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38『Xポーション、驚きの価格』

「ルディンさんが一般用にどうかと仰って下さった品を、仮にポーションと呼びます。これを銀貨6枚で引き取らせていただきます。昨日お預かりしたのは13本、しめて金貨7枚と銀貨8枚、そしてまるでエリクサーの様な効果を持つポーションをXポーションと呼びますが、実はもう、さる方にお買い上げいただきまして……金貨1000枚で販売しましたので、ルディンさんには金貨800枚でお願いしたいのです」


 病気治癒には効果はないが、欠損には絶大な効果を発揮するポーションが金貨1000枚で売れた!

 ジェラルディンはびっくりである。


「はあ……本当にそんな値で良いのか、戸惑ってしまいますわ」


「あのポーションの価値から言うと正当な報酬ですよ。

 むしろ流通数を絞ってオークションなどに出せば値はうなぎのぼりになるでしょう。どうなさいますか?」


「私もあのポーションはあまり持ち合わせがないので、そういう形でも良いと思います。

 オークションなら出品者の情報も秘匿されると思いますし」


「ではそのように。

 まずはこれをお受け取り下さい。

 金貨807枚と銀貨8枚です。

 今日持ってきていただいたポーションと傷薬は鑑定して査定させていただきますので、預かり証を発行します」


 羽ペンの先が紙を掻くカリカリという音が聞こえてきて、すぐにサインを促すようにペンが差し出される。

 ペンスタンドから抜いたペンを使って、預かり台帳にサインすると、今日のギルドでの用事は終了だ。


「私は業務の引き継ぎがありますので少し時間をいただきたいのですが、ルディンさんはどうなさいますか?」


 ジェラルディンはそこでふと思い出した。


「あら、そういえば宿の事を忘れていたわ。

 私、これから宿屋に行ってチェックアウトしてきます。

 アララートさん、あそこで待ち合わせしませんか?」


 この辺境都市でも一二を争う高級宿なら待ち合わせに申し分ない。

 ここからもそれほど離れていないので防犯も問題ないだろう。


「では、先に行ってますね」


 ジェラルディンは元気よくギルドを出て行く。

 普段は浮世離れしているが、こういうところを見ると年相応の少女に見える。

 アララートの顔には自然に笑みが浮かんでいた。




「ただいま戻りました。

 昨夜は連絡もなく外泊して申し訳なかったですわ」


 この宿で今、従業員たちがひそかに呼んでいる【小さな貴婦人】が、受付カウンターから肩から上を覗かせて見上げている。


「おかえりなさいませ。

 いえ、少し心配致しました。

 ご無事でなによりです」


「実は……急な話なのですが、ギルドの方の勧めで家を借りましたの。

 昨日が引き渡しだったのですが、片付けをしていたら夜遅くなってしまって……夜間の独り歩きは物騒なのであちらに泊まったのです」


「それは賢明な判断です。

 よろしゅうございました」


「それで、誠に申し訳ないのですが、私の宿泊は今日までという事で、一泊キャンセルさせていただきたいの。

 もちろんお支払いしたものはキャンセル料としてそのまま受け取っていただきたいのですわ。

 本当に勝手ばかり言ってごめんなさい」


 勝手どころか、これほど宿側に譲歩してくれる宿泊客はそうそういるものではない。

 支配人は感激のあまり、それが表情に出てしまったようだ。


「それと、これからもここでお食事やお茶をお願いして良いでしょうか」


「もちろんでございます。

 早速お茶などいかがですか」


「ありがとう。

 ちょうど待ち合わせをしているので、軽めのお茶をお願いします」


「かしこまりました。

 ルディン様、どうぞこちらへ」


 この後アララートと落ち合ったジェラルディンは共に昼食を摂り、今日のメイン、奴隷商の元に向かった。


「はあ……こちらが奴隷商なのですね」


 ジェラルディンは初めて奴隷というものと対面する事になった。


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