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306/314

 306『提案』

「まずは……

 今回の盗賊団討伐について。

 おそらく近隣の憲兵団詰所にこの連中(生死を問わず)を突き出せば一定の報償金を頂けるはずです。

 もちろんその値が一番高価なのは、この頭領なのですが、彼については権利を放棄して頂き……忘れて頂きます」


「もし、それを拒んだら?」


 恐る恐る、隊長が聞いてきた。

 だが、その隊長を見返すジェラルディンの視線はゾッとするほど冷たい。

 そして未だ騎士団と争っている盗賊のひとりを指さした。


「?」


 3人の視線がそちらに向くのを確かめると、ジェラルディンはわかりやすいように指先を動かした。

 その結果起きた現象を理解できたものは誰もいないだろう。

 一瞬にして盗賊が消え、対峙していた騎士が呆気にとられている。


「私、自前の異空間収納に生き物を収納することが出来ますの」


 そこで今度は3人の足元に、ゴロリと盗賊が現れた。


「当然、異空間収納の中で生きていけるはずもなく……こうなりますね」


 ジェラルディンが爪先で軽く蹴った盗賊は、騎士と対峙していた時そのままで死んでいる。


「もし私の提案を聞いてもらえなければ、あなたたちを含めた全員をそうせざるを得ない。

 そして私はさっさと王都に戻り、邸を引き払って国に帰ります。

 勉学は残念ですが、しょうがないですわね」


 その時ジェラルディンが浮かべた凄絶な笑みを、3人は決して忘れないだろう。


「もちろん……

 何もかも金子で解決するのかと非難されそうですが、一定の補償をする準備があります。

 ここからは高度な政治的、外交的な問題なので正式な使者が国から派遣されるでしょう。

 特にゴセック子爵家には多大な迷惑をかけましたので」


「ジェラルディン様」


 オリヴェルが困ったように名を呼んだ。


「私はあなたたちと対立したくないわ」


 対立イコール死である。

 そこで、意外な事にリカルドが言葉を発した。


「ジェラルディン様。

 僕は、いえ、我がゴセック家はあなた様への決して忘れない御恩があります。

 確かに村3ヶ所が襲われ、村人共々失ったのは痛いですが、後は父が考える事です」


「恩って、あなたを殺しかけたのは彼なのよ?」


「それでもです。

 ジェラルディン様があのポーションを使って下さらなければ僕は死んでいた。

 そしてあのポーションがどれほど貴重なものかも知っています」


 リカルドのこの言葉が決め手となって、オリヴェルはジェラルディンの提案をのみ、騎士団と隊長にジェラルディンの意に従うように命令した。

 これによって今回の盗賊団からアルバートの存在が消去される事になる。


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― 新着の感想 ―
[一言] あとは、国同士の高度な政治的話し合いになりますかね 往き来するだけでも、年単位の時間がかかる訳ですから、全権大使の派遣になるのでしょうか 過去の士族問題は、もっとグダグダになってしまっている…
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