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リサ



「……さん、ダンテさん」


 目を開けると至近距離でソフィーの顔が見えた。目からは大粒の涙を流している。


「よ、良かった、目を覚ましてくれて。ダンテさん、大丈夫ですか?」

「ん、……ああ、よくわからないが大丈夫かな? 体の異変は無くなったように感じる。……もしかして、ソフィーが治してくれたのか?」


 俺の言葉にソフィーは心底安心した様子だ。


「それは良かったです。本当に心配したんですよ。……ええ、一応解毒魔法とヒールをかけておきました」

「そうなのか、ありがとう。それにしても毒か、危なかったな。ソフィーにはまた助けてもらったな、本当に助かったよ、ありがとな」


「い、いえいえ、それを言うなら私のほうが助けてもらってますよ。今回だって、ダンテさんがいなかったら私死んでただろうし」

「だが、そもそも首を突っ込んだのは俺だからな。危険な目に合わせてしまってすまなかった」


「でも、そのおかげであの子を救えたじゃないですか」


 ソフィーがそう言ったタイミングで緑髪の少女が近づいてきた。


「あ、あの、この度は危ないところを助けていただき本当にありがとうございました!」

「ああ、ところで、助かったのは君だけか? あの倒れていた3人はどうなった?」


「そ、それが、残念ながらすでに亡くなっていました。一応ヒールもかけてみましたがダメでした」

「そうか、……残念だがしょうがないな。ピクリとも動かないからそうじゃないかとは思っていた」


「うう、あたしのせいで冒険者さんたちが亡くなってしまうなんて。皆さん最後まであたしを守って戦ってくれました」


 少女は泣きながら俯いてしまった。


「そんなに思い詰めるな。冒険者なんだ。死も覚悟しているさ」

「そうです。私でさえそうなんですから。だからあまりご自分を責めないでください」


「あ、ありがとうございます。……そうですね、出来るだけそうしてみます」


 少女が涙を拭い顔を上げたことで俺と目があった。よく見ると整った顔立ちをしている。かわいいというよりは綺麗な感じだろうか。


「ところで、名前を聞いておいてもいいか? 知らないととっさの時に指示を与えたりできないからな。俺はダンテだ」

「私はソフィーって言います」


「ダンテさんにソフィーさんですね。あたしの名前はリサです。よろしくお願いします」

「よし、それじゃ、爪や牙、魔石を回収してから街に戻るか。植物採集もだいたい終わってるし、急いで戻ろう」





「あ、あの、申し訳ないんですけど、あたしも同行させてもらえませんか? 一人だと怖くって」


 リサがデスグリズリーの解体をしている俺におずおずと話しかけてきた。


「なんだ、そんなことか。俺達はもともとそのつもりだったぞ」

「本当ですか!? あ、ありがとうございます! 出来るだけ足手まといにならないように頑張りますのでよろしくお願いします!」


 リサは嬉しそうにおじぎした。







 リサを守るようにしながら、俺達は無事冒険者ギルドに到着した。


「まずは報告しておかないとな」


 急ぎ受付嬢のもとへ向かう。


「すまない、急用だ。冒険者3人が死んでいた」


 俺は3人の冒険者ライセンスカードを受付嬢に渡し、細かい事情を説明した。


「そうですか。この度は危険な魔物を退治していただき本当にありがとうございました。リサさんの護衛報酬と亡くなった方々の持ち物などは、どうぞダンテさん方がお受け取りください。また、冒険者ギルドからも特別報酬をお支払いいたします。ご用意いたしますので少々お待ちください」


 そう言って受付嬢は奥の部屋に移動した。少しして、受付嬢が戻ってきた。


「お待たせいたしました。こちらが特別報酬です。……それにしてもDランク冒険者3人を殺した魔物を二人で退治するなんて、やはりあなたはDランクで収まる器ではないようですね。これからも頑張ってください。応援していますからね」

「あ、ああ。ありがとう」


 受付嬢はそう言いながら少し頬を赤らめていた。

 この受付嬢がこんなことを言うなんて意外だった。もっとクールな感じの人かと思っていたが、案外親しみやすい人なのかもしれないな。


「むう、なんかダンテさんデレデレしてませんか」


 ソフィーはそう言いながらジト目で俺を見ている。


「べ、別にそんなことはないぞ! ソフィーの気のせいだ」

「そうですかね〜、まあ、そういうことにしておきましょうか」


 そう言いつつもソフィーはまだジト目を俺に向けている。


「そんなことより、飯でも食わないか? 報酬もたんまりもらったからな。ソフィーも腹が減っただろう?」

「いいですね。確かにお腹減りました」


「あっ、そういうことでしたらあたしに奢らせてください。お二人には命を助けてもらいましたからね。もちろん、食事だけじゃなくてもっとちゃんとしたお礼もするつもりです」

「ん、そうか? そんなに気を使わなくてもいいんだが、まあ確かに、食事くらいは奢ってもらってもいいかもしれないな。それじゃよろしく頼むよリサ」


 俺達は冒険者ギルド内の酒場の席につき、各々が好きなメニューを注文した。腹ペコなのもあり、特に会話もせず一気に食べ終えてしまった。


「いやー、うまかったな」

「ダンテさんすごい食べっぷりでしたね。やっぱりそれだけお疲れになったんですね」


「あっ、すいません、あたしのために戦ってくれたんですもんね」

「そ、そういう意味で言ったんじゃないですよ。私達が勝手に首を突っ込んだんだから気にしないでください」


「ああ、その通りだ。だからリサがそんなに気を使う必要はない」

「わかりました、ありがとうございます。でもお礼だけはちゃんとさせてください。まだ言ってなかったですけど、あたしは王都から来た行商人なんです。もしかしたらお二人のお役に立つアイテムを持っているかもしれません。必要でしたら差し上げますよ」







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