257『すとーかー』
「ラド。
あの者は何を言っているの?」
睨み付けてくる女……赤毛で金瞳の勝気そうな、自身の容姿やスタイルに自信満々で自分に靡かない男などいないと思っている女が目の前にいる。
「申し訳ありません。
あの者は今回合同で護衛依頼を受けたパーティーの一員です。
何を思ったのか任務中から煩くて。
自分たちのパーティーに入れとか、恋人になれとか、ほとほと困っていたのです」
「何よ!満更でもなかったくせに!」
「俺ははっきりと言ったはずだ。
そんなつもりはまったくないと」
「で、でもあなたは奴隷で護衛をしていると言ったじゃない!」
「その通りだが?
俺は主人様に拾ってもらって感謝しているし、何よりも今の仕事に誇りを持っている。
その主人様の元を離れるなんてあり得ない」
「ありがとうラド。
私は、将来生まれてくる子供たちの傅役をあなたに頼もうと思っているのよ。
それまでは私の護衛をよろしくお願いするわ」
「御意」
「な、何よ……
そんなの認めないわ!」
女が喚き散らすがラドヤードは無視する。
認めるも認めないも、彼にはその気がないのだ。
「俺は怪我をして奴隷に落とされた。
どん底の人生の中、主人様に買っていただいたのだ。
そして怪我を治していただいた。
この御恩は生涯かけて返していくつもりだ」
「まあ!
期せずして想いが一緒だったのね」
ジェラルディンは嬉しそうだ。
だが女は益々怒りをつのらせ突っかかってくる。
「何よ、主人面して!」
主人面も何も、ジェラルディンは主人である。
飽きてきたジェラルディンは、そろそろお引き取り願いたいと思い始めた。
ここは冒険者ギルド、すっかり見世物になってしまっている。
「改めてはっきり言わせてもらう。
俺はお前にもお前のパーティーにも一切興味ない。
この後は関わらないでもらいたい」
そんな拒絶の言葉も理解できないのだろう。
女はまだキャンキャンと吠えている。
「煩いわよ。
ラド、一旦宿に戻りましょう」
踵を返すジェラルディンに、なおも追いすがりその手を掴もうとした女に、ラドヤードが鞘ごと抜いた剣を突きつけた。
「これ以上迷惑をかけるなら考えがある」
ラドヤードの雰囲気が豹変していた。
彼の目は本気だ。
「な、何よ、覚えてらっしゃい」
顔を引き攣らせて駆け去る女。
うんざりとそれを見送るジェラルディンは、しばらく苦行が続きそうだと溜息した。




