エロゲ転生、はよ! 先生はよ!
「みなさぁん? お、お疲れさまでしたぁ~!」
階段を上がった先から降りてくるのは、この状況を作り出した元凶。
「これでオリエンテーションは終了でぇす!」
わ~。ぱちぱちぱち~。
一人で何役もこなせてない無駄な盛り上がりを見せている先生。
そして盛り上がらない俺ら。原作では胡散臭いやつをみるような眼を向けて「うっ」ってなる。
「うっ」
目の前で胸を抑える先生。うーん、胸が押しつぶされてて100点。
「お兄ちゃん? どこみてるの?」
「お兄ちゃんは先生をみてないんだよ?」
「ふ~ん?」
そうだよ。お兄ちゃんは千花だけのお兄ちゃんだから、そんな制服のポッケを引っ張らないでね。制服が伸びちゃうから。でも脇腹を掴まないあたり、控えめな嫉妬がすごく可愛い(洗脳済み)。
やっぱりキミはこれ以上成長しちゃだめなんだよ!
「えぇっと、これを皆さんに受けてもらったのはぁ、ちゃんと理由があるんですぅ」
みんなの目は「胡散臭い人が何か言ってる」って目線から何も変わってない。かわいそうな担任。いつまで経っても自己紹介してもらえない不遇枠。姫トラ開発室のみなさん、パッチおなしゃす!
「お気づきだと思いますが、皆さんの制服はほかの方と違うんですぅ」
それよりも自己紹介や。ほら、はよ自己紹介。
伸縮性のあるスラックスとか内ポケットがたくさんついた紺色のブレザーとか、そんな説明はいらんのよ。皆さんの家庭事情やご両親に相談済みだとか、ええねん。
はよ! 自己紹介!
「っていうことなんですぅ…。なので、皆さんにはここで選択をしていただきます」
大事なことがされずに、このゲームの第一分岐点にきちゃー。
あれ…ゲームの時ってちゃんと自己紹介、してたよな……?
あれ……、なんか、ズレてきてる…?
どこかで調整…できるのか? いやそれどころじゃない。
「皆さんはどちらかを選んでください」
今までの雰囲気を消して、まじめなトーンになった先生に俺を除いた全員の目が変わる。
「一つ目は、別の科へ転入です。今後特進科で学ぶ内容はないので、皆さんの安全な学園生活はほとんど保障されます」
ほとんど、なんだよな。
これ年度末に起こることを先生はわかっているからこんなぼかした言い方してるんよな。最後この先生がラスボスに繋がってるんか? って邪推してたけど、そんなことなかったしな。ちゃんと秘密がある普通にエロい先生…じゃなくてだめ人間製造機だったわ。
「これを享受するのであれば私も止めることはしません。安全な学園生活というものは皆さんが本来受けるものですので。もちろん本来転入予定だったクラスへ異動頂くだけですから、ご安心ください」
といっても晴臣とお嬢が進学科、ふたり以外は普通科になる予定。これは主人公の選択で「普通科に戻る」を選ぶと説明がされ、季節が一気に3月に飛んで世界が滅ぶ、絶滅ENDとなる。当たり前だけどね。
このゲーム、そこらへんにBAD ENDが散らばってるんよな。それこそ理不尽みたいな選択肢もあるし。
いや、ゲームコンセプト拒否されたら、そら滅んでもしかたあらへんわ。去ね。
「ただ、安寧を享受せず、日常を守りたいと思う人は、この場に…特進科に残ってください」
先生の真摯なお願いに、全員の目が変わる。
「もちろん危ないですし、最悪の場合は命を落としてしまうかもしれません。落とさない保証もありませんし、『選択』によっては絶望が待っていることも少なくありません。事実、十数年前の特進科は一人を除いて全員が命を落とす結果となってます」
「具体的には、皆さんには各地にある未知のダンジョンを制覇していただくことが目標になります。卒業見込みは勉学だけではなく、この学園にあるダンジョンを制覇してもらいます」
この担任が言っているダンジョンを制覇って言うのは、『アインストダンジョン』以外の話で、この学園にはもう一つ『ルミナスダンジョン』がある。この世界では知られているルミナスの上層を攻略することが卒業の実習となる。
ゲーム上では7月くらいに異変が起きて、上層から中層に降りられるようになり、11月以降で中層のボスが現れるんだよね。で、そこの中ボスを倒せば最下層にある『降魔のダンジョン』に挑めるのだ。まぁその奥に…うん、ね…。ラスボスがそこの最奥に封じられてるんだけどさ。
最下層については多分今でも入れるんじゃね?
個人的に『ダイタロスダンジョン』はいつかソロで攻略してやりたい。
「特別進学科は、世界中のダンジョンを制覇し、崩壊させるためにあります。そのために作られたといっても過言ではありません」
せやなぁ…。大人がダンジョンに挑むこともあるけど、これが公務員の仕事でもなければ給料がでるわけでもない、趣味の範疇でしかないのだ。
いやまぁ? トレジャーハントの部類だから、一攫千金を夢見て挑戦する一般人もいるのよ。こんな命知らずがいるなんて、不思議だなぁ?(すっとぼけ)
「皆さんの力をお貸し頂けるなら、特進科に残ってください」
頭とおっぺぇを下げる先生。
で、ゲームだとここで選択肢は出てくるんだけど…。
……瑛士、行け。
「はい、ぼくは特進科へ残ります」
俺と千花、かえで以外の全員が瑛士を見た。
それは、今までみていた可愛い顔つきではなく、覚悟を決めた一人の男の顔だ。
「兄ちゃん……優月さんに助けて頂いたあの日から…ぼくは騎士になって、日常を…大切な家族を守れるようになりたいって思いました」
……瑛士…。
「命の危険だろうと顧みず、大切な人はぼくらを守ってくれました。そんな人にぼくはなりたい…」
……お前…。
「だからぼくは、みんなを守れるだけの力がほしいです」
……ゲームの時のセリフと一緒やん。
そりゃ当たり前なんだろうけどさ。あ、先生の目は潤んでいる。よかったねぇ。
「間宮くん…」
「はいはーい! ちかも! ちかも守られるだけじゃなくて、大好きな人を守っていけるようになりたいです!」
間髪入れずに千花も瑛士に続いた。
「そう…ですわね。私も貴族の務めを果たさせて頂きます」
「そういうことなら僕も同じく、特進科に残らせてもらおう」
「拙者も、修行中の身ゆえ、参戦いたす」
「未熟な身ではありますが、力添えをできればと」
続々と残っていくクラスメイトたち。
猪突猛進も清楚系ド畜生も、ちゃんと残るようだね。
「優月様、如何致しましょうか?」
全員が俺を見ている。いやはや、答えなんてわかっているでしょうに。
「俺はすべてを壊せる力がほしい。理不尽をぶっ壊せるだけの力が。そのために俺はこのクラスに残るよ」
「では私も同じで」
かえでさんCOOLだぁね。
ともかくこれで…。
「全員…残ってくれるのですね…」
心底安心したような顔で笑顔を浮かべる先生。ホワイトアウトのスチルじゃないのが残念だ。
でも、これでよかったんだよな。一応全員残ったから終末への対策、前提条件は整えられたから、あとは全員の力をつけて成長するだけだ。
「では皆さん…一年間よろしくお願いいたします!」
それは、花が咲くような、きれいな笑みだった。
「あ、私の名前は美鈴愛奈です。よろしくお願いしまぁす!」
いや今言うんかい。
この後ホームルームをやって素直に解散した。
さて、この中に名前を出していないクラスメイトは何人いるのでしょうか。
クラスメイトヒロインよりも先に男の名前を優先する作者ですが、一本道でもない限りは各ヒロインルートよりもまず先にノーマルやBAD ENDから見始める(or選択肢を選んでいく)性癖なので…。
あと男友情エンドのほうが実は好き。




