250『レベル』
商業ギルドと冒険者ギルドにも1本金貨40枚で販売したジェラルディンは、あっという間に金貨4000枚を稼ぎ出した。
特にサンプルで渡した中級ポーションはどちらでも騒ぎになり、双方とも20本ずつ依頼されてしまった。
「最低でも2〜3日はかかりそうね。
少し集中して調合したいのでこの後はずっと向こうにいるわ。
ラドは好きに過ごしてらっしゃいな」
思わぬ休日にラドヤードは笑みを隠せない。
彼は何か依頼を受けようかと思っていた。
「バートリ、タリア、ただいま。
久しぶりね」
ジェラルディンは侯爵邸に戻って来ていた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「お元気そうで何よりです」
いつも突然現れるジェラルディンに、邸の者たちは慣れたものだ。
「お食事はお済みですか?」
いつも厳しいバートリが目を細めてジェラルディンを見ている。
「ええ、夕食は済ませてきたの。
今夜はゆっくり入浴したいわ」
タリアがチラリと横を見ると、ズラリと並んでいた侍女の中から数人が小走りに列から離れていった。
「やっと目的の国に着いたのよ。
今はある商業都市にいるのだけど目当ての王都まであと少しなの」
「ようやくお着きですのね。
ようございました」
タリアと一緒に自室に向かうと、すでに準備は始まっていた。
浴室の専用の入り口から湯が搬入されてバスタブに満たされていく。
「今回はずいぶんお帰りの間が空きましたね。
皆で心配していたんですよ」
「隊商と一緒に移動していたのだけれど……色々あったの」
シャンプーの前のブラッシングをしながら、気の合う主従は話が止まらない。
「さあ、お嬢様。
今夜はピカピカに磨かせていただきますよ」
ジェラルディン専属のエステ隊?が、泡立ったバスタブに入ったジェラルディンを優しく、なおかつピカピカに洗いあげていく。
風呂上り、自室でミルクティーを飲んで寛いでいるとノックとともにバートリが入室してきた。
「お嬢様、今夜中に目を通していただきたい書類がございます」
「わかったわ、そこに置いておいてちょうだい」
「お嬢様、先ほど仰っていた、オストネフ皇国の王都でのことですが、住居が決まり次第侍女を同行することをお考え下さい」
「そうね。
皇立学院への編入は問題ないと思うの。
でも住居に関しては悩んでいるのよ」
痛い目をみた昨冬のことを思い出し、その美しい顔を歪める。
「その時はどうぞタリアをお連れ下さい」
「お連れ下さいって、どれほどの距離があると思っているの?」
「お嬢様、先日聞き及んだのですが、貴族の皆様の使われる魔法にはレベルというものがあるそうですね。
魔法を使うことにより、その習熟度でレベルが上がって、例えば火魔法なら火力が上がると聞きました」
「なのでお嬢様の転移魔法も、レベルが上がれば他者も一緒に転移できるのではないでしょうか」
眼から鱗がポロリである。




