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72『尋問、訊問?』

結局ジェラルディンたちは被害の少なかった村はずれで警備隊長の尋問を受けることになった。

ラドヤードの機嫌が最底辺なのと違ってジェラルディンは気分良く質問に答えている。


「……では本当にこの3ヶ月は魔の森にいらっしゃったと?」


「ええ、本当にその通りなのですもの。他に言い様がありませんわ」


警備隊長からすればけんもほろろである。だが彼としてもジェラルディンが言っていることが事実だと思っている。だが証拠がないのだ。


「反対にどうして私たちを疑うのか、理解できませんわ。

私が村を襲って何の得があると仰るの?」


ちらりと見たところ、まともな商店もない小さな村だ。

ただこの村は街道沿いにあることと、関所を挟んだアンドロージェ側の最初の宿泊施設までの距離がちょうど良いので宿泊客はそれなりの村だった。


「村全体、身包み剥いでもそれなりでしょう?

それなのに盗賊が襲ったのね」


貴族らしい、感情の伴わない言葉だ。


「主人様、ひょっとしてスタンピードの影響で仕事ができにくくなった賊がこちらに移ってきたのでは?」


「ああ、それはあるかもしれないわね。

盗賊団も食い詰めていて見境なく襲ったとか?」


すでに警備隊長は放置である。

主従の盛り上がった推理を黙って聞いているばかりであった。


「ここでそんな事を言っていても机上の空論でしかないわ。

なので聞いてみましょうか」


ジェラルディンがそう言って、警備隊長が何のことかわからず戸惑っていると次の瞬間、村に隣接する林の中から凄い悲鳴が聞こえてきた。


「ぎゃあぁぁぁー」


「何だ!?一体何事!」


警備隊長が弾かれたように立ち上がる。

ラドヤードはゆっくりとバスターソードを抜いた。


「お客様をお招きしたわ」


ジェラルディンから林の中に伸びた影が、騒々しく騒ぎ立てる男を引きずって来たのは、そのすぐ後だ。

決して身なりの良ろしくない男の、右足の甲と左足の足首に鋭い返しのついた棘が刺さっていて、そのままジェラルディンに向かって引き寄せられてきた。


「隊長さん、この方がこちらの様子を窺ってらしたの。

あなたが知りたいことを教えてくださるのではないかしら」


「誰が話すもんか!この糞ア、

アーっ」


新たに現れた細めの棘が男の右肩を貫く。同時に右手の茎状突起(手首のグリグリ)を砕いた。


「ギャー、うわーっ!!」


「さあ、大人しくして素直に話さないと……次はどこにしようかしら」


どんどんと増えていく影の棘が男の身体の表面を薄く抉っていく。

その容赦ない拷問めいた訊問に、警備隊長の顔色が悪くなっていく。


「そうね。

素直じゃない悪い子にはお仕置きが必要のようね」


血塗れで転がっている男の股間に向かって棘が集まっていく。

そして軽く触れただけで男は涙と鼻水を垂れ流し、無様に泣き喚いていた。


「やめてくれー!

何でも話す、何でも話すからーっ!」


警備隊長は、男として薄ら寒くなる訊問に多少思うところはあるが、最初にこの貴族の少女を止めなかった事を僥倖だとも思っていた。


「そう、最初から素直にお話しすれば良いのよ。

あとは警備隊長さんにお任せするわ」


ラドヤードを引き連れてその場を後にするジェラルディンを、全身傷だらけの男が恨めしげに見ていた。


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