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81『関所』

「ようやく国越えね」


 ジェラルディンとラドヤードは今、国境の関所を前に感慨深げに佇んでいた。


「あちら側はうちの国と同盟を結んでいるの。

 だからさほど警戒しなくて良いと思うわ」


 ラドヤードの目に一瞬影が見えた気がした。おそらく彼は自分の【奴隷】という身分を不安に思っているのだろう。


「状況次第では少し腰を落ち着けてもいいと思っているの」


 まずは宿に数日泊まって、それからまた貸家を探すかもしれない。

 影空間の隠れ家や侯爵邸に行くことの多いジェラルディンにとって、宿屋は居心地が悪いのだ。


「今度はラドの部屋もちゃんとある間取りにするわね」


 ほのぼのとした話題に花を咲かせていた2人の元に、警備隊の兵士が走って近づいてくる。

 ラドヤードにとっては見覚えのある兵士だ。


「おい!あんたたち!

 急いでこっちに来てくれ!」


 その慌てようにジェラルディンとラドヤードは顔を見合す。

 そして走り出した。



「やっと来たか」


 関所の詰所に案内されたジェラルディンたちは、そこで疲労の色も濃い警備隊長と再会した。


「その様子ではお前たち、あいつらと一緒ではなかったのだな」


「あいつら?一緒?

 ひょっとして捕虜と、護送していった兵士たちのことですか?」


 ラドヤードは訝しげに警備隊長を見下ろした。


「連中は昨日の昼前にあの村を発って行きましたよ。

 うちはご主人様の体調が良くなかったのでもう一泊したのですが……

 着いてないんですか」


 警備隊長は黙って頷いた。

 これは由々しき事態である。

 行方不明という事は襲撃を受けたと言うことだ。


「道中そういう目で見てこなかったので気づかなかったな」


「で、私どもを疑ってらっしゃるというの?」


「いや、そんな事はない。

 だが話は聞かせて欲しい。

 そしてしばらくの間、居場所をはっきりして欲しい」


 長期滞在決定である。



 この日は “ 事情聴取 ”が長引いたため、関所の敷地で野営する事になった。

 早々にゲルに引き揚げたジェラルディンは、ラドヤードが出したソファーにその身を任せた。


「またずいぶんとややこしい事になったわね。

 ねえ、本当に疑ってないと思う?」


「何とも言えませんね。

 ただ、あの捕虜がベラベラ喋ったら、主人様にも不都合があったのでは?」


「そうね、遅かれ早かれ何とかするつもりだったけど」


「では、結果オーライです」


 実はジェラルディン、願わくば彼には脱走してもらってそのあと盗賊団と同じ運命に至ってもらいたかった。

 時系列的にアジトに戻っていてもおかしくなかったのだが、あそこにいたとは思えないのだ。


「口を塞ぐ為に殺されちゃったかしら?」


「それも兵士ごと?

 荒っぽい仕事するなぁ……

 おっと、失礼しました」


 上級冒険者だったラドヤードは盗賊団の手口も良く知っている。

 だが今回の連中は今まで関わってきた中でも一二を争う凶悪さだ。


「もういないけどね」


 そしてあまりにもあっさりとその盗賊団を殲滅して来た主人の、常識外の力に戦々恐々とする。


「ただ今回の連中は私が表に出すわけにはいかないので、褒賞金がもらえないのよね。まあ、お宝は全部いただいて来たけど」


 盗賊を襲撃してそのアジトに踏み込み、一切合切いただく。

 これが一番手っ取り早く金子を得る手段であるとジェラルディンは確信している。


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