251『バラデュール侯爵邸』
早速試してみることにする。
ジェラルディンはタリアを傍に呼び抱きついた。
そのまま【転移】で、ラドヤードのいる宿の部屋に戻った。
だが……
「やはり駄目ね」
抱きついていたはずのタリアの姿は無く、自分だけが宿の部屋にいる。
かなりがっかりしながら侯爵邸に戻ったジェラルディンは今夜から転移を極めようと決心した。
調合室は侯爵邸のものを使うことにした。
ここではタリアが付きっきりで雑用をこなしてくれる。
ジェラルディンの行う調合はいくつかの工程を魔法で行うことによってかなり時短している。
そして潤沢な魔力を、その調薬中に注ぎ込んで効果の高いポーションを作り出していた。
「私、旅に出てからポーションというものがこれほど求められているのを知りました。
そして最近はその価格も高騰しているの」
タリアはジェラルディンの専属筆頭侍女だが、最近はバートリと共にバラデュール侯爵家の財政管理にも手をつけていた。
なので、ジェラルディンが出奔した後、一切侯爵家の資産を持ち出していないことを知っている。
「お嬢様が惨めな暮らしをしておられないか、タリアはいつも胸が張り裂けそうなほど心配しておりました」
路銀に困れば最悪、売って金子に変えられるよう身の回りの品は最高級品を揃えた。
タリアの主人はそのあたりの意図を気づいていないようだが、その暮らし向きは彼女が危惧したようなことにならず、高級宿の貴賓室に連泊できる財力を持つに至っていた。
「普通の初級ポーションが、今いる商業都市では金貨40枚で買い取りされるのよ。
おそらく冒険者には金貨50枚位で売るのでしょう。
それほどの金額でも需要があるの。
今作っている中級ポーションなんてどのくらいの卸値がつくのやら……」
実はジェラルディンの祖国、この王都でもポーションは滅多にお目にかかれない。
ジェラルディンは自分で調合するため、それほど特別視していないが、先日王都の冒険者、商業、薬種の各ギルドに、部位欠損を再生するポーション、ジェラルディンはXポーションと呼んでいるがそれが吃驚するような金額で依頼されていたそうだ。
その事を聞いたジェラルディンはバートリを呼び、異空間収納から出したXポーションを小型のアイテムバッグに入れて渡した。
「バートリ、あなたならギルドに伝手があるでしょう?
おそらくどこかの貴族家の、当主に近い方の治療に必要としているのでしょう。
一応、どこの誰か調べて、その方の素行などに問題がなければ売ってらっしゃい」
「お嬢様、よろしいのですか?」
バートリは困惑を隠せない。
「だから素行を調べてからと言っているでしょう?
例えば王家に仇なすような家の者を助ける必要はないわけですし、評判の悪い者は捨ておけばよいわ」
バートリは一度は受け取ったアイテムバッグをテーブルに置いた。
「明朝、冒険者ギルドに行って詳細を聞いて参ります。
ポーションはお嬢様が納得されてから受け取らせていただきます」
「それで結構よ。
バートリ、世話をかけるわね」
「とんでもございません。
邸の使用人一同、お嬢様のお帰りを喜んでおります」
バートリが退出してから、ジェラルディンとタリアの主従は揃って笑い出した。
「相変わらず固いわね」
「それでも最近はずいぶんと柔らかくなられた方です」




