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 267『バートリinオストネフ皇国王立学院』

 オストネフ皇国王立学院。

 代々の皇王の庇護を受けてきた、主に貴族が知識を得るための学校。

 そこに平民が通うことができるようになってから何年経つだろうか。

 だが、大陸一の魔法学校という看板は揺らぐことはなく、国の内外から優秀な生徒が集まっていた。



 その学院の学院長の元に、影の国の貴族家から使者が来ていると聞いて、学院長は応接室に向かっていた。


「そのお使者とはどのような方なのだ?」


 思わず実務全般を司っている事務長に尋ねてしまう。


「バラデュール侯爵家の執事長と仰る方です」


「バラデュール侯爵家!?」


 思わず大声を上げてしまった学院長は気まずそうに視線を下げた。


「バラデュール侯爵家とはかの国の王家に準ずる家ではないか……」


 歓喜と畏怖がない混ぜとなった複雑な思いを抱え、使者の待つ応接室の扉を開けた。


「お待たせしました」


「こちらこそ、お時間をとって頂きありがとうございます」


 見るからに品の良い中年の男が、ソファーから立ち上がって礼をする。

 その仕草も一流のもので、さすが大貴族に仕える使用人だと思った。


「貴殿が参られた、という事は侯爵家から当学院に入学を検討されている方がいらっしゃると思ってよろしいのでしょうか」


「はい、当家の現侯爵であらせられるジェラルディン様がこちらに編入、もしくは入学を希望されております。

 おそらく他の貴族の方と同じように試験を受けることになると思っておりますがよろしくお願いします。

 それと、こちらを預かって参りました」


 懐に忍ばせていた書状が学院長の前に差し出された。

 それを手に取って、押されていた封蝋を見た学院長の目が驚愕で見開かれた。


「こっ、こちらは……」


 遠い他国とはいえ、各国の王族、貴族の紋章は記憶している。

 今目にしている紋章は滅多に他国に出ることのない、影の国の王家のものだ。


「影の国の国王陛下は、我が主人ジェラルディン様の伯父上にあたられます」


 震える手でペーパーナイフを使い、取り出した書状は王家の紋章が漉き込まれており、少し癖のある力強い筆跡でジェラルディンの優秀さを推薦していた。


「かしこまりましてございます」


 頭を下げた学院長にバートリは言葉を続ける。


「誤解されると困るのですが何も無理に編入させろと言っているわけではありません。

 この書状はジェラルディン様の身元を証明するものです。

 我が主人ジェラルディン様に受験の資格を頂きたいのです」


「もちろんです。

 すぐに受験要項を準備致しますので、少々お待ち下さい」


 これでジェラルディンの受験は決まった。


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