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ロックスライムとガガーン


 ソフィーの指差す方にはねずみ色のスライムがいた。スライムはゆっくりとこちらに近づいてくる。


「スライムか、物理攻撃は効かないだろうな。ソフィー、魔法で攻撃してくれ!」

「わかりました! ……………………ファイアボール!」


 ソフィーの持つ杖の先端が赤く光り、そこから火球が高速で飛んでいった。

 火球がスライムに当たる瞬間、スライムの体が岩石に変わった。

 火球は岩石になったスライムに命中したが、全くダメージはなさそうだ。


「それならこれでどうだ!」


 俺は素早く岩石になったスライムに近づき、4次元袋から取り出したハンマーで岩石状のスライムを力の限り叩いた。

 ガキンと大きな音をたて、岩石状のスライムはバラバラに砕け散った。


「よし、倒したな」


 俺が安心したと同時に、飛び散った岩石状のスライムは、岩石状からスライム状に体を変化させ、1箇所に集まり、みるみるうちに最初の状態に戻ってしまった。


「面倒臭いやつだな! ……よし、ソフィー、2連ファイアボールとアレを試してみよう!」

「アレですか? ……わかりました、アレですね!」


 俺の考えをソフィーはすぐに理解してくれ、早速行動に移した。

 まず最初のファイアボールが飛んでいきスライムに命中した。やはりスライムは岩石状になり身を守っている。その瞬間、俺が岩石状のスライムを叩いた。

 スライムはバラバラになり、岩石状からスライム状に戻り集合を始めた。


「ソフィー、今だ!」

「はい! ファイアボール2発目、拡散!」


 ソフィーが掛け声とともに魔力を火球に放ち、魔力が当たると同時に火球が爆ぜ、小さな火球になり、バラバラになったスライムの全てに命中した。

 そして数秒後、スライムは全て焼き焦げていた。


「やはりこのスライムはそんなに知能が高いわけじゃなかったな。分裂すると何よりも集合することを優先してしまう習性があるんだ。そこが仇になったな」

「う、うまくいって良かったです」


 ソフィーが安堵の表情をもらした。


「すごかったじゃないかソフィー! 覚えたての2連ファイアボールも、魔法のコントロールも完璧だったぞ!」

「え、えへへ。そんなに褒められたら照れちゃいますよ。……でも、すごく嬉しいです。また褒めてもらえるように私頑張ります!」


 ソフィーは照れくさそうにしながらも、嬉しそうにもしている。そんな表情と仕草が可愛らしかった。


「2人とも気をつけな! また魔物だよ!」


 エルダの声で俺達は魔物に気づいた。


「あの魔物は?」


 見た目はただの丸い岩に目がついている、そんな魔物だ。


「あれはガガーンだね。基本的には体当たりしかしてこないが体がえらく硬いんだ」


 エルダがそう言うとほぼ同時にガガーンが体当りしてきた。その動きは見た目よりもずっと速かった。

 俺はタイミングを合わせて向かってくるガガーンをハンマーで横振りに叩いた。

 手に鈍く重い衝撃が走った。ガガーンは砕けずに吹っ飛んでいき岩壁に勢いよく衝突した。

 ドガンと大きな音をたて、ものすごい衝撃のはずなのだが、それでもガガーンの体に異変はなかった。


「なんて硬さだ! ソフィー、頼む!」

「ええ、ダンテさん、今のうちにストレングスをかけます! ……………………ストレングス!」


 俺の両腕に赤いオーラがまとわれた。体中からどんどん力が湧き出るようだ!

 ガガーンがまた体当りしてきた。

 さっきと同じタイミング、同じ角度で俺はハンマーでガガーンをぶっ叩いた。


 先程の鈍く重い衝撃はなく、むしろ心地よい打撃感があった。

 ガガーンの体は粉々に砕け散っていた。


「やりましたね、ダンテさん!」

「ああ、ソフィーのおかげだな。ソフィーの魔力が上がったからか前よりもストレングスの効果が強かったよ」


「それは良かったです。レベルアップしたかいがありました」

「よし、これでこの鉱山に出る魔物はゴーレム以外全種類倒せることがわかったね。後は油断せずに良い鉱石がある場所を探そう」


 俺達は俺とエルダを先頭にまた歩きだした。




 歩いて数分後のことだった。T字路を曲がった先は開けた空間になっており、遠くに漆黒の巨大な岩が見えた。

 よく見るとその岩は5メートルほどの人型の岩で、ゆっくりこちらに歩いてきている。


「おい! あれはブラックゴーレムじゃないか! エルダの言っていたゴーレムってブラックゴーレムのことだったのか!?」

「いや、もちろん普通のゴーレムのことだよ。おかしいね、ブラックゴーレムが出るなんて聞いていないよ」


 おかしい、デスグリズリーの時も思ったが、なぜ主要な街の近くにこんな危険な魔物が出現するんだ? ただの偶然だといいんだが、もしかしたら何かが起きているのかもしれない。

 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。図鑑で読んだ通りだとブラックゴーレムは危険すぎる。


「そうか、で、どうする? とりあえずここは一旦引いて王都軍や冒険者ギルドに報告したほうがいいんじゃないか?」

「いや、鍛冶屋としてあんな上質の素材を前に引くわけにはいかないね、戦おう!」


 エルダは即答した。この様子だとブラックゴーレムの危険性をいまいち理解していないようだ。

 俺は反論しようかとも思ったが、依頼主がこう言うからには俺が守らないとな、と覚悟を決めた。


「わかった。だがブラックゴーレムはエルダが考えている以上に危険な魔物のはずだ。絶対に油断はするんじゃないぞ」

「ああ、わかったよ、それじゃ行こうか!」


 俺達はブラックゴーレムに向かって駆け出した。


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