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79『盗賊団殲滅』

 あり得ない事だが、こちらを見据える男と目が合った気がした。

 ジェラルディンは男を睨み付けると、一気に襲いかかった。


「!!」


 盗賊とは思えないほど整った顔の男は只ならぬ気配を感じ、警戒していた。

 それでもジェラルディンの攻撃は防げない。

 いきなり現れた影の棘が彼の胸を貫き、声をあげる間も無く影空間に吸収されてしまう。

 それを見ていた首領と幹部クラスの計4人は、主人のいなくなった弓矢が地面に落ちる音で我に返った。


「おい、こいつは」


 もう面倒くさくなったジェラルディンの手で、4人一緒に影空間に収納された。彼らは自分の死すら感じることなく、修羅の果ての死を迎えたのだ。


「……呆気なく終わったわね。

 あとはお宝をいただいて差し上げるわね」


 ジェラルディンは上機嫌だ。



 彼女にとって、これで終わりではない。むしろこれからが本番と言えるだろう。

 盗賊各自が身につけていたアイテムバッグなどは後にするとして、まずこのアジトとその周りにあるものすべてを異空間収納に収めることにした。


「首領たちがいたこの部屋だけでも、色々なものがあるわね」


 彼らがいた後ろには、各自が使っていただろう武器が並んでいた。

 それは商売道具と言えるもので、丁寧に手入れされている。

 ジェラルディンはまずそれを手に取り、収納していった。


「私、武器の良し悪しはよくわからないけど、これはそこそこなのではないかしら。

 忘れずにこの弓矢も頂いておきましょう」


 いつものようにどんどん収めていって、ふとジェラルディンは思い出した。


「そう言えばもう一つ反応があったのではなかったかしら……

 ああ、やはりこの奥にもう一人いらっしゃるわね」


 改めて探査すると動かない点が一つ、たしかに生きている。


「これはひょっとして……

 人質とか、そんなもの?」


 ジェラルディンは恐る恐るターゲットに向かい、そして驚愕した。

 そこには年若い女性が粗末なワンピースを着て、両手を広げ宙吊りに拘束されていた。

 そしてその首には、ラドヤードが付けているような首輪ではなく、もっと頑強で禍々しいものが嵌められていた。

 それはジェラルディンも以前に一度だけ見たことのある【魔力封じの首輪】だ。


「【ライト】」


 そしてジェラルディンは明かりの元、拘束されている女性をよく観察し、そして驚きのあまり後退った。


「まさか……」




 この世界には亜人も存在する。

 その彼らは、たったひとつの種族を除いて人族……いわゆる平民たちと混ざり合い、普通に暮らしていた。

 だが、そのたったひとつの種族は、この世界の成り立ち【御使いの方々】との決して破れない約定で縛られて、封じられているはずだ。


「エルフ?……どうして」


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