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7 リク視点



「お、お兄さんが好きだから……?」


キョウちゃんの瞳が涙でキラキラして、飴玉みたいに綺麗で甘そうだから舐めたいなぁと思ってたら、カナメの質問に予想外の回答をしてくるキョウちゃん。


「そ。兄貴が好きなんだ、チョコミント」


キョウちゃんは笑う。

いつものクールさと刺々しさは鳴りを潜め、柔らかく、溢れんばかりの愛おしさが詰め込まれているのを感じる。


そんな顔も、できるの。


「いつもすげぇ美味しそうに食べるんだよ。で、こっちにも薦めてくんの。いつもいらないって断ってたけど、何でか今、無性に食べたくなって。ふふっ、おまえらの言う通り、やっぱ私も旨いと思わねーわ」


キョウちゃんは美味しくないと言いながら、アイスを口に運ぶのを止めない。


「……そうなんだぁ」


お兄さんの話は、以前彼が病気だと打ち明けてくれたとき以来だ。

キョウちゃんが身内の話をしてくれたことに、心を開いてくれてきたなぁと浮き立つ心と、カナメも一緒にいやがるんだよなぁとちょっぴり残念な気持ちが混ざり合う。


「キョウちゃんって、もしかしてブラコン?」

「…………否定はしない……」


ちょっとからかうように訊くと、多少の間はあったものの素直に答えてくれる。

ま、あーんな顔してお兄さんのこと話すんだから、どれだけ好きなのか言われなくても分かっちゃうけどさ。

キョウちゃんの可愛い顔をこんなにも引き出すお兄さんに、ちょっぴり嫉妬しちゃうな。


「……リク、口開けろ」

「へ? むぐっ!? ッ、ま、っずい!!」


後から照れくさくなったのか、キョウちゃんがチョコミントを口に突っ込んできた。うげぇ歯磨き粉!!


「ヒドイよキョウちゃん!」

「ふふふっ! 道連れ!」


可愛い。

もうもうもうっ! 何なんだよ可愛いなぁ!

普段から口悪いのに、笑い方はすんごく可愛らしい。ギャップが凄い。「ふふふっ!」て。

どれだけ俺をきゅんきゅんさせたら気が済むの? 今日は何の日? おれを喜ばせる日? ありがとう! ありがとう!!


「なぁ~俺もいるんだけど? 二人だけでイチャつくの止めてくんねぇ?」

「イチャついてねぇよ」

「えーキョウちゃんたら照れなくてもいいのにぃ」

「照れてないので止めてもらっていいですか?」

「急に敬語」

「ウッ、ウッ、傷ついた……慰めてカナメ……」

「お~いいぜ。やるかァ」

「はぁ? おい、本当にやんなら外行けよおまえら」

「混ざらねーの?」

「何で混ざると思う?」

「しようよぉキョウちゃあん」

「しねぇわ」


キョウちゃんは埒が明かないと思ったのか、問答を早々に切り上げて自室に引っ込んでしまった。

あぁは言ったけど、カナメと今から本当に始める気は無かった。カナメだってそうだろう。


「あーあ、振られちまったなぁ、リク」


後ろ姿もかっこいいキョウちゃんを見送って、近頃ずっと思っていたことをカナメに言うことにする。


「カナメさぁ」

「おん?」

「おまえさ、キョウちゃんが女の子だって分かってんの?」


カナメはおれと同じゲイだ。

身体の相性が良いから多分一番やってるけど、恋愛感情はカケラも無い。微塵も無い。

この前キョウちゃんにおまえらでキスしとけば良いだろって言われてゾッとした。キスは好きな人とじゃなきゃっていう乙女思考なわけじゃないけど、カナメとキスって考えたら凄く萎えた。


「あー? 知ってるに決まってるだろ?」

「……ならいいけど」


割り切った関係だから、キョウちゃんに嫉妬して手を出される心配が無くて家に連れ込んでたけど、どーも最近は近すぎるんだよねぇ。


「つーか、そっくりそのまま返す。キョウから遠い目で『アイツって本当にゲイだよな? それとも私が女だって忘れてんのか?』って聞かれたぜ? オマエ、女相手じゃ勃たねーんじゃなかったか? 驚いてんだよこっちもよ」

「あは。実は俺もビックリしてるんだよね。いくら顔が骨の髄まで好みでも、体見たら萎えると思ってたのにね!」

「……見たのか?」

「事故だよ事故ぉ。風呂場のドアの鍵閉まってなくてフツーに開けちゃってさ。キョウちゃんの全裸見ちゃったんだよね」

「あァ、なるほど。で? そこで勃ったわけか。女の体で」


そのとおりだ。

今でも目に焼き付いている。

女性的でありながら、肉食獣のように引き締まっていてしなやかで、洗練されたあの身体。


思わず見とれた。


「そーなんだよねーー! 正直そのときはパニクったし、実はバイだったのかな!? って思って適当に女の子引っ掛けてやろうとしてみたけど、ピクリともしなくてあれぇ? だよ。いやぁあのときの女の子のビンタ凄かったな……『恥かかせるなんて最低!』って」

「ぶはっ! 思い出したわ。『見てこれヤバ』っつって、顔に紅葉つけたオマエの写真見せてきたことあったな。あれかよ?」

「そうそう! 見事な紅葉だったんで誰かに見せたくってさぁ。で、ホテルで暇になったから、そのまま試しにキョウちゃんで抜いたら……うん。……早くて。最速で出て呆然とした」

「はぁーーマジか。思ったよりガチじゃねーの。こりゃあ面倒だな~。まぁ、三人も悪くねぇけど」


……ん?

聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。


「カナメ、キョウちゃん女の子だよ?」

「あ? 何回聞くんだよ。知ってるって」

「じゃあ

「俺、バイなんだわ」

「………………は?」


は?


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