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 260『ストーカー女の件、顛末』

 早朝、乗合い馬車の駅にやって来ると、すでに幾人かの乗客が集まってきていた。


「皆さん、おはようございます」


 馬具を点検していた男が挨拶をしながら近づいてきた。

 どうやらジェラルディンたちが最後だったようだ。


「王都サングリアまでは今日から12〜15日間を予定しています。

 その間の宿泊は村や町などに到着出来れば宿に泊まることが出来ますが、何泊かは野営になります。

 それと、突発的な事象があった場合、野営が増えると思いますのでご了承下さい。

 なお、宿泊費、食事代などは馬車代に含まれておりません。

 野営中の食材も個々でご用意下さい」


 予約の時の注意事項を繰り返している。

 乗客たちも黙って聞いているところを見ると、これは織り込み済みのようだ。


「では皆さん、割符を提示してご乗車下さい」


 この割符は昨日予約して運賃を支払った時に渡されたものだ。

 乗客たちはそれぞれの荷物を持って馬車に乗り込んでいく。

 ジェラルディンたちもそれに続いて乗り込んでいった。


 そこに冒険者ギルドで集合していた護衛の冒険者がやって来た。

 ざっと見たところ5〜6人。

 彼らの中に見知った顔を見つけて、ラドヤードは顔を顰めた。


「あら、あの方たちは……」


 護衛としてやって来たのは昨日も顔を合わせた、あのストーカー女のパーティーだ。

 なんとあの女は護衛任務を受けて、ラドヤードについて行こうとしていたようだ。


「よう、昨日も言ったが心配しなくてもあいつはいないぜ」


 そう言えばパーティーから追放したと言っていた。

 ストーカー女のその後に関してはいずれ話があるだろうとその場では流すことにした。



 朝靄の残るなか、乗合い馬車は出発した。

 王都と商業都市を結ぶ定期便はそれなりの需要があるため、大型の馬車を4頭の馬が引いている。

 今回はそこに、ジェラルディンたちを含めた乗客が11名、護衛が6名、御者が2名、馬丁を兼ねた雑用係が1名の合計20名だ。


「今日は1日目なので昼休憩に馬車は止まりません。

 各自昼食は走行中にお摂り下さい」


 馬丁兼雑用係兼車掌であるクルトが乗客たちに話しかけている。

 ちなみに馬の給水兼トイレ休憩はある。



 王都への旅、第一夜はまだ商業都市の範囲内で農村の宿に泊まる事になった。

 そこで件の顛末を聞くこととなる。


「本当に迷惑かけてしまったなぁ。

 リーダーとして謝る。この通りだ」


 5人のうち、少し年嵩の男がこのパーティーのリーダー、ベントンだ。


「あんたたちが何かした訳じゃない。

 こちらは主人様に被害がなかった。

 それで手打ちにしよう」


 ラドヤードの横でジェラルディンが頷いている。


「それで?あいつはどうなった?」


 リーダーの他のメンバーが顔を見合わせている。


「俺は今回、貴族や富裕層の怖さを改めて思い知ったよ。

 あの宿屋は商業都市一の高級宿だったんだが……」


 もちろん、ジェラルディンたちはその事を存知している。


「あの時、慌てて追いかけた俺たちの前に現れた大男2人。

 奴らはあの宿の用心棒みたいなものなんだが……

 裏口から連れ出されたスカーレットはボコボコにされて、もう顔なんかは元がわからないくらいに崩れて、それでも内臓や骨は傷つかないように痛めつけてから放り出されたよ。

 俺たちもとばっちりはごめんだからギルドに行って速攻でパーティーから追放したんだ。

 可哀想だと思うかもしれないが、俺たちだって必死だからな」


「可哀想だとは思わないわね。

 自業自得ではなくて?」


 ジェラルディンのこの一言で、その場は締められたのだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 女が裏口で倒れてたら、まぁその後不幸なことになるよね普通。 その後、奴隷として売り飛ばされてることもありうるね。
[一言] 容姿自慢の女性の顔をぼこぼこにして心を折るって護衛たちも殺る気満々。人前に出られないものね。
[良い点] むしろジェラルディンにちょっかい出して 痛めつけられただけですんだのは幸運だね。 今後生活できるかは別として。
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