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茶吉の日常

大室山

作者: 茶吉

大室山のてっぺんにある噴火口から、階段を降りていくと、地底都市への入り口がある。地底に広がるその国は人類と不可侵の条約を結んでいるクマの広大な国である。地上のように地底でも独自の科学が発達している。クマは人間よりも長生きで人間よりも遥かに強い生物だ。クマと人間とでは、あまりに力が違い過ぎるおかげで戦争にもならない。趣味趣向も違う地上と地底とでは、お互いに独自の習慣と風習で暮らしていて、お互いに無干渉で不可侵で平和的に共存している。

茶吉が塩鮭を何匹も肩に担いで伊豆高原の辺りを行商していた時に「それは何だ?」とクマに声をかけられた。良い匂いをさせていたのだろう。クマはシャケを生で食べるが、塩鮭を知らないようだった。茶吉は塩でのアレンジ方法を説明したのだが、食べたことがない人に食べたことがないものを説明するうちにめんどくさくなり、塩鮭を一本そのクマにあげた。すると翌日、そのクマが茶吉の魚屋を訪ねて来て、シャケは生でも美味いが、塩のアレンジも美味かった。あれはどうやって作るのだ?と聞くので、目の前で実演して見せた。感心して熱心に見ているのでついでにシャケを干物にする方法も教えたらとても喜ばれた。クマの手では包丁が握れないのだが。

というわけで茶吉はクマの国からのお客さんにもアレンジしたシャケを売ることになった。とは言ってもクマの国にはお金の概念がない。一応、クマたちも人間の真似をして金塊を握りしめてシャケの干物を買いにくる。地底には石ころに混じって金塊がごろごろそこらじゅうに落ちているそうだ。魚屋のカウンターの上に大きい金塊小さい金塊を無造作にポンポンと置いていく。数日経つとカウンターの上に金塊の山が積み上がり眩しく光っている。

まさに黄金のカウンターである。そこから着想を得て、その金で長いバーカウンターと椅子を作らせて店内に並べて配置してみた。カウンターテーブルの下には青色発光ダイオードを内蔵させた。茶吉の魚屋は、もともと古い蔵だった石造りの建築だからいつもほの暗いのだが、そのほの暗い中で、カウンターがぼんやり光ってなんとも良い雰囲気を醸し出している。

地底からわざわざやって来てくれたクマたちに、冷えたハチミツを一杯飲んでちょっと涼んで行ってもらおうと思って作ったらそれが大ヒットで、バーテンダーの茶吉との会話を楽しむためだけに訪れるクマたちで店は大賑わいとなり、クマ族の間では、茶吉の店でハチミツでキメるのが大流行となった。

クマたちは自宅でもハチミツを嗜みたいとハチミツをお土産に買って帰ったので、地底では今ハチミツが大ブームである。ところがこれが原因で、クマの国では今、保守党と、民主党が、真っ向から対立する事態となっている。

茶吉にはハチミツを振る舞って小粋な会話をしてもらうべきか?

それとも茶吉にはシャケの干物を開くことに専念してもらうべきか?

の二手に分かれ論争になり、多数決で決めようということになったそうで、選挙で投票が行われるそうだ。その間、茶吉は争いに巻き込まれては身の危険であるからと、家に帰って待機しているように。と言われた。どちらかに決まったらスグ知らせるから。ということだ。

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