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旅立ち



 リサの申し出はかなりありがたい。とりあえず聞くだけ聞いてみてもいいかもしれないな。


「……じゃあ、商品用の4次元袋は持っているか?」


 おそらくリサは自分用には持っているだろうが、流石にそれをもらうわけにはいかないからな。商品としての4次元袋じゃないとだめだ。


「4次元袋ですか? ええ、取り扱ってますよ。売り物としてはちょうど最後の1つです。よろしければ差し上げますよ」

「ほ、本当か!? いや、でもそんなに高価な物をもらうのもな」


「値段のことは気にしないでください。あたしは仕入れ値で仕入れてるんですから、ダンテさんが思うほどの負担にはなりませんよ。それに、命を助けてもらったんです。これくらい安いものですよ」


 リサは嬉しそうに笑った。

 リサ自身がこう言っているんだし、あまり遠慮するのもかえって失礼かもしれないな。


「わかった。それじゃありがたくいただくことにするよ。ありがとう、リサ。ちょうど欲しかったところだからすごく助かるよ」

「いえいえ、喜んでいただけて良かったです。他には何か欲しいものはありませんか?」


 そう言ってリサは自分の4次元袋から、テーブルに様々なアイテムを置いて、俺たちに見せて使い方まで教えてくれた。いろいろな珍しいアイテムもあり、気になった何点かのアイテムももらうことにした。






「いやー、結局こんなにもらっちゃったな。リサ、本当にありがとう。もらったアイテムは大切に使うよ」

「ふふっ、そう言ってもらえるとあたしも嬉しいです」


「そういえば、リサさんってこれからどうするんですか?」

「そうですね、とりあえずは宿に泊まって、明日からは商売ですかね。その後はこの街で商品を仕入れて王都に戻ろうかと思ってます」


「……王都か」

「? どうかしたんですか? ダンテさん」


「ん、いや、なんでもない。ところでリサ、宿なら俺達の泊まっている宿はどうだ? 値段の割になかなかいい宿だぞ」

「えっ、も、もしかしてお二人は同室で宿泊しているんですか?」


「そ、そんなわけないじゃないですか!」


 ソフィーが顔を赤くして慌てている。


「そ、そうですよね。安心しました。じゃあ、あたしもそこにお世話になろうと思います。お二人ともよろしくお願いします」

「ああ、よろしく、リサ。ところで、滞在期間はどれくらいなんだ? 帰りの護衛はもう見つけているのか?」


「いえ、どっちもまだはっきりとは決まっていません。どうかしましたか?」

「ん、いや、なんでもない。ただ聞いただけだ。それより、宿に案内するよ。そろそろ出よう」





 それから宿に向かい、デスグリズリーとの戦いの疲れもあり、俺は泥のように眠ったのだった。





「おはようございます、ダンテさん!」

「おはよう、ソフィー、今日も元気だな」


「お二人ともおはようございます」

「おはよう、リサ。今日から商売か。繁盛するといいな」


「ありがとうございます。お二人はクエストですよね。お気をつけて」

「ああ、ありがとう。ただ、俺達は少しゆっくりしてから行くよ」


「そうなんですか? わかりました。ではお先に失礼します」


 3人で朝食を食べた後、リサは先に出発した。俺達はリサを見送ったあと、お茶を注文して席についた。


「ゆっくりするなんて珍しいですね。ダンテさん」

「ああ、少し話したいことがあってな。今大丈夫か?」


「ええ、もちろん大丈夫ですよ。何です? 話しって?」

「実は王都に行くことを考えているんだ」


「えっ!? 王都にですか!?」

「ああ、デスグリズリーとの戦いで自分の実力不足や武器の質の低さが身にしみたからな。もっと戦闘能力を向上させたいと思ってな。それにはやはり王都のほうが何かと都合が良いだろう。それに、俺はまだ自分の能力の発現を完全に諦めたわけじゃない。王都に行けばそういう情報も手に入るかもしれないからな。リサの護衛がてら王都に行こうかと思っている。ただ、これは俺の考えだ、危険もあるし一人で決めるわけにはいかない。ソフィーの意見も聞かせてほしい」


 俺の問いにソフィーは間髪を入れずに答えた。


「そんなこと考える必要もありません、私はダンテさんについていきますよ! 今まで行動を共にしてきて、それが1番いいって心の底から思いますもん! 足手まといになっちゃうかもしれないですけど、これからもよろしくお願いしますね、ダンテさん」


 そう力強く語るソフィーの目には曇りも迷いもなかった。ソフィーの言葉に嘘がないことをその目が何よりも物語っていた。

 ソフィーの気持ちがわかると同時に、俺は無性に嬉しくなっていた。これほどまでに誰かに純粋に信頼され、頼りにされたことが初めてだったからだろうか? 大きすぎるほどの喜びに俺は少し戸惑いすら感じていた。


「そ、そうか。ありがとう、ソフィー。そう言ってくれて嬉しいよ。こちらこそこれからもよろしく頼む。あと、ソフィーは足手まといになんかならないぞ。それは俺が保証する。デスグリズリーとの戦いでもソフィーがいなかったら俺は死んでたかもしれないからな。足手まといどころか頼りにしているくらいだ」

「そ、そうですか? そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。これからもダンテさんのお役に立てるように頑張ります!」


「ああ。それじゃ話しもまとまったし、今日の夜、王都に行くことをリサに伝えておくか」


 



 その日の夜、夕飯を食べながら俺たちはリサに王都までの護衛を申し出たのだった。

 リサの護衛がまだ決まっていないこともあって、トントン拍子に話しはまとまり、2週間後に3人で王都へ出発することになった。

 

 出発までの間、リサは商売、俺達はクエストをこなしがてらソフィーのレベル上げを行い、ソフィーはまた少しレベルが上がり、新しい魔法を覚えた。そうしているうちにあっという間に出発当日の朝になった。

 

「よし、早めに飯も食べ終えたし準備も完璧だな。後は冒険者ギルドに行ってリサの護衛の出発報告だな」


 俺達は冒険者ギルドに入り、いつも対応してくれる受付嬢に護衛クエストの手続きを頼んだ。ついでに街を出ることも伝えた。


「あなたにはすごく期待していたので正直残念ですが、こればかりは仕方ありませんね。優秀な冒険者ほどより大きな街で活動するものですし。……あなたならきっと、大物冒険者になれると思いますよ。私が応援していること、たまには思い出してくださいね。また会える日を楽しみにしています。ではご武運を」

「ああ、ありがとう。期待に答えられるように頑張るよ」


 受付嬢に別れを告げ、冒険者ギルドを出た俺達は、その足でルートの街を出たのだった。





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