302『襲撃!』
突入前、ジェラルディンは入念に探査をかけ、盗賊たちの位置を探った。
そして村の外壁をぐるりと緩く結界で囲み、猫の子も逃さない包囲網を敷いた。
「それなりの数がいます。
皆さん、油断なきよう、ご武運をお祈りしております」
ジェラルディンの激励に騎士たちは己を鼓舞し、受け持ちの場所に散っていく。
総勢20名に満たない一行だが十分勝機はある。
合図を受けて、闇に紛れて突入していった。
ドカーンという轟音と共に閃光が走った。
盗賊たちが一番集まっている建物めがけて投げられたのはジェラルディンが提供した例の手榴弾の改良型だ。
こちらは燃やす事だけでなく爆発力が強化されていて、盗賊たちが眠っていた宿舎を吹き飛ばして残ったのは大穴のみという恐ろしさだ。
この攻撃で全体の3分の2を失った盗賊団は今、浮き足立っていた。
「静まれ!」
その時、盗賊たちを叱咤する声が聞こえ、途端に喧騒が止み声を上げた人物に向かって集中した。
「機会を逃すな!かかれー!!」
隊長の号令で騎士たちが斬りかかっていく。
不意をつかれた盗賊たちは元々それほど強くなく、次々と斬り捨てられ数を減らしていった。
「うわぁー」「ぎゃあーっ」
あちらこちらから断末魔の叫びが聞こえてくる。
だが、先ほどの声の主が現れて雰囲気が変わった。
その男は見るからに上質なレザーアーマーを身に纏い、希少金属の長剣を持っている。
その容姿は麗しく、金色の髪を緩く後ろに纏め、青い瞳は爛々と輝いていた。
「アルバート様」
やはりジェラルディンの予感ははずれてなかった。
同い年の元王子はしばらく見ないうちに成長し逞しくなっていた。
ジェラルディンにとっては色々思う事もないこともないが、よりによって今ここで対峙するとは……。
現在、あちらはまだジェラルディンに気づいていないが、それも時間の問題だろう。
「お知り合いですか?」
ラドヤードはそれなりに2人の因縁を知っているが、今尋ねてきたオリヴェルは違う。
「彼は私の元婚約者ですわ」
オリヴェルとリカルドがギョッとしてジェラルディンを見た。
「彼は廃嫡された元王子ですの。
確か母方の家が持つ男爵位を賜ったはずだったのですが、いつの間にかこのような事に……
被害にあったリカルドに申し訳なく、情けないですわ」
唇を噛みしめるジェラルディンを思い遣って、騎士団隊長が話題を変える。
「今まで押し気味でしたが、あの頭が出てきてから拮抗しておりますな。
私もそろそろ出陣しますか」
「あの元婚約者だけは気をつけて下さい。
あのような者でも貴族です。
彼は魔法剣士なので剣に魔法をのせて斬りかかってくるのです」
隊長は頷いて出て行ったが、心配だったジェラルディンは雑魚を減らす事にする。




