280『国王との会談』
「陛下、ご無沙汰しております」
いつものように何の前触れもなく現れたジェラルディンに、王は相好を崩した。
だが、傍に控えていた侍従の顔は引きつっている。
「ずいぶんと久しぶりだな、ジェラルディン。
息災であったか?」
「はい、この通り。
学院生活にも慣れました」
「それはよかった」
彼は侍従と自分には酒をジェラルディンには紅茶を用意するように言うと、隣の居間に移った。
「クリスティアンも呼ぶべきかな。
後でわかるとうるさいのだ」
「そうですね。
でもその前に、今夜お伺いした理由を知っていただきたいのです。
不躾な質問なのですが……」
ジェラルディンは目を伏せていて、長い睫毛が影を作っている。
「良い、申せ」
「……前侯爵、私の父を含めた者たちは今、どうしているのでしょう?」
バートリから聞いているが、詳細をもう一度当事者から聞いてみたかったのだ。
「前侯爵は……もう生きてはおらぬな。
半年ほどは辺境でも何とかやっておったようだが、使用人や従者にも愛想をつかされて、最後は寂しいものだったようだ。
このことは確認しておるので間違いない」
「左様ですか。安心致しました」
王はジェラルディンが落胆するのではないかと危惧していたが、心からの笑みを浮かべた姿を見て安堵した。
「それとあの不届きな平民らは、その場で屠ってやった。
それも前侯爵が心を壊した理由かもしれぬな」
前侯爵が精神に異常をきたしていたのを初めて知った。
「アルバート様に関して陛下のお考えは変わりませんか?」
今まで機嫌よさげだった王の顔色が曇った。
「あれはもう修正不可能だ。
改心して首を垂れてくるのを待っていたのだが、無理なようだ」
実は前年、彼は他国で騒動を起こしていた。
その時は少なくない数の犠牲者が出ており、報告を受けた王は頭を抱えていたのだ。
そして現在は盗賊団のようなものを結成しているらしい。
落ちるところまで落ちた元息子の所業に幻滅していた。
「あれも、腐っても王族。
魔力もそれなりに高く、手を焼いているようだ」
暗にその始末を期待しているようにジェラルディンを見た。
王の視線にジェラルディンの背筋が伸びる。
「ジェラルディン姉様!」
頃合いを見計って呼び出されてきたクリスティアンに抱きしめられる。
少し見ない間にまた背が伸びた。
線は細いがしなやかな筋肉がついた腕に抱きしめられ、暫しうっとりとするジェラルディンだった。




