90『採取の方法と野営場』
門の警備兵たちと別れを惜しみ、ジェラルディンたちはペン村を後にした。
毎日ではないが乗り合い馬車も運行しているのだが、ジェラルディンたちは徒歩を選択した。
これはじっくりと採取をしたいと言うジェラルディンの考えからだった。
「この領の森は豊かね。
薬草の質もいいわ」
ジェラルディンはラドヤードに薬草の採取のコツを教えていた。
その細やかさは、長年採取をしてきたラドヤードも目から鱗だった。
「素材の状態が調薬の時にものを言うのよ。
特に根付きで採取する場合は気をつけて。
引き抜くのではなくコテで根を浮かせてから取ると根がきれいに取れるわよ。特に根を使用するアイデンラータには必須の知識なの」
軽く振って土を落とした株をていねいに袋に入れていく。
「採取した後も気をつけて。
ここで痛めてしまったら元も子もないわ」
「薬草の採取って、こんなにデリケートなものだったのですね。
俺が習ったのは、取ってくる時根付きかそうではないかくらいでした」
「小さなことだけど、出来が違ってくるの。
冒険者ギルドにはこういうことも教えて欲しいわね」
ジェラルディンは余程のことがない限りギルドに依頼を出そうとは思わない。買い取りなどあり得ないことだ。
「だからラドにはちゃんと採取できるようになって欲しいわ。
貴重な薬草の中には上級冒険者でないといけないところに生息するものもあるから」
「はい、主人様。
よろしくお願いします」
そんな様子で採取をしながら旅をしているのだ。その進行の速度は遅く、遅々として進まない。
結果2人は森の中にゲルを出して野営する事が多くなる。
ペン村を出て4日も経つのに、ジェラルディンたちは未だに隣村にも到着していなかった。
普通ならばペン村から隣のアバ村まで徒歩で2日で到着する距離なのだが、夕刻が迫る今、ようやく村と村の間にある野営場にたどり着いた。
「ラド、ここはどういう施設なの?」
ジェラルディンの出身国にもあることはあるのだが、箱入り姫がその存在を知るべくもない。
「ここは野営場と言って、宿のある村や町の間に距離がある場合に利用する場所です。
徒歩の旅人だけでなく、時には乗り合い馬車も野営することがあるんですよ。
ほら、ちょうどあんな風に」
街道沿いに森を拓いて、結構な広さの広場が造られている。そこに一台の馬車が停まっていた。
その周りにはいくつもの焚き火が熾され、少なくない人数の客が周りを囲んでいた。
他にもポツポツとテントが張られ、焚き火にあたっている人々がいる。
初秋とはいえ、夜になると冷え込んでくるそんななか、暗闇になる前に食事を終えようとしているようだ。
ラドヤードはどのグループともそれなりに離れた場所にゲルを出し、ジェラルディンを迎え入れる。
夜間の冷えを想定して分厚い敷物と携帯用簡易ストーブを設置し、テーブルと椅子を出して夕食を並べていく。
「今日のポテトサラダは私が作ったのよ。ラド、たくさん食べてね」
白花豆を裏ごししたポタージュスープには色々な食感が楽しめるハトムギやひよこ豆、うずら豆が入っている。
ポテトサラダにはゆで卵の他に厚めにみじん切りされたハムが入っていた。
これはもうボウルごと抱え込んで、すごい勢いでラドヤードの胃袋に収まっていく。
メインの肉料理はピアリザードのモモ肉の唐揚げだ。
これにベビーリーフのサラダを付けて、ジェラルディンたちはいつものようにゆったりと食事していた。
そこに声をかけてくるものがいる。




