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 270『静かなとき』

 無事合格したジェラルディンは、春に向けて入学の準備を始めた。

 まずは住居だ。

 学院は基本的には寮生活だがジェラルディンは屋敷を借りて住む事になった。

 これはバートリが学院側に強硬に主張した事で叶ったのであって、本来なら認められない事だ。


「今は冬籠り中で物件はふさがっていますが、春になれば空く物件をいくつか紹介してもらっています。

 お嬢様の入学までギリギリの引っ越しとなるでしょうが、ご心配はいりません。

 万事、このバートリとタリアにお任せ下さい」


 入学式まで2月余り、ジェラルディンはポーションや各種の薬を作りながら準備を整えていた。

 その間に転移を使って以前滞在したことのある町に行き、ポーションを卸して収入を得たり、冬期でなければ採取できない素材を採集に行ったり有意義な時間を過ごしていた。



 入学前、ジェラルディンが最も楽しんだのは王立図書館での読書だった。

 元々放っておけばいつまでも本の前から離れないジェラルディンだ。

 館外持ち出し禁止の本を丸一日かけて読破し、満ち足りた気分で【黄金の林檎】に戻ってきた。

 まさかのこの場所で厄介ごとに巻き込まれるとは夢にも思わなかっただろう。



 瀟洒な佇まいの玄関ホールを通り過ぎ、客室のある2階へと続く階段に向かっていたジェラルディンとラドヤードは、ここでは聞いたこともない大きな破壊音と人々の悲鳴を聞いた。


「!!」


 瞬時にジェラルディンを背に庇い、腰に佩いだ剣を抜いた。

 そして改めて音の発生源の方を見るとひとりの男……まだ年若い男がテーブルをひっくり返し、椅子を投げて暴れていた。


「主人様、お部屋に戻りましょう。

 ここは危険です」


「え、ええ」


 ジェラルディンが踵を返したその時。


「おい!

 そこの女、待てよ!」


 暴れている男の視線がこちらに向いて、ラドヤードは嫌な予感がした。


「主人様、こちらへ」


 ジェラルディンを急かして階段を上がろうとした瞬間、十数m離れていた騒動の主が突然目の前に現れた。

 そう、彼は貴族。

 身体強化の魔法を使い、一気に距離を詰めたのだ。


「わぁ〜お!別嬪さんだ!

 ねえ、一緒に遊ばない?」


 近づいてきた男の息からアルコールの臭いがする。


「酔ってるの?」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 貴族VS.貴族! 侯爵以上だったらやばいね? むしろラドが危ない!
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