エロゲ転生、進化の産声
(^ω^)おっおっおっwwwカノジョたちのようすがwww
誰が声を上げたか。
今目の前で繰り広げられている戦いは、自分たちが知っている戦闘とかけ離れたものだった。
それは時に荒々しく動き、時に穏やかに静やかに。体で死闘を表現する演舞のように。
または、殺陣が如く、切りつけることや薙ぎ払い、相手もまた切りつけて薙ぎ払い、予定調和のように舞台を動き回る。敵が攻撃を打ち出せば、鮮やかに横へそれてすれ違いざまに獲物を打ち上げて振り払うか躱して横薙ぎにして傷を与えていく。
まるでこの戦闘自体がエンターテインメントとも錯覚できてしまう。
そう、全員が言葉を失っていた、目の前の二人に奪われていたのだ。
傷を与えられていないことに怒りを感じたのか、敵が一度宙へ戻り、落下を利用して右腕を突き出しながら突進をしてくる。
その突進の対象、それは近くにいた小柄の少年?のほうだった。対格差を考えればひとたまりもない、大ケガで済めばよい方だろう。
「瑛士! 突っ込め!」
「あいっ!」
しかしだしたのは短い指示の上に自分から怪我を負いにいくような命令。硬くて太い石の右腕が瑛士に向かう。無慈悲な指令に対して隣から声があがる。危ない、と。
しかし敵に向かって直進する瑛士の動きには迷いがない。まるで命令者を信頼しきっているかのようにして、突進の意味通りにすでに攻撃モーションへ移っている。
「【エンチャントアタック:炎】! 【光源】」
青年が、魔法を唱える。簡易詠唱の補助、そして生活魔法だった。
「GAUUU!?」
しかしその光源は自分たちが知っている魔法ではない。下手すれば失明しかねないほどの光源だった。
敵にも目があったのだろうか、一瞬動きが止まって攻撃が失敗に終わり、その場に着地する。そして着地の隙を突いて瑛士が攻撃をし返した。
「舞姫流、二剣! やっ!」
「〇めオラァッ!」
光源を灯して視界を奪い、地面に堕としたところを、少年が熱を纏った剣で振り下ろし、直後に斬り返して払い上げて翼を強打する。少し遅れて鉄製の長柄棒をその後ろからフルスイング。翼の一部を砕くことに成功した。
「瑛士! そのまま続け!」
「あいっ! 舞姫流…一剣ッ!!」
瑛士が青年とすれ違いざまに飛び、流派のようなものを叫びながら武器を振り下ろす。
狙う先は翼の付け根付近!
金属と化石の音がぶつかり合い、更に翼へ罅が入る。
ミシミシと翼が悲鳴をあげた後、バゴンッ! という砕ける音を立てながら右翼が崩れ、胴体を支えきれずに地面へ落ちた。
「これで奴のHPはどれくらい削ったんだ?」
「うーん…、まだ有効打を当ててないから、なんとも言えないかなぁ…」
二人の会話が届き、これだけの攻撃を与え、一部損傷をだしたとしてもまだ届かないというのか。戦闘の構えは解かずに冷静に、余裕を見せながらやりとりを始める二人の姿に、女の子たちの背中に戦慄が走り、震えそうになる。
しかしそれを自制心をもって押さえつけた。最低でもこの場で自分が流されてはいけない、ということだけは理解しているから。
「敵のHPバーも見えねぇし…。こっちのダメージも数値化できねぇし…。やっぱスキャンつけときゃよかったか? いや、工房に行けるのはもう少し先だから…予め光属性を伸ばしとけば…あぁぁクソッ、やることが多すぎて考えんのがめんどくせぇことこの上ねぇわ!」
「いや兄ちゃん、敵さんがそもそも全身石ころなんだから面倒なのは今更でしょ」
「そん通りだけどよぉ…ッ! 散開!」
「あいっ!」
青年が声を上げてから別の方向へ離れた直後に、二人がいた場所を岩の砲弾が通過した。作戦会議中に敵が、捥げた翼の欠片を投げてきたようだ。幸いにして自陣側には飛んできていないため、壁にぶつかって脆く崩れ去る。
青年と目線が合う。
何かを訴えるような、確認するようなアイコンタクト。なんとなくだが伝わった。それは自分たちに対する戦闘続行の意思確認だ。
「みなさん、準備は良いかしら?」
そうだ。自分たちは任されたのだった。いつまで見ているんだと言わんばかりの青年の挑戦的な目に再度火が着く。自分の失敗をこのまま誰かに拭われるなど、己の矜持が許さない。それは少女たち全員にも伝播する。心の底にあるものはそれぞれだが、折れかけた心はすでに修復されていた。
この時彼女たちが思っていたのは、全員で生き延びたいという生存本能か、一泡を吹かせてこのままでは終わらないという不屈か、それとも見返してやるという反骨精神か。
ただここにいる者に共通するのは、ただ負けたくないという一心だけで動いていた。
「さぁ、いきますわよ! わたくしたちの獲物は、わたくしたちで倒すのです!」
「はい!」
「えぇっ!」
「はいなのです!」
全員がリーダーの指示を待っている。
「では全員、お行きなさい!」
「「「了解!(なのです!)!」」」
再戦という幕が切って落とされる。
それは少女の、少女たちの進化するための産声だった。
次回からはまた主人公視点に戻ります。




