82『ゾダ到着』
連絡を条件にようやく解放されたジェラルディンたちは、その日は近隣の村に泊まり、そこからは乗り合い馬車に乗って国境から一番近い町に向かった。
「主人様、町に着いたらまず冒険者ギルドに行きましょう。
そこで警備隊への伝言を頼めば確実です。
ついでに素材などを売れば良いのでは?」
「そうね……ポーションも売りましょう」
そうして着いた門でギルドカードを提示して、あっさりと入街を許されると馬車は停馬車場に向かっていく。
そこで下車したジェラルディンたちは御者に冒険者ギルドの場所を聞いて、まずはそこに向かう事にした。
ここはメルトカル国、ザイーダ辺境伯の領地、国境に面する町ゾダ。
「今度こそ宿でゆっくり出来るかしら。昨夜の村は……酷かったわ」
粗末な部屋に藁敷きのベッド。
ジェラルディンは一目見て【隠れ家】に逃げ込んだ。
ラドヤードはそのままそこで一泊したのだ。
「主人様、ここで長居するつもりがないのなら、さっさと発った方がよいと思います。
ここは関所からも近い。
直接監視されていてもおかしくないです」
「……そうね。
民に紛れるにはもう少し大きな町の方がいいわね。
では素材の販売は依頼を見てから、という事で」
国境の近隣の町であるここゾダは、深林地帯のすぐ近くだという事で、多様な素材と魔獣が分布する、冒険者の町だ。
その為冒険者ギルドの建物は3階建てと大きく、人が途切れず入っていく。
「では行きましょうか」
ジェラルディンはフードを深く被り直し、ラドヤードを後ろに従え、扉を開けた。
そしてそこにいるすべての人間の視線を一斉に向けられる。
だが彼女はそれを無視して、受付の順番待ちの列に並んだ。
そして、主人を守るように密着するのはラドヤード。
彼はここにいるすべてのものに睨みを利かせた。
「ようこそこんにちは。
今日はどういった御用でしょうか?」
受付の、少し年齢的にトウのたった女性がていねいに対応してくれる。
ジェラルディンは自身のギルドカードを取り出し、提示した。
「私たちは昨日、隣国から入国して来ました。
その時国境付近で盗賊団絡みの事件に巻き込まれ、現在居場所を申告するように依頼されています。
国境の警備隊に私たちの現状を報告願えますか?」
さらにラドヤードのギルドカードを自分のものに重ねる。
受付の女性はジェラルディンたちの後ろに並んでいた数人を他の列に捌き、改めて対峙した。
「別室で事情をお聞きしてもよろしいですか? ではこちらに」
頷いたジェラルディンたちを案内して、女性は通路を進んでいく。
そして階段を上がったところにある部屋に2人を通した。
「では改めて。
私はこの冒険者ギルド、ゾダ支部の受付主任マリエッタと申します。
先ほど仰った報告と言うのは依頼となりますがよろしいでしょうか?
それと、その一件の詳細をお聞きしたいのですが」
「はい、依頼と言う形で結構です。
内容はギルドに保存されるのですね?」
「はい、公用信となりますので記録され保存させていただきます」
「わかりましたわ。
では先にそちらを済ませて質問に答えましょう」




