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 296『リカルドとの再会』

 王都を出て9日目の昼前、一行はようやくゴセック子爵家の本拠地、セックに到着した。

 前もって先触れを出していたので出迎えを受け、すぐにリカルドのいる館に案内された。


「リカルド殿の容態は如何なの?」


 執事の先導で階段を上がっている最中、聞いてみたジェラルディンだが執事の口は重い。

 オリヴェルと目配せを交わしたジェラルディンはあまり良くない状態なのだと覚悟した。


「こちらでございます」


 ノックをして扉を開けた執事はそのままその場でジェラルディンたちが入るのを待っている。


「失礼します」


 部屋の中は怪我人に障らないようカーテンが引かれ、照明も落としてあるので薄暗い。

 それでも見ると、ベッド脇の椅子に女性が座っているようだ。

 俯いた横顔に廊下からの光が当たった。

 見た目40代の彼女の、普段はきれいに結い上げられているだろう髪は後れ毛が目立つ。

 顔色が悪く見えるのは採光が足りないだけではないだろう。

 そして扉が開いたのに反応がない。


「リカルド様の母君のゴセック子爵夫人でございます」


 執事が小声で囁いて、ようやくゴセック夫人が気づいたようだ。


「あ……」


「どうかそのままで。

 私たちは学院でのクラスメイトです。

 リカルド殿が怪我されたと聞いてお見舞いに参りました」


「それは……

 遠いところをわざわざありがとうございます」


 ふらつきながらも立ち上がった夫人が頭を下げた。

 彼女はもう幾晩眠っていないのだろう。

 見かねた執事が侍女を呼んで、半ば無理やり部屋に下がらせた上で、ジェラルディンは横たわるリカルドに向かった。


「診させていただきますね」


 意識のないリカルドにかけられた上掛けを剥ぐ前に、ジェラルディンは鑑定して彼の状態を看破していた。


「……酷いわ」


 まともに剣を受けたのだろう。

 利き腕は肘のあたりを中心に包帯に包まれていたが、現状は骨まで達した傷が壊死しかかっている。

 そして他にも背後からザックリとやられたのだろう、背中の傷もかなりの重症だ。


「これはあまり時間がないわね。

 今、私が勝手に治療してよろしいのかしら?

 せめてご両親のどちらかに許可を得た方がよいのではなくて?」


 扉の前に控えていた侍女が静かに部屋を出て行く。


「もうとっくに……リカルド様は医師から見放されております。

 どうかお嬢様、坊っちゃまをお助け下さい」


 普段は冷静なはずの執事が、床に跪き涙を流しながら懇願している。

 リカルドのことを途中から坊ちゃん呼びしていたことから、彼が子供の頃から愛情をもって接していたことがわかる。

 ジェラルディンは頷いてポーションを取り出した。


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