269『受験』
この冬の気候は最初からおかしかった。
初冬の暖かさ、積雪の少なかった事。
ある時期から急に冷え込み、大豪雪となった。
さらにそのあと一度寒気が緩み、人の背丈ほどあった積雪が溶けかかったのだが、また大寒波が王都周辺を襲った。
この時、郊外の山間地では雪崩が頻発していくつかの村が被害を受けたり、雪崩によって生息地を追われた魔獣が人が住む場所に押し寄せたり大変だった。
この時、数少ない冒険者たちがかり出され、実はラドヤードも参加していた。
町の近くで起きた小スタンピードと雪害で未曾有の被害を出した王都の副都市は一つや二つではすまなかった。
その冬の間ジェラルディンは、ポーションを作成したり、受験のための勉強をしたりしてマイペースに過ごしていた。
以前と違ってバートリやタリアが側に控えているため、とても居心地がよい。
そして大寒波のなか、年が明けて落ち着いた頃、オストネフ皇国王立学院の入学試験が行われた。
筆記試験は問題なく終わったが面接の時に一悶着あった。
「ジェラルディン嬢、我が学院への志望動機は?」
「私、今も薬師として薬やポーションを作成しているのですけど、現在頭打ちなのです。
なので今以上のものを作り出したいと思って、こちらの学院を志望致しましたの。
なのではっきり言わせてもらうと、その他の科目は興味ありませんわ」
唯我独尊、はっきりと言いきった。
ジェラルディンの入学に関しては、合格不合格、はっきり2つに分かれた。
彼女のあまりにも尖りすぎた言動、もしくは性格が集団生活に、いや集団の方が耐えられるかどうか。
集団のほとんどが貴族家の箱入り息子、箱入り娘なのだ。
ジェラルディンの存在がどう影響するか未知数だ。
当然合否に関して蹇々諤々、まとまりがつかないなか、この学院でも重鎮である薬学の教授が手を挙げて発言を求めた。
「もしも彼女が通常の入学に適さないのであれば、儂のところで専科として面倒をみたい。
どうだろう、彼女にチャンスを与えてみないか?」
「そうですね。
現在もう薬師として活躍しているのですから技術的には問題ないでしょう。
まずは通常で入学して1年様子見をして、そのあと学力に応じて飛び級も考えてみればどうでしょう?」
学院長が折衷案を出してきた。




