冒険者登録
自己紹介の後、俺達はルートの街に戻ってきた。
「それにしてもダンテさんって本当に強かったですね。なんであんなに強いんですか?」
冒険者ギルドに向かう途中、ソフィーがそんな質問をなげかけた。
「ああ、昔から剣の修行ばかりしてきたからな。あれくらいのことはできるさ」
「へえー、じゃあ結構生活に余裕のあるお家の方なんですね」
「ああ、ホーウッド家ってわかるか? 俺はホーウッド家の者なんだが、ついさっき勘当されて家を追い出されてしまったばかりなんだ」
俺の言葉にソフィーは驚き、すぐに申し訳なさそうな表情になった。
「す、すいません。立ち入ったことを聞いてしまいました」
「いや、いずれ話さないといけないことだし、そんなに気を使わなくて大丈夫だ」
「そ、そうですか。ありがとうございます。でも、それでいろいろ合点がいきました。それじゃあ、もしかして今日泊まる宿もまだ取っていないんですか?」
「ああ、そうだな」
「でしたら、私の泊まってる宿はどうですか? ちょうど私の隣の部屋が空いていましたし、値段の割にはいい宿ですよ」
宿のことはまだ考えていなかったが、その条件だと特に断る理由もなさそうだな。
「わかった。じゃあそこに泊まることにしよう」
俺達はソフィーが宿泊している宿に行き、部屋を確保した。宿代はさっきの礼ということでソフィーがおごってくれた。
「よし、それじゃ、ギルドに行くか。ソフィー、道案内を頼む」
「任せてください! って、私よりもダンテさんのほうがこの街に詳しいんじゃないですか?」
「いや、俺は屋敷と多少街の外のことを知っているくらいで、街のことはほとんど知らないんだ」
「へえー、本当にお金持ちって感じですね」
「まあ、元、だけどな」
俺は苦笑しながら言った。
「わかりました。そういうことでしたらお任せください」
俺は、意気揚々と歩くソフィーについていき、しばらくすると、大きな建物が見えてきた。ソフィーがその建物を指差している。
「あれが冒険者ギルドですよ!」
「思っていたよりでかいな」
冒険者ギルドに入ると、思ったよりも人は少なかった。
「やけに空いているな。いつもこんな感じなのか?」
「この時間帯は皆さんまだ仕事中なんでしょうね。夜になると酒場がすごく込みますよ」
「なるほど、なんにせよ、さっさと登録をしておくか」
「そうですね。登録はあのカウンターで行うんですよ」
俺はソフィーに連れられ、美人の受付嬢がいるカウンターにやってきた。
「説明と書類の記入は以上となります。それでは最後にステータスの確認をさせてください」
いろいろな説明を聞き、何枚かの書類に記入したあと、受付嬢が人間の顔くらいある紫色の魔石を持ってきた。俺がそれに手をかざすと、文字と数字が空中に浮かんだ。
「えっ!? レベル35!? ……いや、レベルもすごいけど、何よりステータスが高い! 普通ならレベル50にはならないとこのステータスにはならないわ!」
受付嬢が何やら驚いている。
「レ、レベル50クラスのステータス!? ダ、ダンテさん、こ、これは一体どういうことなんですか!?」
ソフィーはさらに驚愕している様子だ。
「ああ、実はホーウッド家は代々神族の血を受け継いでいてな。普通1つのステータスが人より高くなるんだが、なぜだか俺は全てのステータスが高かったんだ。だから昔は父上にもすごく期待されていたんだがな。結局ホーウッド家の者なら発現するはずの特別な力が、成人するまでに発現しなくて家を追い出されちまったよ」
「そうだったんですか。でも、それってすごいことじゃないですか。とりあえずステータスが高いってだけでもものすごく有利だと思いますよ」
ソフィーのその何気ない言葉は、俺の今までの価値観をいい意味で壊した。
そうか! この数年間、俺は能力が発現しないことにコンプレックスを感じていたが、そんなものがなくたって、このステータスの恩恵だけでも俺は恵まれているじゃないか! それに幼少の頃からひたすら剣の腕を磨く環境が整っていたおかげでレベルも高い。
「ありがとう、ソフィー! おかげでなんだかスッキリしたよ!」
「ど、どうしたんですか? そんな晴れ晴れとした顔をして。まあでも、お役に立てたなら良かったです」
「あの、手続きを進めてもよろしいでしょうか?」
俺たちが話していると、待ちかねた受付嬢が話しかけてきた。
「ああ、すいません。よろしくお願いします」
「そのステータスでしたらC級以上の実力はあると思いますが、C級ライセンス以上は実績が認められたり試験に合格する等しないと発行できませんので、今日のところはD級ライセンスの発行でよろしいでしょうか?」
「わかりました。それで大丈夫です」
それから少し待ち、出来上がったライセンスカードを受け取った。
「へえー、これがD級ライセンスですかあ。私のG級ライセンスとパッと見そこまでは変わらないですね」
「ソフィーはG級だったのか」
「そうなんですよ。G級だと受けることができるクエストがほとんどないのですごく困っていたんです。でもダンテさんのおかげでこれからはD級までのクエストなら受けることができますね」
「それはそうと、ソフィーの今のレベルはいくつなんだ?」
俺がそう聞くと、ソフィーは少し黙ってから、言いにくそうに口を開いた。
「……レ、レベル1です」