298『この盗賊団は……』
「それで、盗賊団は現在どのような様子ですか?」
ジェラルディンたちの訪問を受け、急ぎ現地から戻ってきたリカルドの父、ゴセック子爵と挨拶を交わしたあと、オリヴェルは早速情報を得ようとした。
「領内の僻地に近い村を3つほど占拠され、落とされています。
村人たちの安否は不明です」
ゴセック子爵は突然現れたこの2人に吃驚し、そしてリカルドを健康体に戻した事に驚愕し狂喜乱舞した。
そして両者共に侯爵家の人間である。
彼らは成り行きで、今回の盗賊団討伐にも手を貸すと言う。
「息子の事といい、何から何までお世話になります」
子爵は深々と頭を下げた。
いつになく周到な準備を整え、少数精鋭の一行は健康を取り戻したリカルドと共に、現在盗賊団と睨み合いを繰り広げているチョピ村に向かった。
全員、ジェラルディンが付与を行った防具を身につけ、武器を携帯している。
「ジェラルディン様、同行されて大丈夫ですか?」
ジェラルディンの事をよく知らないアンシャーネン家の騎士団隊長が心配そうに窺っている。
だが、オリヴェルやリカルドはジェラルディンの力を知っていた。それがほんの一端であったとしてもだ。
考えてみてほしい。
馬を駆り、遠距離攻撃魔法を操る侯爵令嬢。
護衛であるラドヤードと、実は戦闘侍女でもあったタリアを従え、その攻撃魔法で魔獣を一瞬で屠ってしまう。
さらにその矛先が人に向かう事にも忌避感はなく、さすが王族といったところだろう。
「ジェラルディン様、そろそろです」
つい先日、盗賊団の一派が遂に、小さいが町と呼ばれる集落に攻撃を仕掛けてきた。
さすがに村のようにあっさりと落とされる事はなかったが、いくらかの農民に被害が出たようだ。
そして集積されていた小麦を根こそぎ奪っていったと言う。
「この盗賊団はどのような連中なの?」
「元々は小規模な盗賊の集まりが、昨年あたりから急に大きくなって……おそらくいくつかの盗賊団が吸収合併を繰り返したのだと思いますが、今現在は300〜500人規模だと推定されております」
「多いな」
オリヴェルが顔を顰めた。
ジェラルディンはラドヤードと視線を交わし合っている。
この時、予感は確信に変わった。




