表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/314

67『プレゼント』

「それはそうと陛下、ダンジョンの近くで魔獣が出没、これを討伐致しましたが、少々特別な魔獣ゆえ、検分して頂きたく思います」


「それほど珍しいものなのか?

 中庭で足りるだろうか」


 ジェラルディンは一瞬言葉に詰まった。

 あの大きさを思い出して、答えを返す。


「いささか不十分では無いかと」


「何、それほどの大きさか。

 よし、近衛の魔法練習場ではどうだ?」


 ジェラルディンはその【魔法練習場】をよく知らないが、兵団の練習場なら問題ないだろうと思う。


「はい、承りました」


「では、早速参ろう」


 王の手が触れた瞬間、ジェラルディンは共に転移していた。



「さあ、早く出してくれ」


 夜間の練習場は、もちろん人影もなく、灯も皆無で月明かりしかない。

 そこを【ライト】で明るく照らし……これは王が過剰なほどの魔力を込め、昼間のような明るさである。

 この様子では異常を嗅ぎつけて、兵が駆けつけて来そうだ。


「では、出しますね」


 ドンという音が聞こえてきそうな、そんな大きな姿を晒したのは、巨大な魔獣だった。


「これは……キメラか?!」


 差し渡し15mはあるだろう巨体はドラゴンをベースにしていて、翼は不死鳥、頭はマンティコア、尾は先端に鰭があって水棲魔獣のものと思われる。


「このような組み合わせのキメラは初めて見たぞ。

 本体のドラゴンも相当な強者だな」


 もうとっくに死んでいるキメラに近づいて、王はその鱗にペタペタと手を触れている。


「陛下……いえ、伯父上。

 そのキメラは差し上げますので、どうか明日にでもごゆっくりと」


「何?! この貴重な魔獣を私にくれると言うのか!!何たる僥倖。

 だがこれほどのものだ。オークションにかければいかほどの値となる事か」


「それが面倒なのでよいのです。

 ただ学者がサンプルを欲しがるかもしれませんね。

 それから……このキメラは普通ではないそうですから、背後に陰謀などがあるかもしれません」


 王はここでジェラルディンが、面倒を嫌って押し付けてきた事に気づいたが、何も言わないでおく。

 多少の面倒など、このドラゴンキメラの価値の前には無きに等しい。


「それでも嬉しいよ。

 ありがとう、ジェラルディン」


 明る過ぎる光源に気づいた衛兵がこちらに向かって駆けてきた。

 もうお遊びの時間は終わりだろう。


「では陛下。

 私、今夜からしばらく侯爵邸に滞在しますの。

 もし何かあればご連絡下さいませ」


 優雅なカーテシーをしたまま、ジェラルディンは影の中に消えていった。



「……居るか?」


「はい、御前に」


「アルバートについての話は聞いたな?

 疾く調べ上げて報告を上げるように。

 まさかとは思うが他国との繋がりも考えて動いてくれ」


「はっ」


 暗部の男が闇に溶け込むように消えていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ