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エルダ




「ああ、鍛冶屋の娘からの依頼でな。依頼人と一緒に魔物が多く生息している鉱山に鉱石を探しに行くらしい。なんでも自分の目で鉱石を目利きしたいようだ。まあ護衛クエストだな。どれくらいのものかはわからないが一応本人も結構戦えるらしいぞ。それで報酬は手に入れた鉱石で武器を作ってくれるということだ」

「へえー、いいじゃないですか。ダンテさん最近もっといい武器がほしいってよく言ってましたもんね」


「ああ、そうだな。だが、俺に付き合わせるような形になってしまうがソフィーはいいのか?」

「もちろんですよ。水臭いことを言わないでください。私達仲間じゃないですか」


「そうか、……そうだな。ありがとう。よし、それじゃこのクエストの手続きを済ませるか」


 クエストを受けると、依頼主の住所を教えられ、俺達はその場所に向かった。


 渡された地図の通りに移動していくと、どんどん街中から離れ、ついには城壁に隣接する区画まで来てしまった。さらに少し歩くと工房らしき建物が見えた。


「ずいぶん寂れた場所にあるんだな。まあいい、とりあえず入ってみるか」


 工房の近くまで来ると金属を打っている音が聞こえた。俺たちはノックしてから中に入った。

 建物に入ると武器や防具が所狭しと並んでいた。パッと見でどれもかなり質がいいことがわかった。音は奥の部屋から聞こえてくる。入口側が店、奥が工房になっているらしい。


「すいません! クエストを受けて来ました!」


 俺は音にかき消されないように大きな声を張り上げた。


「あいよ! ちょっと待っててくれ!」


 奥から女性の声が聞こえた。声の主が今回の依頼人だろう。

 俺たちが少し待っていると、奥から女性がやってきた。露出が多い格好をしていて、小麦色の肌に過剰ではなく健康的な筋肉、それでいて胸は大きい、顔は整っていて美人だと感じた。髪は真っ赤で少しパーマがかっているセミロングだ。


「待たせて悪かったね。とりあえずお茶でもしながら話しをしようじゃないか。ついてきとくれ」


 女性についていくと奥の工房のさらに奥が居住スペースになっていた。そこのテーブルに座り、お茶を淹れてもらった。


「あたいはエルダってんだ。今回はよろしく頼むよ」

「よろしくエルダ。俺はダンテだ」


「私はソフィーです。エルダさん、よろしくお願いしますね」

「ああ、ダンテにソフィーだね。よし、それじゃ早速だがあんたらをテストしてみていいかい?」


「テスト? どんな内容なんだ?」

「うーん、そうだね、あたいとダンテが戦うってのはどうだい? あたいよりも弱いやつなら護衛にならないからね。ダンテが負けるようなら別の冒険者にかわってもらうよ」


 なるほど、それなりに腕に自信があるようだな。まあ、エルダの言っていることにも一理あるし、ここはテストを受けることにしよう。


「わかった。俺はそれでいい」

「ええ!? だ、大丈夫なんですかダンテさん? 危ないんじゃ」


「まあ大丈夫だろう。何も本気で殺し合うわけじゃないんだ。それにもしも怪我をしてもソフィーが治してくれるだろ?」

「頼ってくれるのは嬉しいですけど、出来るだけ私の出番が無いようにしてくださいね?」


「ああ、大丈夫だ、約束する」

「よし、話しはまとまったようだね。それじゃ外に出ようか」


 俺達は工房の前の空き地に移動した。俺とエルダが距離を取り武器を構えた。エルダの武器は大きなハンマーだ。


「よし、それじゃソフィー、開始の合図を頼む」

「わかりました。…………それでは、試合開始!」


 ソフィーの掛け声とともにエルダが突進してきた。あんなに大きなハンマーを持っているというのに相当なスピードだ! そしてエルダはその勢いのままハンマーで殴りかかってきた。

 俺は大きく後ろにジャンプしてなんとかエルダの攻撃をかわした。


 エルダの攻撃は大振りではあったが予想以上にスピードがあり、まともに直撃したら骨がバラバラになってしまうだろう。

 それに剣で受けるわけにもいかない。そんなことをすれば剣が折れてしまうだろう。もっといえば中途半端に攻撃しても剣を折られてしまう可能性がある。


「よくかわしたね。なかなかやるじゃないか。だがいつまでかわし続けられるかねえ!」


 エルダはブンブンとハンマーを振り回し連続攻撃を仕掛けてきた。

 俺は右に左に後ろにとかわし続けた。防戦一方ではあったが、ひとすじの光明が見えた。

 俺はエルダから一旦大きく距離を取り、すぐにエルダに向かって突っ込んでいった。


「何がしたいのか知らないが、これで吹っ飛んじまいな!」


 エルダが大きく横振りで攻撃してきた。やはり予想通りだ。エルダの攻撃パターンはすでに掴んでいた。

 俺は素早くスライディングをしてハンマーをかわし、すぐに起き上がりエルダの胸に剣を当てた。

 数秒の静寂の後、エルダが口を開いた。


「はははっ、やるじゃないか! ダンテ! 気に入ったよ、テストは合格だ! 改めてよろしく頼むよ」


 エルダは豪快に笑うと、俺に手をさし伸ばしてきた。俺はその手を握って握手を交わした。



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