。サイテー! こら、笑うんじゃない! 黒歴史を暴露しやがって! ユルサン!
「ほれ、早く水属性のことを教えるんだ。全能の(笑)」
「テメェあとで覚えとけよ!?」
性格が悪すぎる! そして相性も悪すぎる! いつか泣かすメモに刻むとしよう。
「はぁー…。じゃあ気を取り直して、桜とせせりについては、主に防御の面、特にウォール系を使うのが多いんじゃないかと予想してるんだが…」
っと、ちょっとイメージを変えて…。
「水属性を強化するなら、生活魔法の水道も面白い使い方ができるはずだから、そっちからもアプローチしてみるといい」
「生活魔法もですか?」
「……そういえばあの時、魔法を結構使ってたけど…水道と光源も使ってた?」
話し合いが終わったところでの参戦だったから見逃してるかと思ったけど、よく覚えてるもんだ。
「よく見てるなせせり。万能の魔法使いってのは固定砲台だけじゃなくて汎用魔法も使うんだ。お嬢みたいな強い魔法はわかりやすくて良いけども、細かい魔法はダメージじゃなくて補助的な意味でとらえるとわかりやすいか? 例えば魔法で相手の弱点を増やす、次の攻撃を通りやすくするとかな。凡人の魔法使いでもここまでできるって思わせたら勝ちだ」
「ふふ、誰との勝負? でもそうだね、戦いながらは難しくても仲間を活かすも殺すも戦略ってことなら、やってみる価値はあるよね」
「うまい事言ったつもり? いや結構上手い事言ったなって思うけど」
「ほめてくれてありがとう」
「どういたしまして」
桜も理解しながら自分の中で考えているみたいだ。これなら桜も自衛手段が増えるから楽になる…と思いたい。後衛魔法使いの紙装甲たるや、目も当てられん…。敦を除く。いやなんで後衛なのにHPクッソ高いんだか。流石はゾンビ盾。自称後衛と言いながら、前衛盾持ち大防御適正型ヒーラー。前衛超優秀なドラゴンとの引換券になってる青のさすらいとは大違いだぜ。あっちはリメイクされてから普通に強キャラだけども。
「じゃあ説明が漏れた火属性は…いらなそうだな」
「えぇ。わたくしの魔法はわたくしが一番知っておりますから。それよりも早く次の試験に移ってくださる?」
「え、まだ属性を調べ終わってないでしょ?」
「わたくし、もう待ちくたびれているのですが?」
「え、先生、まだ時間はありますよね?
「ふぇっ?!」
ふぇ? じゃないんだが? あなた何歳ですか? 可愛いのでちょっと僕と結婚して同じ苗字になってくださいよ。あ、変な視線が千花から飛んできた。だめですか。はい。
「今のところ予定時間よりは早く終わってますし、あぴ…ではなく、講義の時間でも問題は無いですよね? これはクラス内の講義とすればほかの先生方も何も言わないと思いますけど! どうですか!」
「そ、そうですね…。私も凛堂くんの説明は興味深いのでぇ、もうちょっとだけ聞いてみたいですねぇ」
「だってよ、お嬢」
「そのどや顔やめてくださる?」
屁理屈が曲がり通ったので渾身のドヤ顔を決めたら止められた。むなしい。
「ンなカッカしてねぇでちったぁ落ち着けや立花。無駄なことして自分より点数悪きゃァ笑えばいいだろうが」
「……もっともですわね、わかりましたわ」
さんきゅーやんきー。って言ったら怒られるから黙っておこう。
「先生からも許可がでたので講座会といきまっしょ。光属性については…このクラスの半分が適正あるんだよな」
さすが1組。特別進学科に入るだけのことはある。さすいち。
「光魔法は…そうだな、魔族に対する特攻にもなって、そのうえ攻防一体の万能魔法というのが正しい認識だと思う。これは間違いじゃないが…じゃあ生活魔法との違いってなんだろうな、桜」
「え? 生活魔法は誰もが使える魔法、のはずではないでしょうか?」
顔を背けながら悩み顔で答える桜だが、少し考えが固いままだ。
「間違ってないけど、順番が逆だよな。文献だと光の弱魔法を限りなく弱めたものが光源って教わるだろ? じゃあその付加価値はどうなんだ? ってこと」
すでに思い当っていそうなかえで以外の全員が考えだす……いや、胡桃が寝落ちしかけてる。説明会は次の無属性で締めたほうがいいな。
「有限と言っても押したらアレだから答えちゃうけど、攻撃力がある、防御力があると言ったものが生活魔法からは排除されてるんだよ。直接触ったらやけどする篝火を除いてな」
篝火を触るのはただの馬鹿なのでアレだが。
「そもそも光単体じゃ攻撃を与えることも防御できることもできないから、光を魔力で固めてるだけの話っていう通説は正直古いんじゃよ。だから一つの効果に「付加価値」を付けるほうがいいよねって話」
「…そもそもどのようにして…?」
「桜ならわかると思うけど、俺たち普通のひとじゃ【ヒールオール】とか【キュアライズ】みたいな特殊な回復魔法なんて覚えることできなんだろ?」
「そうですね。そちらは聖王協会のなかでも位が高い方のみが覚えられるものですから」
「敦も【ヒール】と【キュア】を同時に使うことってなかったべ?」
「む? 確かにそうだが…」
「同時に使えたら…手間が省けるとは思わない?」
「「「すごく思う!」」」
ふたりだけじゃなくて先生も同意している。そんなに切実な問題だったか。
「だったら両方使えばいいじゃん」
「それができたら苦労はせん……」
「聖王協会も同じ意見ですね……」
「もしかして……凛堂くんは……」
はい先生。あるんですよね、これが。
「まぁ答えを言うと勉強にならんからヒントだけ」
「お、お願いします! 先生にできることならなんでもし――」
「え、今なんでもって言――」
「言ってませんよ」
言葉をかぶせてくるんじゃぁないよ。
「あなたに言われたくはありませんが? 早く説明を続けてください」
心を読んでくるんじゃないよ……ちくしょうめ…。
「まぁ【ヒール】と【キュア】とか、光の魔法を隅々まで分解してみれば、3人…いや晴臣と瑛士もできるはずだから、是非とも挑戦してくれると」
三人がうなずく横で当てられたことを不思議に思った晴臣が口にする。ようやく魔法強化の時間がきた瑛士も反応した。
「僕もか?」
「え? 兄ちゃんいいの?」
「あぁいいともさ。学園生の一員なんだから、お前もともに勉強に励もうじゃないか!」
そのかわりぼくと契約して、()魔法使い()になってよ!
「兄ちゃんのその言い方をしてる時ってだいたいなにか企んでるときな気が…」
「そんなことないさ!」
瑛士に怪しまれるのはNG
さっさと話題を変えて退散するべし。
「あとは無属性だな。無属性は主に魔法を使わない前衛の和樹と胡桃だが……」
「わくわく! わくわく!」
「……」
お約束は何も意識しないで魔力を籠めること。この「何も意識しない」というのが属性魔法使いにとっては難しいことなんだけども、何も属性を持たない、魔法を使わない人にとっては逆だという。不思議だからちょっと研究してみたい気持ち。
魔法を使わないではなく現時点では使えない二人は、学園に魔法を学びに来ているという。ヤンキーが学園に入学しているのもこの魔法を使える、というところに目を付けていた。詳しくは絆イベントで。
そしてなんとこの二人は入学試験をフィジカルだけで突破している。これを活かさないのは本当にもったいない。ということで切り札を一つ…。
「無属性の利点は、魔法が全てに浸透する、っていう点だ」
「「……?」」
ありゃ? 一瞬で思考が止まりました! みたいな顔をしてるぞ。どうやって説明したものか。
「例えば無属性のサイキックは簡単だと思うが…和樹はサイキックの内容を覚えてるか?」
「ァ? んだ、アレだ。アレ…こう…。ものをなんかやって動かすんだろ?」
あいまい~~~!!!
「まぁ間違ってないな。それも一つだが、ほかの点はあるか胡桃?」
「ぴぇ!? えとえとえとえと…あっ、あれだ! ものがかってに動く!」
同じこと~~~!!!!!!
危うく魔力を閉じるところだったけど、なんとか笑いを耐えきった。
「まぁ、それもそうだな? じゃあ…ふむ、せせり、ほかには?」
「サイキックを例にするの? それなら物質全体に魔力が宿ること、だよね?」
「そう。無機質なものなら物質そのものを覆ってしまえば動かすことなく自由に操れる。じゃあ瑛士に質問だ」
「あい!」
準備万端の瑛士から返事が飛んできた。
「無機物なら魔力全体を覆えばいい、という話だが、有機物に作用するならどうする?」
「えっと、ひとつは相手を自分の魔力制御対象にする、もうひとつは体内に魔力を浸透させること」
「正解だな。だが前者については相手の魔力よりも多くの総量が必要だし、対象の動きを予測して必要な魔力を演算、そして自分と相手の魔力を制御コントロールしなきゃならない。聞くだけで頭が痛くなってくるな?」
魔法苦手組の頭がそろそろショートしそうになっている。ここからはわかりやすい説明にしよう
「体内に魔力を浸透させる、これはわかりやすいな。自分の魔力を自分の体の中で動かす、というだけ。二人はなんとなく想像できるか?」
「あ、う…ん」
「…おう…」
なんとも歯切れがよろしくない。でも今はなんとなくで十分。感覚派の二人はなんとなく理解してくれればあとは身体がなんとかするだろ。
「その体のなかで動いてる魔力を、意識して各パーツに集中すると? もしくは全身に循環…血が全身に流れるように巡らせると?」
「思いのままに?」
「動かせる…ってか?」
頭をひねりながら答えるが、ちょっとだけ惜しい。
「それはニアピン賞だな。かえで」
「思いのままではなく可動域を増やしながら体内の各器官や筋肉の強弱を調節できる、ということです」
「正解。まぁ簡単に言えば、めっちゃ早く走れたり飛べたり力持ちになれたりするし、応用すれば血の巡りや病気なんかも意図して遅らせることができるな」
「!!!!」
「「「「!?!?」」」」
「まぁ応用のほうは主に一部の病院か軍医しか使ってないはずだから、公にはしてないはずだけどな」
この説明を聞いた胡桃はやっと納得がいった! みたいな顔をしているが、和樹を含むほかのメンバーはそれぞれが驚愕で止まっている。
そりゃそうだろうな。俺も初めて知ったときは転生前にも欲しかったと思った。いまだになんでこっちの世界に飛んできたのか知らないけど…。
「とはいえだ。全部の魔法を俺も使ってみて思ったけど、なんだかんだで生活魔法と無属性魔法がトップレベルに好きなんだよな。ほどほどに使いやすいし便利だものね」
極めたら強そうだよね。だいぶ前に…体感で10年以上前か? 弱い能力とかスキルでも使い方ひとつで成り上がれる展開みたいなの、あれいいよね。その手があったか! っていう発想の転換とわくわくさん。
まぁ生活魔法じゃどう考えても無理だったけども。
「あと闇魔法はどう立ち上がってもかえでに勝てないからやりません。それとやってない時と召喚と精霊については扱える人がいないからまた今度ってことで……ほい、ほい。よっと」
認めたくはないが可愛い奴はこっちに向けて無表情ダブルピースをキメてやがる。なぜアヘ顔をしないのか。憤慨。
そんなことはどうでもいいから、基本属性をそれぞれ色変え品変えで光らせて全部の属性を水晶に乗せることができた。
「ほれお嬢お待たせ。テストを始めようか」
「本当にお待ちしましたわ。あと凛堂様はお忘れかと思いますが、扱える属性が多ければ多いほど制御が難しくなりますので」
つまるところ、扱える魔法が多ければ多いほど制御は難しくなっていく。難易度で言うなら1種類の時を1とすれば、2種類扱うなら2倍、3種類で4倍、4種類で8倍、5種類で16倍、みたいな感じだ。あくまで体感だからほかの方法があればいいと思う。たかしが動く点Pに追いつくためにはどれくらいの速度で走らなければならないか、とかを求めるよりかはずっと楽だが。
とは言っても……。
「ご忠告どうも、お嬢。でもこんなのは魔法を使うなら序の口も良いところだからな?」
あの日からずっと魔法漬けの生活なんだから、呼吸と同じよ。
魔の呼吸、一の型、…何も思い浮かばんわ。
「……ご忠告しましたわ。では魔力測定を開始します」
「うい」
ということでまた魔法について駄弁りながら1分を図って魔法テストの前半が終わった。
これが全員の無駄にならなければ良いんだけどな。
******************
凛堂優月
魔法属性:火・水・土・風・時・闇・光・召喚・精霊・無
魔力総量:SSS
魔力維持:S
魔力演算:SS+
******************
同時投稿(11,000文字)
とりあえず次の話数でこの章が終わりそうです。




